l. 自己免疫性甲状腺疾患の病態と治療 藤田保健衛生大学内分泌・代謝内科学 伊藤光泰 自己免疫性甲状腺疾患は遺伝的素因に環境因子が加わって発症し,Thl/Th2/Th17および制御性T細胞の異常が病態に関与している。橋本病ではサイログロブリン(Tg) や甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO) などに対する抗体がみられ,HLA class 1拘束f生のTgあるいはTPO特異的なCD8+細胞が増加して甲状腺傷害性に働いているとされる。 Basedow病は多くの疾患感受性遺伝子が報告され, 橋本病についても免疫応答に関与するCTLA-4(cytotoxic T-Iymphocyte associated antigen 4)遺伝子の多形の報告が多い。microRNAは標的mRNAに相補的に結合することにより遺伝子発現を制御する。血中にもmicroRNAが, 細胞からエクソソーム等に包まれて存在する。自己免疫性甲状腺疾患の血中microRNAは健常人に比べて, 数十種類が2倍以上の発現強度を示し病因への関与の解明が期待される。環境因子では,ヨウ素摂取量,喫煙,妊娠・出産が重要である。甲状腺自己抗体の存在は機能低下症,妊娠中の合併症のリスクを増大させる。 Basedow病は抗TSH受容体抗体によるTh2優位な疾患であり,B細胞活性化が病態の増悪に関与している。未治療Basedow病のCD8+細胞減少, 治療による活性化CD8+細胞の上昇はTh2への偏りの是正が治療では重要なことを示唆している。B細胞のCD20を標的としたモノクローナル抗体による欧米での治療は,眼症で一部効果は得られたが,再燃例での甲状腺機能を改善できなかった。抗甲状腺薬治療には頻度の高い重篤な副作用があり,完全緩解率は半数以下と低い。再発予知因子に甲状腺腫の大きさがあり,甲状腺刺激抗体,ヨウ素など多くの因子が関与し,その解明も重要である。未治療Basedow病 ではIL-18などの増加がみられ,緩解群では末治療あるいは難治群に比べてTNFα/sCD40Lの比が高く治療経過の指標となりうる可能性がある。 個々の甲状腺機能は狭い範聞に制御されている。加齢による影響を考えた基準値が設定されるべきである。潜在性機能低下症と潜在性中毒症はともに心血管イベントのリスクとして生命予後にも影響する。病因に基づく根本的治療を求める努力が今後も必要である。 |
2. 膵炎の病態と治療 東京女子医科大学消化器内科 白鳥敬子 膵炎は急性膵炎, 慢性膵炎に分けられ, 成因からアルコール性, 胆石性, 遺伝性, 特発性の膵炎と呼ばれる。最近,自己免疫性膵炎も知られる。 急性膵炎は膵酵素の活性化による自己消化である。炎症が膵局所に留まる軽症と,重症では傷害された膵実質から多量の炎症性mediatorが放出され多臓器不全やSIRSを併発し,腸内細菌の移行による重症感染症を合併することもある。成因はアルコールや胆石が多いが,女性では特発性も多い。重症度を判定し,重症例はICU管理とする。治療では十分量の初期輸液が極めて重要で予後を左右する。蛋白分解酵素阻害薬や抗菌薬とともに,疼痛にNSAIDsや非麻薬性鎮痛薬を投与する。重症では早期からの経腸栄養の導入が望ましい。 慢性膵炎は持続的な炎症により膵組織の破壊と線維化が進行し,膵内外分泌機能が低下する疾患で代償期,移行期,非代償期に分けられる。原因は男性ではアルコール,女性では特発性が多い。慢性膵炎が進行すると膵管に蛋白栓や膵石が出現し,膵管の不整拡張がみられる。代償期での腹痛には鎮痛・鎮痙薬や経口蛋白分解酵素阻害薬の投与,醇石や膵管内圧上昇に起因する腹痛にはESWLや内視鏡的に治療を行う。消化不良と膵性糖尿病が主となる非代償期では補充療法として高力価消化酵素薬,インスリン治療を行う。慢性膵炎は膵癌危険因子であり長期にわたる経過観察が必要である。 自己免疫性膵炎は発症に自己免疫機序の関与が疑われる膵炎で,我が国から発信された疾患概念である。膵腫大・膵管狭細が特徴で,血中γグロブリン高値, IgG・IgG4高値,自己抗体陽性を示す。組織学的にはリンパ球や形質細胞浸潤がみられる。胆管狭窄による閉塞性黄疸,糖尿病に加えて,硬化性胆管炎,硬化性唾液腺炎,後腹膜線維症,間質性腎炎など多彩な疾患を併発する。治療はステロイドが有効であるが,膵癌との鑑別が極めて重要である。 |
3. 白血病の分子病態 東京大学大学院医学系研究科血液・腫蕩内科学 黒川峰夫 白血病は造血細胞が単クローン性増殖をきたす疾患で,主な病型は急性白血病と慢性骨髄性白血病である。急性白血病では,造血前駆細抱レベルに遺伝子異常が生じて幼若な芽球が増殖する。急性骨髄性白血病と急性リンパ'性白血病に分かれ,いずれもよく認められる染色体転座がある。急性骨髄性白血病ではt (8; 21), inv(16), t (15 : 17)が代表的なもので,それぞれAML1/Runx1-ETO,CBFβ-MYH11,PML-RARαキメラ遺伝子を形成する。 t (15 ; 17)は急性前骨髄球性白血病に特異的である。キメラの構成遺伝子は正常では造血系の分化に重要な転写因子などをコードし,その機能異常が白血病発症に関わる。 t (15 ; 17)陽性例では, PML-RARαを標的としたレチノイン酸を用いることで高い治癒率が得られる。染色体転座以外ではFLT3重複変異などの異常が知られている。FLT3は受容体型チロシンキナーゼで,重複変異はその恒常的活性化をきたし,予後不良な白血病を引き起こす。 成人の急性リンパ性白血病ではt(9:22) とt(4:11)などがよく見られ,それぞれBCR-ABL,MLL-AF4を形成する。ABLはチロシンキナーゼであり,BCRと融合することによりそのキナーゼ活性が亢進し,増殖シグナルが活性化される。MLLは転写因子であり,MLL-AF4の異常な機能獲得が白血病の一因となる。 慢性骨髄性白血病では病初期には分化能を保ったまま,各成熟段階の骨髄系細胞が増加する。造血幹細胞レベルにt(9:22 )転座によってBCR-ABLキメラ遺伝子が生じることが疾患の原因となる。同じBCR-ABLでも,急性リンパ性白血病では190kDの蛋白質が生じることが多いが,慢性骨髄性白血病では210kDの蛋白質をコードするものが多い。慢性骨髄性白血病ではABLに対するチロシンキナーゼ阻害薬が著効を示す。 |
4. 脊髄小脳変性症最近の進歩 北海道大学大学院医学研究科神経内科学分野 佐々木秀直 脊髄小脳変性症(SCD) は運動失調を中核症候とする,一群の慢性進行性神経変性疾患の総称である。平成23年度の特定疾患医療受給者証交付数は,多系統萎縮症(MSA)が11,797人,“その他のSCD"が25,047人である。疾患構成では,我が国のSCDの1.8%が劣性遺伝性疾患で,27%が優性遺伝性疾患,孤発性疾患は67%である。そして孤発性疾患の実に65%はMSAが占めている.。OMIM (Online Mendelian Inheritance in Man)において優性遺伝性SCAはSCA36まで登録されている。SCAの当該遺伝子と起因変異の同定に関して我が国の研究者の貢献が大きい。最近ではSCA31やSCA36,及び劣性遺伝性失調症であるSYT14の起因変異同定などはその例である。SCDとして扱われている痙性対麻痔(SPG)については,運動失調症班のJASPACが症例の集積と遺伝子解析を進めている。SPGは痙縮のみを主徴とする純粋型と,他の症候を伴う複合型に大別される。SPGはSPG46まで登録されているが,その中で起因変異不明のものが残されている。以上,SCAは臨床像と同じく,原因も多彩である。 SCDの中で最も頻度の高い疾患はMSAである。欧米ではparkinsonismで発症する例が多いのに比して,我が国では運動失調で発症する例が60%以上を占める。この相違は人種聞の遺伝学的背景によると推定されている。MSAについては素因遺伝子の解明と,将来の治験に備えて自然歴と重症度評価系の開発が進んでいる。まだ素因遺伝子として確立したものは報告されていないが,今後の展開に期待される。皮質性小脳萎縮症CCAは頻度の高い疾患であるが,その原因には自己免疫機序の関与を示唆する例もあるなど,複数の原因があるものと推定される。 以上の進歩を踏まえて, SCDに関する最近の話題と課題を紹介したい。 |
5. 血管炎の最新知見 杏林大学第一内科(腎臓・リウマチ惨原病内科) 有村義宏 血管炎とは,大動脈から毛細血管,静脈に至る血管系の血管自体を炎症の場とする疾患である。血管炎には多くの疾患が含まれ,多臓器障害性で難治性の疾患が多い。血管炎の基礎・臨床研究は,1982年の抗好中球細胞質抗体(antineutrophilcytoplasmic antibody :ANCA)の発見が契機となり,さらに1994年のChapel-Hill分類の提唱により大きく進展した。本分類により,@血管の太さや血管炎内の各疾患が定義され,AANCA関連血管炎という疾患概念が確立し,B血管炎に属する疾患が主な罹患血管径により分類された。この分類は,基礎研究に影響を与えるとともに,特に臨床研究(血管炎の分布,人種差,治療薬の検討など)に大きな影響を与えた。 たとえばANCA関連血管炎の中で,PR3-ANCA陽性の多発血管炎性肉芽腫症( 旧Wegener肉芽腫症)は欧米に多く,我が国ではMPO-ANCA陽性の顕微鏡的多発血管炎が多いこと,ANCA関連血管炎にシクロフォスファミド点滴静注療法やリツキシマブ治療が有効なことが明らかとなった。 そのほか血管炎研究では最近の数年間でも多くの注目すべき成果が報告されている。本講演では,その中で,特にANCA関連血管炎について,@病態研究の進歩:好中球活性化,標的抗原,in-situ免疫複合体,T細胞の関与,A診断・治療の進歩:ANCA測定系の改良, 新規治療,新しく提唱された内外の診療ガイドライン,B2012年に改定が提唱され,今後の臨床研究に大きな影響を与えると考えられる改定Chapel-Hill分類(病名・定・疾患定義・分類の改定など)について概説する. これらの最新知見は, リウマチ内科,腎臓内科呼吸器内科の専門医だけでなく,初診例を診療する機会の多い一般内科医にとっても有用と思われる。 |
6. 心不全の病態と内科的治療 東京慈恵会医科大学内科学講座循環器内科 吉村道博 心不全は,心機能の低下により,末梢循環不全やうっ血を来す病態であるが,そこには数多くの神経体液性因子が関与している。特に, レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系,交感神経系は,循環維持に役立っているが,それらの過剰の活性化は,かえって心不全の病態を進めている。それに対抗して,心臓からナトリウム利尿ペプチドが分泌され,ホルモンバランスを取ろうとしているが,前者に対しては不十分である。そこで,この現象を応用する形で,血築BNP濃度測定が心不全の診断に,そして,合成ヒトANP(カルベリチド)の静脈内投与が急性心不全治療法として確立した。 心不全の治療においては,集学的治療が必要であるが,ここでは内科的治療を中心に述べる。急性心不全においては,救命の観点から迅速な初期対応が望まれる。特に血行動態の改善に重きが置かれ,うっ血がある場合には血管拡張薬や利尿薬を用いる。末梢循環不全が強い場合は,カテコラミン薬の静脈内投与が必要である。また,限外濾過療法(ECUM),持続性血液濾過透析(CHDF),大動脈内バルーンパンピング(IABP),経皮的心肺補助装置(PCPS) などを必要に応じて使用する。心不全の治療においては呼吸管理が重要であり,適切な酸素投与,非侵襲的陽圧換気療法(NPPV),さらには気管内挿管が必要になることもある。 急性心不全の最近の薬物療法は,血行動態の改善のみならず,急性期から出来るだけ臓器保護を心掛けるという考え方が基盤となっており,カルベリチドなどはそのような観点からよく用いられる。そして,慢性心不全の薬物療法では,臓器保護の考え方はさらに明確になる。心不全の基礎疾患や重症度でも異なるが,内服薬としては,ACE阻害薬(またはARB),β遮断薬,抗アルドステロン薬が中心となり,生命予後やQOLの改善に役立つことが期待されている。 |
7. 今日の結核-診断・治療から感染対策まで 国立病院機構東広島医療センタ一重藤えり子 内科の診療において結核は見逃しではならない疾患である。その診断の遅れは集団感染や院内感染に直結する。また,治療が不適切であれば薬剤耐性菌の誘導と感染拡大のリスクが高まる。結核はその疾患の重篤性,感染性から公衆衛生上も重要な疾患であり, 感染症法において2類に位置付けられ,その診療に際しては診断直後の届け出,治療においては「医療の基準」の存在と医療費の公費負担制度,保健所が行う積極的疫学調査(接触者検診)など行政も強く関与することが規定されている。 結核の感染拡大に最も重要で、あるのは患者の早期発見である。感染性が高いのは喀痰抗酸菌塗抹陽性の肺結核患者であり,診断に際しては胸部X線撮影が手掛かりとなる。しかし,診断の基本は肺外結核も含めて適切な検体を用いた抗酸菌塗抹・培養検査(陽性の場合には薬剤感受性検査)である。最近は核酸増幅同定による迅速な菌の同定,更には耐性遺伝子の検出も可能になっている。これらの検査の普及および適切な使用が望まれる。 治療は,「I結核医療の基準」に沿って行う。イスコチンとリファンピシンを軸にピラジナミドを含む4剤併用が基本である。副作用の頻度は比較的高く注意が必要であるが,標準治療からの逸脱はできるだけ避ける。薬剤耐性や副作用のため標準治療が行えない場合には専門家に相談すべきである。新薬の可能性も見えてきているが,さらなる薬剤耐性を作らないためにその 使用には慎重であるべきである。 最近は接触者だけでなく免疫抑制状態にある患者等の発病ハイリスク者に対しでも潜在性結核感染症として積極的に治痕が行われる。日本の結核は高齢者や免疫抑制状態を来す疾患をもつ患者へ偏在しており,大半の患者が一般医療機関において診断されている。その後の治療も含め,結核専門医療機関と地域の一般医療機関の連携による医療提供が必要である。 |
8. 生物学的製剤使用患者の感染症リスクと対策 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害l監視学講座 針谷正祥 Tumor necrosis factor (TNF) 阻害薬を中心とする生物学的製剤は,関節リウマチ(RA),炎症性腸疾患(IBD),乾癖などの自己免疫疾患の新たな治療薬として過去10年間に次々と臨床に導入され,これらの難治性疾患の治療成績が格段に向上した。その一方で,生物学的製剤はさまざまな副作用を有することが明らかとなり,その対策が極めて重要な臨床的課題となった。中でも, 感染症は頻度および重症度から最も重要な副作用と位置付けられている。 国内では,殆どの生物学的製剤承認時に全例製造販売後調査が義務付けられ,投与開始から6カ月間の有効性・安全性に関する詳細なデータが集積されてきた。また,我が国を含む世界各国で生物学的製剤使用患者レジストリーが立ち上げられ,中・長期に亘る有効性と安全性が解析されている。これらの検討結果から,1)生物学的製剤投与患者における感染症の種類・発現時期・重症度などの臨床的特徴,2)感染症のリスク因子となる患者背景や併用薬,3)原疾患が感染症発現に及ぼす影響,などが明らかとなった。生物学的製剤使用患者では,一般感染症の他に日和見感染症として,結核およびニューモシスチス肺炎(PCP) が特に重要である。TNF阻害薬使用により結核の発現リスクは一般人口の数倍から十数倍に上昇し,肺外結核が高率に認められる。PCPは,欧米と比較してTNF阻害薬使用日本人RA患者で高頻度に発現する重症感染症であり,急速な臨床経過を示すため,迅速な診断と治療が特に要求される。また,低頻度ではあるが,生物学的製剤投与下のB型肝炎ウイルス再活性化も注目され,レジストリー研究が進められている。 本講演では,生物学的製剤使用患者の感染症に関する国内外のエビデンスを整理し,感染症に対する適切なスクリーニング,予防,モニタリングについて概説する。 |
9. 利尿薬を使い分ける 独立行政法人労働者健康福祉機構旭労災病院 木村玄次郎 利尿薬を服用している限りNaバランスは常に負となり,服用する毎にNaが尿中に失われ続けると考えられがちである。しかし少し考えれば,それは誤りであることに気づく。負のNaバランスが続けば,脱水に陥りミイラにならざるを得ないからである。実際には,通常1週間程度だけNaバランスは負となるが,それ以降は新しい定常状態に達し,その後の体液量は一定に維持される。このとき体液量や血圧は,利尿薬服用前に比し低くなっている。この時期,Na利尿作用が見えない状態にあっても,利尿薬は作用し続けており中止すればNa排推量は減少し元の高い体液量や血圧に復する。つまり,利尿薬は「Na排泄を永遠に促進する薬剤」ではない。正確には「本来,多い体液量・高い血圧でなければ排世できないNa量を,もっと少ない体液量・低い血圧下でも排池可能とする薬剤」である。 尿細管セグメントにおける作用部位や強度,持続時間などをよく理解した上で,病態に応じて利尿薬を使い分けることが重要である。概して,浮腫が強い急性期にはフロセミドを,しかし,浮腫が軽快し定常状態に近づけばサイアザイドを選択するのが理に適っている。尿細管の終末端に作用する抗アルドステロン薬は,高K血症がない限り基礎薬として併用する。 一方,高血圧ではRA系抑制薬が臓器保護の観点から第一選択薬として汎用されている。そのため,高K血症を防止する意味から併用利尿薬はサイアザイドとなる。利尿薬の最大の効用は,体内Na量を減少させ,血圧日内リズムをnondipperからdipperに正常化することにある。その結果,心不全や脳卒中などの心血管事故を抑制する。夜間降圧に一致して尿量が減少するため夜間排尿が不要となり,十分な睡眠が確保でき,生活の質改善も期待される。サイアザイドにはCaバランスを正に転じ骨密度を高め骨折を予防する作用もある。日本人は世界的にも最も食塩摂取量の多い民族でありながら,利尿薬の使用頻度は極めて低い。その活用法については,日本でこそ見直す必要があろう。 |
10. 特発性肺線維症の診断と最新治療 東邦大学内科学講座呼吸器内科学分野 本間栄 特発性間質性肺炎(IIP) は7型に分類されるが,その中で特発性肺線維症(IPF)は最も予後不良で,発症後の平均生存期間は3〜4年である。IPFの詳細な病態は不明であるが,主に肺胞上皮や基底膜が何らかの刺激で傷害された後の異常な修復反応と捉えられている。その際,様々な炎症細胞ならびに間質細胞から産生される種々のサイトカイン及び増殖因子の作用により病態が修飾されている。TNF-α,IL-1 ,IL-6等の炎症性サイトカイン,TGF-β,FGF等の組織再構築に関与する増殖因子,さらにIFN-γの低下やIL-4等の上昇に起因するTh-2へのシフトが線維化を促進すると考えられている。診断:IPFの確定診断には,外科的肺生検(SLB)によってUIPパターンの確認が必要であるが,IPFとして特徴的な臨床像とHRCT画像所見等を満たせば,SLBを行わなくとも臨床診断は可能である。しかし,HRCT所見で蜂巣肺が認められない場合や,IPFに典型的ではない臨床所見や生理学的所見を示す場合は他の間質性肺炎との鑑別のためSLBによって診断することが推奨される。治療:IPFは治癒が期待できない慢性進行性疾患であるため,改善にいたらないまでも悪化を阻止することが治療目標である。従って治療効果と副作用のリスクをよく検討し,必ずしも全例が治療適応とはならない。IPF増悪例の治療には,これまでステロイド剤が広く使用され進行性に悪化する場合,シクロフォスフアミド,アザチオプリンなどの免疫抑制剤が併用されてきた。しかし効果は十分とは言えず,これらの薬剤はいずれも直接的,間接的に炎症過程を抑制することが主体であり,徐々に進行する線維化を阻止または改善するものではない。従ってIPFの治療薬として抗炎症作用のみならず,慢性進行性の線維化を抑制する薬剤が望まれてきた。この様な観点から近年,疾病早期から主に抗酸化作用を有するN-アセチルシステイン吸入ならびに抗線維化薬としてピルフェニドンが治療薬として注目を集めている。 |
11.多発性硬化症(MS) と視神経脊髄炎(NMO) 東北大学医学系研究科多発性硬化症治療学寄附講座 藤原一男 多発性硬化症(multiplesclerosis :MS) と視神経脊髄炎(neuromyelitis optica :NMO)は,免疫性神経疾患の中でも最近の病態解析や治療に関する研究の進歩が極めて著しい疾患である。 MSは中枢神経の炎症性脱髄疾患であり,病変が時間的空間的に多発することが大きな特徴である。MSは欧米の若年成人における主要な神経疾患であり,その機能障害は患者の長期的なQOLに重大な影響を及ぼしている。一方わが国のMSの有病率は欧米に比べて低いことが指摘されてきたが,近年はその症例数が着実に増加している。以前はMSの診断は臨床症候のみを頼りにして行われ,再発や病状進行を抑制する治療薬も存在しなかった。しかし1980年代から急速に普及した脳脊髄MRI検査は,症候性のみならず無症候性のMS病変の鋭敏な検出を可能にし,MRI所見を取り入れたMcDonald基準はMSの早期診断を可能にした。またMRIは病態研究や治療効果の判定にも重要である.またMSの病因に関与する種々の遺伝因子及び環境因子や多様な分子病態の理解が進み,1990年代半ば以降からはMSの長期経過を改善する疾患修飾薬が登場してきた。しかし慢性進行型MSの有効な治療法はまだない。 NMOは重症の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする疾患であるが,以前からMSとは別個の独立した疾患であるのかどうかが議論されてきた。しかしNMOに特異な抗アクアポリン4抗体(NMO-IgGとも呼ばれる)が発見されて以後,その特徴的な臨床症候, MRI等の検査所見や病態,治療薬への反応性などが解析され,MSとの重要な相違点が報告されてきた。そしてNMOはアストロサイト障害が主な病態であり,アストロサイトパチーという新たな疾患概念であることが明確になっている。 本講演では,MSとNMOに閲する臨床,病態,治療や今後の課題などについて概説する。 |
12. 輸血療法とその副作用一見逃されている臨床病態一 京都大学医学部附属病院輸血細胞治療部 前川平 輸血による感染症は核酸増幅検査の導入により激減し,致死率の高い輸血後GVHD(移植片対宿主病)は血液製剤への放射線照射により見られなくなった。しかし,そのほかの輸血副作用は日常臨床においてしばしば観察される。溶血性輸血副作用と非溶血性輸血副作用に大別した場合,前者は後者に比べて頻度は少ないものの,発症すれば重篤な症状を呈することが多い。溶血性副作用は時間的要因から二つに分けられる。輸血後24時間以内に発症した場合を急性輸血副作用,24時間以上経過してから発症してくるものを遅発性溶血性輸血副作用(delayed hemolytic transfusion reaction : DHTR)と呼ぶ。代表的な急性輸血副作用はABO不適合輸血時の抗A抗体・抗B抗体による血管内溶血であり,輸血開始後10分程度で静脈に沿った熱感,悪寒戦慄,呼吸困難,胸部痛,腹痛,嘔吐などで発症し,輸血開始後患者の様子を観察していれば通常気づく。ABO不適合輸血はしばしば致命的で,医療安全の観点から発生防止のために種々の対策がとられている。DHTRは,抗Fy抗体や,抗E,抗D抗体などの不規則抗体による血管外溶血,あるいは補体結合性の抗Jk抗体などの場合は血管内溶血として発症する。約100万個の分子が関与するABO式血液型と異なり,その他の血液型の抗原決定基数は少なく補体を活性化することはまれで,血管内溶血や腎不全を発症する例は少ない。DHTRでは輸血後数日経ってから発熱とともに貧血が進行したり,ビリルビン値が上昇した場合,輸血との時間的な繋がりが希薄なことから見逃され,また重篤な臨床症状に陥ることがないまま軽快することも多い。しかし,重篤な臨床症状を呈したり,腎不全で死亡する症例も少なからず報告されている。本講演では輸血副作用をオーバービューし,とくにDHTRの臨床病態について臨床症例を提示して考察してみたい。 |
13. 循環器領域における画像診断の現状と未来 日本医科大学内科学講座(循環器内科学)主任教授 水野杏ー 循環器領域の画像診断の飛躍は近年医療技術の進歩,科学技術の発展の為目覚ましいものがある。観血的な方法として,我が国で開発された血管内視鏡は,世界に多大なインパクトを与え,血管内視鏡により循環器疾患の病因病態が解明され, 新しい疾患概念が生まれた。また,定性診断のみならず,定量的診療が可能な血管内超音波は循環器疾患のカテーテルインターベンション時,バルーン等のサイズ決定に有用のみならず,プラークの性状診断としても役立っている。最近では,臨床の現場で10μmと非常に高い解像度(空間分離能)を有するopticalcoherence tomography (OCT)や,近赤外光を使用するspectroscopyがプラークの性状診断等に用いられるようになった。例えば,糖尿病は末梢動脈疾患と同等の重要な危険因子と考え,これを伴うのみで動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは,高リスク群に分類される。糖尿病例は,糖尿病のコントロールが悪い程プラークが破綻しやすいいわゆる不安定プラークを多く有しているが,IGTの時からすでに不安定プラークを有する事が解明され,極早期からの糖尿病治療の必要性を裏付けたまた。 molecular imagingにより,組織の分子構造まで診断されつつあり,病態の解明に役立っている。 非観血的な画像診断は,検診などの多くの人達を対象とする際に有用である。CT, MRI,核医学検査等は心血管イベント発生予測のスクリーニング,観血的治療の適応の判断などに使用されている。最近,CT,MRIなどの非観血的診断法で形態学的な診断のみならず,冠動脈血流の測定など機能的な生理学的診断が行えるようになり,画像診断は飛躍的に新たな展開もなしとげている。 画像診断の進歩は科学技術の進歩に負う事が多いが,科学技術の進歩をいかに画像診断に応用するかが臨床医の力量と思われる。 生体に侵襲度がより低く,しかも形態的な画像として診断されるばかりでなく,生体機能も診断できる画像診断が将来望まれる。 |
14. 総合内科専門医の育成について 千葉大学附属病院総合診療部 生坂政臣 地域医療の崩壊は地域中核病院での勤務医不足から始まったとされ,特に全領域の専門医を揃えることが現実的でない中小病院では,救急から入院患者までl幅広い疾患に対処できる一般内科医のニーズが高まっている。この医療崩壊に拍車をかけているのが,ナンバー内科から臓器別診療科への再編が進み,専門外診療を不得手とする内科医の増加とも言われている。事実,初期臨床研修必修化以降,内科研修が不十分なまま認定医となり,そのままサブスペシャリティ研修に進む内科医が増えており,本学会でもジェネラルな内科研修を強化すべく制度改革に着手した。本抄録提出時点での案として,内科認定医を廃止し初期臨床研修を含めた5年間で内科を幅広く研錯して内科専門医を取得した後にサブスベシャリティに進む制度や,教育や臨床研究の実績を加えた内科専門医を,従来の総合内科専門医に代えて内科指導医とする意見などが出されている。 この一階建て部分の研修強化によって育成する内科専門医が非サブスペシャリストとして活躍する場所は大きく3つに分けられ,それぞれ必要とされるスキルも異なる。すなわち大学病院では稀な疾患や複雑な病態の診断と臨床教育の比重が高くなり,地域の一般病院では充足できない臓器専門医の肩代わりとして侵襲的な手技や専門治療まで要求される。さらに診療所では内科だけでなく整形外科,皮膚科,精神科,婦人科などを含めた広範囲の成人プライマリケア診療能力が必須となり,これらすべてのキャリアパスの礎を築くためプログラムを考案しなくてはならない。医療面接に始まり,身体診察,一般検査, (侵襲性のある)特殊検査,そして治療と進む診療の流れの中で,内科専門医としての最低限のスキルは,特殊検査と専門治壌を除いたすべてを全内科領域で過不足なく実行し,必要に応じてサブスペシャリストへ適切なコンサルトを遂行する能力であり,このような内科医が育つ研修体制の構築が望まれる。 |
15,糖尿病腎症の治療 東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科 宇都宮一典 糖尿病腎症(腎症)の増加は著しく,新規透析導入患者の40%以上を占めるに至っている。しかし,腎症の大きな問題は,病期進展とともに心血管疾患のリスクが高まり,死亡率が増加することである。糖尿病がCKDの最大の原因とされる所以であるが,こうした糖尿病における心腎連関は,微量アルブミン尿の早期から作動する。腎症の治療を論じるにあたっては,糖尿病における血管障害の病因論的共通基盤を踏まえて,包括的な血管保護を目指すことが望まれるのである。 インスリン抵抗性は,内臓脂肪蓄積を上流に動脈硬化疾患の基盤病態を担うが,近年,腎症の進展要因にもなることが示されている。腎臓にはインスリン受容体が広く存在し,腎構成細胞におけるインスリン作用不足が腎症の成因に関与する可能性が論じられているが,これらの知見は,インスリン抵抗性は糖尿病における心腎連関に重要な役割を演ずることを示唆している。すなわち,腎症に対する治療にはこうした病態の評価を的確に行い,リスクを層別化し,ハイリスクの症例について早期からの包括的介入が必要である。 腎症の治療は,血糖,血圧,脂質異常症の管理を目標とする。厳格な血糖管理は腎症の発症を抑制するが,顕性化した腎症の進展に寄与する血糖管理の意義はいまだ明確ではない。一方,血圧管理,特にレニン・アンギテテンシン系(RAS)抑制薬はあらゆる病期に進展抑制効果が示されており,腎症治療の第l選択薬とされている。 しかし機序の異なるRAS抑制薬を併用し,強くRAS系を抑えることの意義は,現在論議になっている。腎症には様々な脂質異常症を合併する。スタチンは糖尿病における心血管疾患のリスクを低減するが,腎症の進展を抑制することも判明している。これらの薬物療法によって,腎症の寛解とともに心血管疾患のリスクの低下が期待できる。今後,基盤病態を担う治療標的分子の同定が望まれている。 |
16. 胆石症の病態と治療 広島大学 田妻進 胆石症は消化器病の中では頻度の高い疾患の一つである。胆石の種類(コレステロール石,色素石に大別)や存在する部位(胆嚢,総胆管,肝内胆管)によりその病態は異なり,診療のあり方も多様である。2009年11月に日本消化器病学会より作成された胆石症診療ガイドラインは,疫学・病態,診断・治療,予後・合併症を包括した診療指針として広く普及している。本教育講演では内科医として習得しておくべき胆石症の病態と治療について,診療ガイドラインの要点をまじえて以下を中心に概説する。 1 無症状胆石の取り扱い 胆嚢結石の約半数は無症状であり経過観察が推奨されるが,正常な胆嚢生理機能と胆嚢壁画像に異常を認めないことが前提である。一方,総胆管結石は症状の有無にかかわらず積極的介入が推奨される。さらに肝内結石は肝萎縮,胆管狭窄,肝内胆管癌合併,症状の有無を視点に治療介入を推奨している。すなわち,無症状胆石の取り扱いには精度の高い画像診断が求められる。 2. 総胆管結石治療 内視鏡治療が基本であるが,施設によっては胆管ドレナージや外科的結石摘出術を優先する。その選択は施設の設備や陣容,実績に委ねられる。胆嚢結石を伴う総胆管結石治療も,内視鏡治療に引き続く胆嚢摘出術が推奨されるものの,施設によっては一期的に両者に対する外科治療を行うことを基本とする施設もあり,ガイドラインではその選択を施設に委ねていることから明確な指針が求められる。 3. 肝内結石治療 厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」での肝内結石疫学調査では, 1) 胆管手術既往, 2) 結石除去術(内視鏡治療)後の場合,肝切除に比較して発癌リスクが高く,逆に3)ウルソデオキシコール酸投与例では発癌リスクが低いことが報告されている。肝内胆管癌を念頭におく診療が重要な課題である。 |
17. 日本人の肺癌の特徴と治療 九州大学胸部疾患研究施設 中西洋一 肺癌は急増傾向にあり, 10年以内に世界人類死亡の第5位になると予測されている。日本も例外ではない。原因はタバコと社会の高齢化といわれているが,日本人女性の喫煙率はこの70年間13% 前後とかなり低く,男性喫煙率(85〜40%) の1/3以下である。一方で、日本人肺癌患者の男女比は2:1である。日本人の肺癌は欧米人の肺癌とかなり生物学的特徴が異なっているのである。 祖父江班の報告によると,我が固におけるタバコによる肺発癌は,男性69%,女性20%という(欧米では男女とも90%とされている)。言い換えると,日本人肺癌患者のうち,男性の30%,女性の80%は「タバコとは無縁の肺癌Jということになる。上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異による肺癌がその代表である。この遺伝子変異は,アジア人,女性,非喫煙者,腺癌の患者に多く, EGFR阻害薬(ゲフイチニブやエルロチニブ)が著効する。アジア人肺癌患者の30%以上はこれである。化学療法無効で他に治療法がない患者に対しでも優れた治療効果を有し,アジアの非喫煙肺腺癌患者を対象とした臨床試験(IPASS Study)では標準的化学療法よりも優れた治療効果をもたらすことが示された。さらに,我が国で実施された2つの臨床試験では,EGFR遺伝子変異陽性の患者において標準的化学療法より治療効果に優れるという結果が出た。それ以外にも肺発癌の原因となる新たな遺伝子異常の発見が続いている。 化学療法についても,骨髄抑制等の副作用のパターンや重症度にも人種差があることが明らかになってきた。薬理遺伝学の導入に伴い人種差・個人差がさらに明らかになれば,安全安心な医療の実現に繋がることが期待される。今,我々が肺癌の領域でなすべきことは,日本人にとっての最適医療を構築すること,そのための研究体制を整備し良質で、倫理的な臨床試験を推進することである。この努力が最終的には理想の個別化医療提供に繋がるはずである。 |
18. 透析療法の現況 束京女子医科大学腎臓病総合医療センター血液浄化療法科 秋葉隆 2011年末には慢性透析患者30万人を突破し,我が国は人口比で,台湾に次いで,絶対数で合衆国に次いで、それぞれ世界第2位の透析大国となっている。その治療成績は,最も死亡率が低く(DOPPS),世界最良の透析医療を提供できていると自負される。しかしその寿命は同世代の健腎者の4〜5割の余命しかない。この成因として透析導入前の保存期腎不全期の高血圧や動脈硬化を挙げることもできるが,血液浄化療法の不十分さが指摘されている。 特に,AKIの世界で持続治療の優越性が着目される中で2007年にはLancet誌にDavenportらがwearble artificial kidney (W AK,着る人工腎臓)の試みを紹介し将米の持続治療として期待できると述べた。しかしWAKは血管アクセスという致命的な欠陥があり本邦における実用化はあり得ない。そこで施設血液透析から在宅血液透析へ移行させることで時間と頻度を増加させる方向性が模索されている。現時点では本邦の在宅血液透析患者は約300名に過ぎないが,ニュージーランドでは全透析患者の17.7%が在宅血液透析である。@在宅血液透析専用装置の開発A在宅血液透析用透析液の認可B透析穿刺者介助者の居宅への派遣C電気水道科などの公費負担D介護施設での実施など,社会的な条件が整えば,現在の技術だけで多数の患者の透析時間と回数の飛躍的な増加が可能となり,CAPDを優に超える患者の治療法として定着する可能性がある。 一方,透析患者は高齢化が進み,糖尿病を原疾患とする患者割合が増加するなど,施設通院が困難となる患者が増加し,無症状透析や低効率透析を模索したり,「透析の差し控え」を考慮する必要性を検討すべき場面にも遭遇するようになっている。 以上, 長寿とQOLを求めた治療法の進歩と,老後の生き方を模索する方向性との両極端の変容の要請に直面している維持透析療法の現状を報告する。 |
19. 輸入感染症について 東京都立墨東病院感染症科 大西健児 多くの日本人が熱帯,亜熱帯地域へ出かける現在,日本人臨床医にとっても輸入感染症の知識は必須となっており,担当医がその知識を有しているか否かが,患者の予後に大きく影響する現状にある。輸入感染症の主症状は発熱と下痢である。発熱を主症状とする代表的疾患にマラリア,腸チフス,パラチフス,デング熱があり,遭遇頻度は低いがチクングニア熱,ウイルス性出血熱,メリオイドーシスなども考慮しなければならない場合がある。下痢を主症状とするものは旅行者下痢症とも呼ばれ,代表的なものに腸管毒素原性大腸菌腸炎,プレジオモナス腸炎,細菌性赤痢,ジアルジア症,クリプトスポリジウム症があり,遭遇頻度は低いがコレラなども考えなければならない場合がある。さらに,日本国内でも感染者が多いカンピロパクター腸炎やサルモネラ腸炎であることも多い。発熱を主症状とする患者では,渡航先や滞在期間,潜伏期を考慮して,一般的な検査に加えマラリア検査,血液培養検査,デング熱検査などを行う。下痢を主症状とする患者には便の細菌培養検査が必須であり,便の寄生虫検査も行うようにする。高齢者で下痢を主症状とする場合,虚血性腸炎や大腸癌であった例もあり,感染症以外の疾患も考えた対応が必要となる。なお,輸入感染症では複数の病原体を保有することが多く,1種類の病原体を検出しでも常にそれ以外の病原体が検出されるか否かの検索を勧める必要がある。絶対に見逃しではならない疾患は,治療法や予防法があるにもかかわらず適切な治療や予防が行われなければ不幸な転帰をとる疾患であり,輸入感染症の場合,熱帯熱マラリアや狂犬病がそれに相当する。マラリアは血液標本を作製し顕微鏡でそれを観察して診断することが原則であるが,診断キットも利用できる。同様にデング熱にも診断キットが存在する。治療に抗病原体薬投与が必要な場合は,原則として病原体を特定した後に,それに効果のある抗病原体薬を投与する。 |
お昼はスカイツリー近くの「鰻禅」(外部リンク)に食べに行った。なかなか良いお店らしく、週刊文春の「斬り捨て御免!食味探検隊」の記事(61KB)で[総合評価]計100点の満点を付けられていた。私は「二段重(きも吸付)」¥5500を、奥さんは「特上(きも吸付)」¥3500を頼んだ。・・・さて個人的感想は・・・
4日前の午後8時過ぎに、奥さんに電話をかけてもらうと、大将がでて、「土日は予約を取っていない」旨、「日曜なら午前11時の開店後に入店したら、メモ紙に注文の品と名前・電話番号を書いて貰ったら、席が空いた順番で呼ぶから、近所で待ってて下さい」とのことだった。どんな感じの人と聞くと、下町の小父さんらしい感じの声の人とのことであった。
当日は開店の午前11時の10分前に到着して並ぶ予定であったが、国際フォーラム地下の企業展示ブースを見て回っているうちに、面白く(医療機器の展示デモ展は、仙台でも年に2〜3回はあるが、特定のメーカーに偏りがちで、行ったことはない。毎年の春の内科学会総会の企業展示では、フクダ電子さんと日本光電さんのブースが接近して設置されているのはナゾだ。機器メーカーさんが売り込みのため、当院に機器を約一週間ほど貸し出ししてくれるデモは年に1〜2回程度あるが、診療に忙しく、操作を試すのは私ぐらいである。内科学会の医療機器の展示デモ展では、多数の機器メーカーさんが機器のデモを見せて触れさせてくれるので、実際に良く分かり嬉しい。)夢中で午前10時35分となってしまい、地下鉄を乗り継いで到着したのは午前11時15分過ぎであった。
(鰻禅の箸袋)
(鰻禅の名刺)
玄関前には行列が出来ているかと心配していたが、誰も外に並んでいない。しかし、店内に入ってみると、狭い店内〈13席 (カウンター 5席、テーブル 2x2席、座敷 4x1席) 〉は既に満席である。今なら約1時間待ちとのことで、御主人からレクチャー受けて、メモ用紙に名前・中瓶ビール・注文の品・携帯番号を鉛筆で書いて渡す。「順番が来たら、この電話番号からかけるからね。」と、少し声音高く、とても優しい声で、名刺をいただく。「電話したら、必ず出てね。」と念をおされる。電話しても出ない人がいるらしい。すでに店の上の方から何枚かのメモ用紙が連なってぶらさがっている。この時間も、すでに何人か外で待っているのだ。私たちも、約1時間待ちのため、付近で待機(近所からクレームが出るので、店の前で待っていたら、いけないらしい。)することにした。
こういうこともあろうかと考え、事前に食べログで付近の喫茶店を2件ほどチェックして資料のプリントアウトを持ってきていた。一番近い喫茶店に行ったら日曜定休らしい。そこで二番目に近い、地下鉄駅(都営浅草線、本所吾妻橋駅=スカイツリーが60度の角度で見上げられる)前の2F「砂時計」(外部リンク)で待つことにした。道路側窓際の席で浅炒りのマイルドコーヒーを頼んで週刊誌見ながら啜っていたら、思っていたより早く、30分程で鰻禅さんから電話が入った。
鰻禅さんでは二人分のカウンター席が待っていた。すぐに瓶ビールが出てきて、肝煮が付いてくる。甘辛く煮込んで苦みや臭みがない。ゆっくりチビチビ飲んで鰻二段重の出来上がりを待つ。甘い鰻の香りに腹を空かせながらビールを飲む気分は、とても気持ちよい。待つのが気持ちよいと感じたのは初めてである。カウンター席の丁度前に料理秤があり、村瀬大将が割いた鰻の切り身を測っていくが、全部同じ数字(これ秘密)なので、びっくりした。高級な備長炭の炭火焼きなどではなく、鰻禅さんは遠赤外線加熱調理法である。なので、苦い焦げが出にくい。油が炭にたれて出る煙も出ない。ふつうの鰻屋さんとは、だいぶ様子が異なる。
途中テーブル席が空いたので、カウンター席から移動。ビールもう一本追加すると、付け出しの兜煮が出てきた。少し塩から目の味付けで、全然硬くない。程なく(入店してから40分ぐらいだろうか)お待ちかねの「二段重」「特上」が運ばれてきた。容器は、塗りが長年の使用で剥げかけている経年物だ。屋号もすり切れているのか分からない。こんなに見栄えのしない外食での容器を見たのは初めてでビックリした。しかし、持ってみると、じっくりと重く暖かい。
蓋を開けると、大きめの長方形の容器には、隙間が見えないほど綺麗な色の鰻がぎっしりと詰まって載っている。湯気と一緒に、鰻独特の馥郁たる香りが立ち上る。生臭さや一切の雑味が感じられない。テーブルには薬味の山椒粉も用意されているが、山椒をかけたら台無しだ。割り箸で鰻をつまむと、皮はしっかりプルプルと、身は締まっていながら柔らかくホロホロだ。箸で切れる柔らかさ。米の炊き具合も少し柔らかめで、タレは甘すぎず辛すぎずの案配だ。全部相まって、この「ウナギごはん」は、ホワホワ・ホロホロ・ホクホクの食感で、今まで食べたことのない、一線を画す食感だ。二段重なので、中からまた鰻(上の鰻とは焼き加減が変えてあるのか、柔らかくなりすぎていない)が出てくるのが嬉しい。夢中になって食べて、ごはん粒の最後の一粒までいとおしく食べてしまいました。奥さんが頼んだ「特上」は、容器は同じ大きさで上に載っている鰻も同じ量、ただし真ん中の鰻がご飯であるだけの違いで、トータルの量としては同じ量である。少食の奥さんが九割食せたのは、やはり大変美味しかったからであろう。残りの一割は、私が最後の一粒まで食べさせていただきました。大将の女将さんは「この細いからだで、ようたべはりましたなあ。最初は少し心配していたのでっせ。次からは「上」にしはったらよいのに。」(京都弁風に変換)と気遣ってくれていた。
(13/4/18木曜分)
本日の午後は、学校医活動としての白石高校(外部リンク)の白石高等学校内科健診出張2回目にて、休診である。
1回目と同じく、内科健診は午後1時30分から始まるので、午前の診察受付は12時00分までにして、午後1時10分過ぎにはマツダ・ボンゴブローニィに看護師さん二人(本日はヒロ子さん・幹子さん)と診察セットを乗せて三人で、10分後の午後1時20分には白石高校駐車場一番奥に到着、会議室では午後1時25分には健診態勢を準備する。あとは、午後1時30分から始まる内科健診に、なるべく途切れないよう男子・女子生徒さんに来て貰って、内科健診をチャッ・チャッとこなしていく。本日も結構早く、午後3時半頃には終了できた。
夜は、 【木曜会】(於:白石市の隠れフレンチ ルガノ 4月当番幹事:たかはしクリニック院長 高橋昌宏先生。)に出席。テーブルでのコース料理であった。ビール、白・赤ワイン飲み放題の感じ。いつもは、割烹
大上亭さんの座敷での和食が多いが、たまにはフレンチも良いものだ。
(13/4/22月曜分)
3月23日を最後として、久し振りにA型インフルエンザ患者さま(39才の女性)が来院した。昨日中国の広州より家族で帰国後発症したとのこと。症状は37.8度の発熱・湿性咳・咽頭痛で、胸部レントゲンでは肺炎陰影なく白血球4700でCRP0.6mg/dLである。生き鳥屋さんには行ってないとのこと。通常の季節性インフルエンザA型と思われるが、午後4時なので仙南保健所に電話で届出した。疾病対策班の技術主査が電話口に出て、症例の詳細を告げると、これから対策を協議して、折り返し電話で連絡するとのことであった。20分位して技術主査より電話があり、肺炎を起こしていないかとのこと。肺炎陰影なきこと(呼吸器症状はあるのだが)を伝えると、後日に肺炎起こしたり容態があっ化するようなら、保健所より患者の咽頭ぬぐい液検体の採取に行かせて貰うので、その時はよろしくとのこと。
各自治体には鳥インフルエンザA(H7N9)迅速検査キットが既に配布されているので、実は検査しようとすれば即刻可能なのであるが、重症化の可能性が低いと考えて検査しないらしい。鳥インフルエンザA(H7N9)(厚労省への外部リンク)感染は全てが重症化するわけでないので、中国では感染者の発見に手間取っていたのである。軽症例にとどまっているうちの症例にこそ、検査を実施すべきであろうと考える。いまだ仙南保健所では前例がないのであろう。仙南保健所とは、正しくは宮城県仙南保健福祉事務所(外部リンク)と言い、所長は中川美智子氏と公表されている。
(13/4/25木曜分)
本日木曜の午後は、学校医活動としての白石高校(外部リンク)の白石高等学校内科健診出張3回目にて、休診である。本日分で、平成25年度白石高等学校内科健診は終了する。
1・2回目と同じく、内科健診は午後1時30分から始まるので、午前の診察受付は12時00分までにして、午後1時10分過ぎにはマツダ・ボンゴブローニィに看護師さん二人(本日は葵さん・幹子さん)と診察セットを乗せて三人で、10分後の午後1時20分には白石高校駐車場中頃に到着、保健室では午後1時25分には健診態勢を準備する。あとは、午後1時30分から始まる内科健診に、なるべく途切れないよう女子生徒さんに来て貰って、内科健診をチャッ・チャッとこなしていく。本日も結構早く、午後4時前頃には終了できた。
アポイントどおりアールエフ・ユニメデカルさんが、午後4時に来て、NewNAOMIのデータフォルダ内に、過去の銀塩フィルムスキャンデーターがNewNAOMIブラウザソフトより一発でID検索できるよう、まとめて再収納してもらった。これまでは、せっかくの過去の銀塩フィルムスキャンデーターが別のフォルダに入っていて、NewNAOMIブラウザソフトよりそのフォルダを開いて、ID番号がついたフォルダを捜して開かないと画像が見られなかったのだ。旧データーバックアップと合併新データーインストールには結構時間がかかって、終わったのは5時半頃となった。でも、いろんな情報を、アールエフ・ユニメデカルさんから聞けて、有意義な時間であった。