教育講演1 9:00 - 9:50 第1会場:グランドプリンスホテル新高輪国際館パミール/北辰 「消化器癌のサーベイランス」肝がんサーベイランス 2013 司会:名越 澄子 埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科 演者:佐田 通夫 久留米大・消化器内科 本邦の原発性肝がんによる死亡者数は年間3万人を超えており,男性は死因の第4位,女性は第5位である.肝がんは,早期発見により外科的切除術やラジオ波焼灼療法などの根治的な治療が可能となることから,肝がんサーベイランスは予後の改善に繋がると考えられる.肝がんは慢性肝疾患患者に高頻度に発症する.しかし,その頻度は一様でないことから,サーベイランスの手法は肝疾患の成因と肝線維化の程度により異なる.科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン(日本肝臓学会編)ではB型慢性肝炎,C型慢性肝炎もしくは肝硬変患者を「高危険群」に,B型肝硬変とC型肝硬変患者を「超高危険群」に定めている.高危険群に対しては6ヵ月に1度,超高危険群に対しては3〜4ヵ月に1度の腹部超音波検査と血清腫瘍マーカーによるサーベイランスが推奨されている.サーベイランスを受けていた高危険群の患者は,サーベイランスを受けなかった患者に比べて肝がんが早期発見されるという研究結果がこれまでに多数報告されており,本サーベイランスの有用性が示されている.また,近年,腫瘍マーカー(高感度AFP-L3分画,改良型PIVKA-II)や画像検査(造影エコー,Gd-EOB-DTPA造影MRI)の進歩により肝がんの診断技術は向上している.これらの検査を適切にサーベイランスに組み込むことで,高危険群および超高危険群における肝がんサーベイランスの意義はさらに高まると考えられる.他方,肝がんを発症する患者の特徴が変化していることに留意しておく必要がある.HCV関連肝がんは,これまで肝硬変を経て肝がんを発症する場合が一般的であったが,現在では,肝硬変を経ずに肝がんを発症する症例が増加している.また,インターフェロン治療により持続性ウイルス陰性化が得られた患者からも肝がんが発症する場合があり,これらの発がんの原因として加齢,飲酒,肥満,糖尿病およびその治療薬,潜在性HBV感染などが報告されている.B型慢性肝疾患の治療は核酸アナログ製剤の登場により飛躍的に進歩したものの,未だHBV関連肝がんは減少していない.肝細胞核内のHBV cccDNAと相関する血清HB コア関連抗原は,核酸アナログ服用時における肝がんの発症の危険因子であることが報告されている.このように,各患者に適したサーベイランスを行うためには,肝線維化に加えて,他の危険因子の状態を把握する必要がある.HBs抗原およびHCV抗体が陰性の非B非C肝がんは,近年,その患者数が増加しているだけでなく,進行癌で診断される場合が多い.非B非C肝がんの基礎疾患として自己免疫性肝疾患,非アルコール性脂肪性肝障害,アルコール性肝障害,糖尿病,潜在性HBV感染症などが報告されているものの,これら全ての疾患を有する患者をサーベイランスすることは人的資源や対費用効果の点から現実的でなく,ハイリスクグループ設定のための危険因子の同定が急務である.最近,我々は非B非C肝がんの発症の特徴をデータマイニングにより解析し,非B非C肝がんのサーベイランスに有用と思われる危険因子を同定した.本教育講演では,肝癌診療ガイドラインの肝がんサーベイランスについて概説するとともに,新たな診断法や近年の肝がんの特徴についても紹介する.また,今後も増加が予想される非B非C肝がんに対するサーベイランスについて,当科での研究結果を含めて論ずる. |
教育講演2 9:50 - 10:40 「消化器癌のサーベイランス」胆道癌の診断と治療 司会:滝川 一 帝京大・内科 演者:海野 倫明 東北大大学院・消化器外科学 胆道癌は日本において年間死亡者数は約17000人(第6位)に位置する,決して稀ではない癌腫である.胆管癌・胆嚢癌・十二指腸乳頭部癌がいわゆる狭義の胆道癌であるが,肝内胆管上皮から発生した肝内胆管癌は,取り扱い規約上,肝癌に含まれるが,その由来を考えると広義の胆道癌に含まれるべき癌である.これら胆道癌の治療成績は医学・医療が進歩した現在においてもいまだ不良であり満足すべきものではない.その原因は多岐にわたるが,第一に診断に関する因子が挙げられる.胆道癌の早期診断はいまだ困難であり,黄疸や腹痛などの有症状症例が大部分を占める.高リスク群の絞り込みもいまだ十分ではなく,遺伝要因や環境要因の解析が待たれている.MD-CTやMRI, EUSなどの高細度画像診断機器の発展により局在診断や質的診断の進歩が見られるが,微小な早期癌を発見することは不可能である.また早期診断のためのバイオマーカー研究がなされいくつかの候補が示されているが,いまだに研究段階であり臨床応用にはまだまだ時間がかかるものと思われる.一方,治療に関しても多くの問題が山積している.外科治療の向上により肝門部胆管癌に対する尾状葉併施半肝切除や下部胆管癌・十二指腸乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除などの治療法が確立し,治癒切除率の向上,術後合併症の軽減が図られてきている.診断学の進歩と合わさって,極めて不良であった以前の治療成績は21世紀に入り急速に向上し,5年生存率は40-50%に達するようになった.しかしながら胆道癌の治療は未だに大きな課題を背負っている.第一に切除不能であった胆道癌の予後は極めて不良で,現時点で最も有効であるGemcitabine+CDDP(GC療法)による化学療法を施行しても平均生存期間は1年以内である.より優れた抗癌剤や分子標的治療薬の開発が待たれるところである.第二に,進行癌は治癒切除が行われたとしても多くの症例が再発する.特にリンパ節転移を有している症例は予後不良であり,リンパ行性転移や血行性転移に対する治療戦略確立は急務である.現在,Gemcitabineを軸とする術後補助化学療法の臨床研究が遂行中でありその結果が待たれる.一方,予後不良因子を有する症例,例えばリンパ節転移が高度であるもの,切除断端陽性となる可能性が高いもの,高度な脈管浸潤を有している症例などを,""not optimally resectable""と定義することができよう.これら症例に対しての術前化学(放射線)治療などが検討されており結果が期待される.切除不能症例に対してもGC療法を凌駕する抗癌剤の組み合わせや放射線治療の上乗せ効果の有無,分子標的治療薬の研究開発など,多くの課題が山積している.さらには,発生部位や環境要因,遺伝子変異の有無,バイオマーカー発現等による胆道癌のcharacterizationが行われるべきで,これら科学的因子に基づく個別化治療が望まれている. |
教育講演3 10:40 - 11:30 「消化器癌のサーベイランス」膵臓がんの診断と治療(化学療法を含めて) 司会:横須賀 收 千葉大大学院・消化器・腎臓内科学 演者:古瀬 純司 杏林大・腫瘍内科学 がんの統計によると,わが国の膵癌による罹患数は年間29,025名(2007年),死亡数は年間28,829名(2011年)であり,依然増加傾向にある.また,罹患数と死亡数がほぼ同数であること,切除例も含めた5年生存率が10%以下であることなど,膵癌は極めて予後不良の癌腫である.現在,切除手術が唯一膵癌に対する根治治療であり,早期診断の確立が望まれるが,未だ多くが切除不能の状態で診断されている.1) 膵癌診療ガイドラインの改訂 2013年,膵癌診療ガイドラインが改訂される予定であり,リスクファクター,診断手順,化学療法など新たなエビデンスも出てきている.早期の膵癌診断については,リスクファクターを有する例でのスクリーニングの重要性や早期発見を目指した地域連携の取り組みも行われている.また,リスクファクターのひとつである家族性膵癌ではプラチナベースの化学療法が極めて有効との報告も出てきている.2)切除不能膵癌に対する化学療法わが国では2001年よりゲムシタビン(GEM)単独療法が切除不能膵癌に対する標準化学療法として用いられてきた.その後,新たな治療法の開発が積極的に行われてきたが,必ずしもよい結果は得られていなかった.その中で,上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬エルロチニブがGEMとの併用により,有意な生存期間の延長を示している.わが国でも日本人での安全性確認のための第2相試験が行われ,2011年保険適用が承認された.一方,経口フッ化ピリミジン薬S-1は第2相試験で有効性が見込まれ,2006年適用が承認された.その後,GEM,S-1,GEM+S-1併用(GS療法)の3群による第3相試験(GEST試験)が実施され,GEMに対するS-1の非劣性が証明されたものの,GS療法の優越性は得られなかった.これらのエビデンスにより,2013年の改訂版ガイドラインでは切除不能膵癌に対する標準化学療法として,GEM,S-1,GEM+エルロチニブが推奨されている.最近,海外では5-FU,ロイコボリン,イリノテカン,オキサリプラチンを併用するFOLFIRINOX療法およびGEM+ナブ-パクリタキセル併用療法が相次いでGEMに対して有意な生存期間の延長を示し,わが国でもこれらの治療法が近く導入されるものと期待されている.今後,膵癌治療も多様化が見込まれ,適切な選択と確実な実施が求められるものと考えられる.3) 切除後補助療法の動向GEMが切除不能膵癌の標準治療として確立した後,術後補助療法でもGEMを用いた検討が行われてきた.海外で行われたGEMと手術単独との比較試験(CONKO-01試験),GEMと5-FU+folinic acidとの比較試験(ESPAC-03試験),わが国で行われたGEMと切除単独の比較試験(JSAP-02試験)の結果,GEMが標準術後補助療法として広く用いられてきた. 最近の動向として,海外ではGEM+カペシタビンなどの併用療法やFOLFIRINOXなどによる術後補助療法が行われている.わが国ではS-1とGEMとの第3相試験(JASPAC-01試験)の結果が2013年1月公表された.当初GEMに対するS-1の非劣性を検証するデザインであったが,GEMに対するS-1のハザード比が0.56と有意に良好な成績が得られ,優越性が証明された.2013年改訂ガイドラインでは,治癒切除後の補助療法はS-1が第一選択の治療として推奨されている.現在,直接の抗腫瘍効果の高いGEM+S-1併用を用いた術後補助療法あるいは術前補助療法の臨床試験が進められている. |
教育講演4 14:00 - 14:50 「消化器癌のサーベイランス」食道扁平上皮癌のサーベイランス 司会:屋嘉比 康治 埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科 演者:有馬 美和子 埼玉県立がんセンター・消化器内科 食道癌のサーベイランス,特に食道表在癌のサーベイランスには内視鏡検査が不可欠である.ヨード染色とNBIやFICE,Blue LASER imaging (BLI)などの画像強調法併用拡大内視鏡が診断精度の向上に寄与している.食道癌のハイリスクグループおよび,診断経緯,画像強調法併用拡大内視鏡による食道癌のサーベイランスの方法と成績について報告する.1)食道癌サーベイランスにおけるリスク因子:食道扁平上皮癌のリスク因子は,55歳以上の男性,大酒家,ヘビースモーカー,野菜・果物の摂取不足,食道・頭頸部癌の家族歴などが挙げられ,リスク因子が重なるほどリスクが高くなる.飲酒家のなかでもアルデヒド脱水素酵素2 (ALDH2)のヘテロ欠損とアルコール脱水素酵素1B (ADH1B)のホモ低活性型のリスクは高く,現在または飲み始めた1〜2年にコップ1杯のビールで顔が赤くなる体質かどうかが目安になり,赤血球のMCV増大がマーカーとなる.内視鏡所見のマーカーとしては,口蓋や咽頭・食道のメラノーシス,多発ヨード不染が拡がるまだら不染食道があり,これらのサインがある症例は頭頸部癌および,多発食道癌のリスクが高い.2)食道表在癌の発見経緯:食道表在癌の発見には内視鏡検査が必要であることは周知の事実である.2010年1月〜2012年12月に当院で内視鏡治療を施行した表在癌178例でも,177例(99.4%)が内視鏡検査で発見されていた.また,検査を受けるきっかけとなった症状を有した16例中,食道癌が原因と考えられる前胸部違和感や熱い物がしみるなどの症状を示したのは4例(2.2%)に過ぎなかった.150例(84.3%)は症状がないものの,人間ドックや定期的な健康診断,集団検診の内視鏡検査で発見されていた.3)頭頸部癌患者の上部消化管スクリーニング内視鏡検査における食道癌サーベイランス:NBIなどの画像強調法を併用すると,早期食道癌の多くはbrownish areaとなって視認しやすくなるが,これらは通常観察でも十分拾い上げが可能な病変であることが多い.血管変化の乏しい上皮内癌や白色調の病変もあるため白色光観察も重要であり,接線方向になって観察しにくい部位もあるので初回検査時にはヨード染色も併用することが勧められる.頭頸部癌初診患者の初回スクリーニング内視鏡検査における,食道表在癌の拾い上げ診断能を検討した.往路は通常光観察し,復路でNBI/FICE/BLI観察したのち,ヨード染色を行い,2009年12月〜2013年3月に検査を施行した353例中43例(12.2%)に食道癌が発見された.通常光観察で発見された症例が37例(86.1%),NBIが1例,ヨード染色が6例であった.使用機種ではGIF-H260Zを用いた176例中19例(10.8%),EG-590ZWが75例中9例(12.0%),EG-L590ZWが102例中15例(14.7%)の発見率であった.4)食道表在癌内視鏡治療後の多発病変のサーベイランス:食道表在癌内視鏡治療後のfollow up内視鏡は,基本的に6ヶ月ごとに行っている.画像強調法併用拡大内視鏡を用いた内視鏡検査で,異時性多発癌の発見頻度,発見したmodality,症例の特徴を検討した.2006年1月〜2012年10月に内視鏡治療を施行した280例中,多発癌は33例48病巣(11.8%)に認められた.このうち通常光観察で発見したものが37病巣(77%),BLIが2病巣,ヨード染色が9病巣であった.33例中25例(76%)は背景粘膜がヨード染色で高度なまだら不染を示し,そのうちの15例が頭頸部癌合併例であった.食道癌の早期発見には高解像度の内視鏡を使用することが勧められるが,病変の拾い上げには使用している機種に応じた画像強調法の活用が有効と考える. |
教育講演5 14:50 - 15:40 「消化器癌のサーベイランス」胃がんのサーベイランス(診断と治療を含めて) 司会:平石 秀幸 獨協医大・消化器内科 演者:上村 直実 国立国際医療研究センター国府台病院 他のがんと同様,胃がんも遺伝子異常の重複により臨床的胃がんへと発育することが知られているが,H. pyloriの出現によりその概念や診療における対応が大きく変わってきた.本教育講演では,現時点での胃がんのサーベイランスに関する最近の変化を紹介する.1)胃がんの疫学と自然経過悪性腫瘍の中でも罹患率が最も高く,死亡者数は肺がんに次いで2番目である.最近の疫学における動向では,H. pylori感染率の推移と並行して若年者の胃がん死亡率は著明に低下しているが,高齢者の胃がん死亡者数は逆に増加している.胃がんは,分子レベルの発がんから内視鏡で観察可能な大きさに発育するのに10年以上を要すると推測されているが,,H. pylori感染は早期の段階におけるpromoterとして胃がんの発育に関与している.その後,臨床的に内視鏡治療可能な早期がん,外科的切除が可能な早期から進行がん,そして腹膜浸潤や遠隔転移を有する予後不良な進行がんに発育していく.2)H. pylori除菌による胃がんの予防現時点で分子レベルでの発がん予防をヒトで確認する手段はないが,H. pyloriの除菌による胃がん予防が注目されている.中でもEMR後の除菌による異時性胃がんの発見頻度が低下するとの報告が有名であるが,除菌後にも胃がんが発見されるケースもあり,除菌による胃がん予防が完全でない点に注意する必要がある.3)胃がんの早期発見方法H. pylori除菌による胃がん予防が完全でない現在,胃がん対策には早期発見が重要である.わが国は胃がんの最多国であり,従来,バリウム検診を中心として胃がんの早期発見に対する努力が払われてきたが,最近.バリウム検診に多くの課題がみられる.一方,胃粘膜の萎縮性変化を判定できる血清ペプシノゲン法(PG法)と血清のピロリ抗体を利用した『胃がんリスク検診』が注目されている.この方法は,X線や内視鏡のように病変を直接調べるものではなく,H. pylori感染の有無とPG値から背景胃粘膜の胃がんリスクを判定する方法である.今後,胃がんによる死亡者を減少するためには血清学的に判定可能であるPG法と血清抗体法を使用した『胃がんリスク検診』と除菌治療を組み合わせた戦略が必要と思われる.その他,来るべきH. pylori陰性時代を考慮してH. pylori感染に関連のない胃がんについても言及したい. |
教育講演6 15:40 - 16:30 「消化器癌のサーベイランス」大腸 司会:屋嘉比 康治 埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科 演者:斎藤 豊 国立がん研究センター中央病院・内視鏡科 【大腸癌の発育進展】大腸癌の発育進展には,以前よりポリープ癌化説が支持され大腸癌における早期診断・治療の中心的役割を担ってきた.一方,工藤らの診断努力により陥凹型早期大腸癌が稀ならず存在することが明らかとなっている.【多施設前向き無作為化比較試験-Japan Polyp Study (JPS)】陥凹型腫瘍の頻度も異なり,内視鏡観察の精度も異なる欧米の知見をそのまま日本に当てはめることには異論があり,日本における多施設共同無作為化比較試験が計画され,すでにRCT後の経過観察を終了した.【多施設における遡及的検討-JPSレトロ】JPSを開始するに際し,6施設おける遡及的検討を行った.Index Lesion;IL(0mm以上の上皮性腫瘍,癌腫)の推定発生率は,A(Pure-NAD )+B(5mm以下腺腫のみ)群;(5%)<C(6mm以上の腺腫切除)+D群(M癌);(13%)と後者が有意に高率であった(p<0.0001.ILの発生率5%以内を許容範囲とした場合の適正な検査間隔は,A群は10年を超えるもののB群では6年,C・D群で3年という結果であった.【ESDとEMRの治療成績】2003年1月から2006年12月までに当院で20mm以上の大腸腺腫・早期癌に対して内視鏡治療を行った553病変中,病理学的に大腸癌治療ガイドラインの治癒切除基準を満たし,6ヶ月以上の経過観察が可能であった373病変(EMR:228病変,ESD:145病変)を対象とし,治療法別の遺残再発率,偶発症,治療時間を検討した.EMR群,ESD群における一括切除率は33% vs. 84%であり,ESD 群で有意に高く,その結果,遺残・再発率はEMR群では14% とESD群の2%より有意に高かった(平均観察期間13.4±7.9, range:6‐40).内視鏡での追加治療で94%は対処可能であったが,1例は浸潤癌として再発し,外科手術を要した.偶発症の観点からは,穿孔をEMR群,ESD群でそれぞれ0.9%,6.2%に,また,後出血をEMR群3.1%,ESD群1.4%に認めた.治療時間はそれぞれ平均29分・108分とESD群では約3倍の時間を要した.【大腸SM癌内視鏡治療後のFollow-up】大腸pSM癌の長期成績(多施設・retrospective)からガイドライン治療の妥当性を検討した.783例のうち経過観察可能症例は123例で,長期成績は再発2例(1.6%),死亡4例(原病死1例),5年無再発生存 93%,5年全生存 97%であった.追加治療が考慮された症例のうち,追加治療非施行群102例と施行群197例において,再発率はそれぞれ5.8% vs 2.5%,5年無再発生存90% vs. 97%と,統計学的有意差はないものの追加手術施行群に良好な傾向にあり,外科手術の意義が示唆された.長期成績の観点からは,ガイドラインに即した治療法選択は妥当であると考えられたが,実臨床においては,経過観察可能群においても再発riskを念頭におく必要性がある.【おわりに】大腸がんの診断・治療・サーベイランスについて述べたが,大腸がんは早期発見・治療することで高率に治癒が期待できる疾患であり,早期発見・診断法の確立と内視鏡的治療法の開発・普及に加え,大腸がん検診の国民への啓蒙が重要である. |