院長周辺雑記(146:20189年1月分)
1 名 称 塚本内科消化器科 2 所 在 地 白石市城南一丁目2番29号 . 3 指定年月日 平成31年1月1日 4 指定機関 平成31年1月1日から 平成 ? 36年12月31日まで |
【白石市医師会学術講演会】(41KB) 白石市・ベネシアンホテル白石蔵王 18:00分~ Session1 18:00~ 『イニシンク配合錠の有効性と安全性』 参考:イニシンク配合錠の添付文書(443KB) 参考:ロトリガ粒状カプセル2gの添付文書(376KB) 武田薬品工業株式会社 宮城第三営業所 岩竹 一秀 先生 Session2 18:30~ 【座長】公立刈田綜合病院 循環器科 院長補佐 片平 美明 先生 『冠動脈疾患の残余リスクから考える介入のポイント』 ~ω3系脂肪酸による心血管保護~ 【演者】国立循環器病研究センター 心臓血管内科 副院長 安田 聡 先生 *会終了後に情報交換会あり。 *日本医師会生涯教育講座:1.5単位 CC(23:体重増加・肥満、73:慢性疾患・複合疾患の管理、75:脂質異常症) 共催:白石市医師会/武田薬品工業株式会社 以下、当日のPowerPointを転載させてもらいました。 |
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冠動脈疾患の残余リスクから考える介入のポイント 1.心血管イベント抑制:スタチンの効果と残余リスク 2.残余リスクを可視化する(国循での取り組み):MRI 3.介入のポイント:残余リスクに関与する因子:LDL.TG 4.TG介入に関するガイドラインの現状とω3系脂肪酸製剤 |
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動脈硬化の形成、進展に寄与する因子 喫煙:酸化ストレス 糖代謝異常:高インスリン血症・食後高血糖・糖化タンパク 肥満:高インスリン血症・血圧高値・脂質異常 高血圧:エンドセリン・レニン・アルドステロン 脂質異常症:LDL-C・HDL-C・triglyceride 炎症:Lp-PLA2・s-PLA2・IL-1bata |
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スタチンによるプラーク退縮、安定化 57才、男性、安定狭心症(REVERSAL試験の1例報告) アトルバスタチン80mg/日を18ヶ月投与投与し、 LDL-Cは150mg/dlから78mg/dlに低下し、 冠動脈血管内エコーで、プラーク(Atheroma Area)退縮・ 血管内腔(Lumen Area)拡大・プラークの安定化が観察された。 |
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「冠動脈MRI (ハイリスクプラークを予想する新しい検査法:先進医療) MRIで白く輝く動脈硬化巣(HIP; high intensity plaque )はハイリスク。 造影CTでは途切れたように黒く写る。 『心筋梗塞の予兆MRIで。体の負担「CTよりかるく」』と新聞掲載された。 |
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心臓MRI非造影T1強調画像で描出される 高輝度ハイリスク冠動脈プラークに対する オメガ-3脂肪酸エチルの効果 AQUAMARINE-EPA/DHA研究 冠動脈疾患患者に対してスタチンをベースにした治療を行う。 LDLコレステロールは80mg/dl未満として、下記の薬剤を追加する。 ┏→ロトリガ 2g/日 投与群 →心臓MRI検査 心臓MRI検査╋→ ロトリガ 4g/日 投与群 →心臓MRI検査 ┗→ロトリガ 非投与群 →心臓MRI検査 観察期間(12ヶ月) |
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残余リスクの解決に関与する因子 ●さらなるLDL-Cの低下 ●TGの低下 ●HDL-Cの上昇 ●small dense LDLの低下 ●レムナントリポ蛋白の低下 ●non HDL-Cの低下 ●LP(a)の低下 ●脂質異常症以外の疾患(糖尿病、高血圧など)の治療 |
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LDL-C値が低値でも高TG値は心血管リスクを増大させる (PROVE IT-TIMI22) LDL-C値が70mg/dl未満でも、 TG200mg/dl未満に比べて、TG200mg/dl以上では、 発症30日間の、死亡・心筋梗塞・急性冠症候群の再発リスクは 13.5%から20.3%に上昇している。 |
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Q1; 中性脂肪の介入のタイミングと目標値 ハイリスク例に対するガイドラインの推奨は? |
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日本動脈硬化学会の 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版(JAS 2017) |
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脂質異常症診断基準(空腹時採血) JAS 2017 介入のタイミング (治療目標値記載なし)
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版(JAS 2017) |
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ESC 2016 中性脂肪目標値 中性脂肪介入のタイミング:TG>200mg/dL 治療目標値 TG<150mg/dL 治療してもTG>200mg/dLの場合は、スタチン+フィブラート系追加 |
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Q2; 中性脂肪の介入手段 ハイリスク例に関するガイドラインの推奨治療は? |
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高トリグリセライド血症に対する治療介入 Q1高トリグリセライド血症に対する治療介入は 動脈硬化性疾患の発症抑制に有効か? . 高トリグリセライド血症に対する薬物治療による 動脈硬化性疾患発症予防効果に関して 十分なエビデンスはない。 しかしながら、空腹時トリグリセライドが著名に上昇している 症例では急性膵炎のリスクも考慮し、 脂質制限や禁酒などの食事指導とともに フィブラート系薬剤などの投与を考慮する。(推奨レベル:3) CO23.高TG血症あるいは低HDL-C血症合併する 脂質異常症患者において、 スタチンへのフィブラート系薬剤・ニコチン酸誘導体・ ω-3多価不飽和脂肪酸の併用は 動脈硬化性疾患の発症抑制に有効か? イコサペント酸エチル(EPA)製剤およびフィブラート系薬剤の スタチンへの併用療法は、 動脈硬化性疾患の発症抑制に有効である。 (エビデンスレベル2.推奨レベル3) |
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日本人高脂血症患者:EPA製剤によるTG低下とイベント抑制効果 VSスタチン治療群 JELIS試験 EPA製剤は、対照群にと比較して、 有意なトリグリセライド低下率(10%)を示した。 EPA製剤は、対照群にと比較して、 5年間で有意な冠動脈イベント累積発症率の低下 (3.5%に対して3%)を示した。 |
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ロトリガは、用量依存性に、RLP-Cを低下させた 2g/日で-12%、4g/日で-32%。 (保険診療では、通常2g/日だが、効果不十分な場合は 4g/日まで認められている) (保険診療の効能効果は、脂質異常症や 高コレステロール血症でなく、高脂血症) |
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Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia (NEJM) 対象:スタチン服用下でTG「150~499mg/dL」の、 1)CV疾患既往例(2次予防:5785例)、 2)CVリスクを有する糖尿病例(高リスク1次予防:2394例) 方法:8179例をEPA群(4g)とプラセボ群にランダム化、 二重盲検法で4.9年間追跡 結果:EPA群のTG値は175mg/dLへ有意に低下し(p<0.001)、 プラセボ群では逆に221mg/dLへと上昇していた。 心血管イベント発生率は、EPA群で17.2%、プラセボ群で22.0%となり EPA群における有意なリスク低下が認められた(ハザード比:0.75)。 |
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Q3; 空腹時 ? 非空腹時 ? 欧州動脈硬化学会・欧州臨床化学検査医学会 合同コンセンサスステートメント |
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心血管疾患リスク評価に空腹時値は日常診療に必ずしも必要でない |
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心血管疾患リスク評価に空腹時値が非空腹時値より リスク評価に優れているというエビデンスは存在しない。 |
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異常と判定する中性脂肪値、空腹時は150mg/dL以上、 非空腹時は175mg/dL以上 |
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*Take home message |
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脂質異常症治療薬の薬効による分類
↓↓↓↓:-50%以上 ↓↓↓:-50%~-30% ↓↓:-20%~-30% ↓:-10%~-20% ━ :-10%~10% ↑:10%~20% ↑↑:20%~30% |
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ω3系脂肪酸 (EPA. DHA)の多面的役割 1.血清脂質代謝改善 ●トリグリセライド低下 ●レムナント(RLP-C)低下 2.血管に対する作用 ●抗炎症 作用 ●血管内皮機能 改善 ●血管拡張 3.血液の作用 ●血小板凝集 抑制 ●赤血球変形能 改善 ●脳機能維持作用 4=.1+2=プラーク安定化 ●抗不整脈作用(KATP:心臓突然死抑制) ●心筋保護作用(Rho-kinase) 5=4+3 ●心血管保護効果・心血管イベント抑制 ロトリガ【効能・効果】 高脂血症 ロトリガ【用法用量】1日1回食直後 |
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結語:冠動脈疾患の残余リスクから考える介入のポイント ・動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に対して、スタチンによるLDL-C 低下療法後にも、55-70%もの心血管リスクが残存する。 ・残余リスクの介入として、スタチンとそれ以外の薬剤による LDL-C値の更なる低下、トリグリセリド、HDLなどがその標的となる。 ・ω3系脂肪酸製剤はスタチンとの組合せの上で副作用の懸念が少なく、 脂質管理を介した心血管保護的効果も期待される。 |
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塚本和彦医師の私的参考: ロトリガ粒状カプセル2gの添付文書(376KB)の含有量は、 2g中 DHA:930mg EPA:750mg です。 薬価は、3割負担の方でも、1日73円です。 サプリメントとして売られているω3系脂肪酸の価格は、なんて高いんだろう。 |
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塚本和彦医師の私的参考:今、サバ缶が売れて品薄で高いとのこと。 味噌煮より水煮が、塩分少なく良いそうです。 ちなみに当院院長室の食料棚にあった、「マルハ」の「サバ水煮」は、 200グラム缶で、エネルギー360kcal・たんぱく質32.6g・脂質25.6g・ 炭水化物0.0g・食塩相当量1.4gだが、 なんと DHA:2660mg EPA:2300mg と多くビックリしました。 サプリメントとして売られているω3系脂肪酸の約10倍量です。 しかし、ロトリガ粒状カプセル2g中のDHA・EPAの純度は高く、 2gなのでカロリーは少なく、 メリットは大きいでしょう。サバ缶より安いし。 1日に、サバ缶半分なら、良いでしょうが、毎日食べたら飽きるでしょうし、 金額は高いです。 1日に、ロトリガ粒状カプセル2gなら、無味無臭の粒状カプセルで、 飲みやすく飽きません。 |