院長周辺雑記(90:2014年5月分)




(14/5/1木曜分)
本日で、3回目の最後の白石高等学校内科健診が無事終了した。本日の受診者は女子生徒であった。男子生徒は原則上半身裸だが、女子生徒は上半身は薄い着衣を装用している。ので、聴診には問題ないが、視診ができないので、アトピー性皮膚炎や湿疹などの皮膚の状態や、漏斗胸の有無は不明である。ブラジャー脱いで長袖トレーナー着るのでなく、ブラジャー1つの方が助かるのだが。又、女子生徒は着脱衣に時間がかかるので、健診時間が長くなる。などから、私は男子生徒の健診のほうが好きだ。



(14/5/2金曜分)
大河原町外1市2町保健医療組合(角田市・柴田町・村田町・大河原町)のみやぎ県南中核病院病院長:内藤広郎先生から、私宛に、A4用紙3枚入りの角形2号中核病院封筒の封書が届いた。宛先・宛名は院長先生の自筆であった。4月30日に院長先生にかけた私の電話に対する早速の対応と結果の報告であった。大病院の院長先生が、診療所(開業医)院長の電話に真摯に丁寧に早速対応して下さるとは、時代が変わっただけでなく、内藤広郎先生の病院管理者としての適格性を感じさせられました。内藤広郎先生ありがとう御座いました。



(14/5/3祝=土曜分)
本日より、連休後半の四連休に突入だ。しかし当院は明日4日が内科系休日当番医なので、5・6日の二連休が最長だ。4/26(土)が私の学会出張で休みとなったので、5/4(祝)の休日当番医の振替休日を4/28(月)に入れたら、4/26〜4/30の四連休になって、スタッフに喜ばれたのだろうが。



(14/5/4祝=日曜分)
本日は、当院が内科系休日当番医であった。感染性胃腸炎は少なかった。熱発者は殆どが小児であり、連休のためか県外の方が目立った。インフルエンザは0であった。遠刈田や柴田町・亘理町からの片道30分間はかかる所からも来院される。本日は小児が結構多かった。



(14/5/5祝=月曜分)
昨日の休日当番医で疲れたので、本日は一日中、白石市の診療所二階院長室での休息日の予定であった。連休中は特に外出の予定は立てていない。しかし、帰り心が出てきて、午前中には仙台の自宅にM ロードスターをオープンにして帰った。やはり自宅の方がくつろげる。
M ロードスターはオープンにしても、前方視界はクローズの時と殆ど変わらない。バックミラーの角度を調節して、ミラーの視界に空が入るようにしたら、オープン感覚がより実感できることに本日初めて気付いた。



(14/5/6振休=火曜分)
自宅ベッドの寝心地は良く、リフレッシュした感じだ。疲れがよく取れる。明日から診療が始まる。慎重な私は、午前11時頃には、白石市の診療所にM ロードスターをオープンにして行くのであった。午後3時頃には、奥さんも早めに診療所にやってきた。



(14/5/7水曜分)
午前の診療は11時00分まで、午後の診療は休診にして、「産業医活動:トーカドエナジー白石工場に行ってきた。安全衛生委員会出席と職場巡視を行う。本日の職場巡視には屋外が含まれていた。晴れて陽気が良いので、屋外も気持ち良かった。行き帰り、車はオープンにしていた。私は、車はなるべくオープンで走ることにしている。



(14/5/8木曜分)
5月になってから、インフルエンザ患者さまの来院は0が続いていたが、本日は久し振りにA型インフルエンザ1名が来院された。この三日間以内に人混みの多い所へ行かなかったか訊いたら、山形へ行ってきたとのこと。山形では今もインフルエンザが発生しているのかと思ったら、事務スタッフの息子さんが今年山形大学に入学し一人暮らしを始めたところ、同じように一人暮らしの新潟県出身の友達が最近インフルエンザに罹ったとのこと。一人暮らしで高熱・関節痛・倦怠感でフラフラになるインフルエンザに罹ったら大変であろうと皆で同情していた。



(14/5/9金曜分)
2013年3月4日に幸楽苑「新白石店」(外部リンク)がグランドオープンした日に奥さんと食べに行って以来、久し振りに奥さんと幸楽苑白石店に行ってみた。診療が早く終わったので、午後7時半頃である。私はワンパターンで大好きな「つけ麺」(外部リンク)を注文。相変わらず、ここの多加水熟成麺は、とても美味しい。うまい御飯は、それだけでも食べられるように、ここの麺は何も付けなくとも食べられる程美味い。7割はつけ汁に付けず、麺のまま食してしまう私である。鹹水を使って熟成した麺は、口の中でピータン(皮蛋)風の熟成香が感じられ、弾力や硬さが歯ざわり良く冷水で締めてある。つけ汁も、酸味と辛味と甘みと旨み、四位一体の味は私にも納得できる味である。これで390円(税抜き)は安い。一ヶ所の工場で徹底した品質管理で大量に作る、チェーン店ならではのスケールメリットであろう。一般受けする、どこの店で食べても、殆ど一定の味なので、安心して入店できるのは有り難い。



(14/5/15木曜分)
午後の部が始まる2時少し前に、二階院長室に上がってトイレ小と水道水コップ2杯飲水すませてモンダミンしたら、カーテンは開いて暗くないが奥さんが見あたらない。頭痛で横臥してるのかとベッドを見ても、見あたらない。時間がないので、一階の診療スペースに戻って、午後の診療に突入した。
午後2時半頃に奥さんは徒歩で(ルガノは徒歩5分位で近い)帰ってきたようだ。実は、当院「塚本内科消化器科」の奥さんと「高橋クリニック」の奥さんの高橋○美さんとで、本日の5月の『木曜会夫人の集い』の当番幹事役をやっていたのだ。「やまきクリニック」を継承された「えんどうクリニック」の遠藤純○奥様は欠席のようで、次期当番幹事の「水野内科クリニック」の水野○美子奥様と「仙南サナトリウム」の渡辺陽○奥様も欠席され、計11名の出席だったそうだ。《「しろがね産科婦人科クリニック」は奥さんの出入りがあったようだが、流行っていたのに何故閉院したのか、現在はどうされているのか》が、私が今一番聞きたい所なのだが、そういった話しは全く出ない場であったようだ。一人5,500円+飲み物て゛、人数を連絡したようです。

白石市医師会木曜会夫人の集い 2014年5月 2014.05.15 於:ルガノのランチメニュー
(5月のメニュー)



(14/5/25日曜分)
日曜の休みをつぶして、今年3回目の日帰り学会(教育講演)に参加した。東京の国際フォーラムAホールで【平成26年度 日本内科学会生涯教育講演会Aセッション(消化器、内分泌・代謝、神経、アレルギー・膠原病、内科一般)】が開催されたのだ。例外的に、本日も私一人での出張。朝5時起きで白石蔵王駅6時20分発の新幹線に乗り、帰りは東京駅17時00分発の新幹線にのり、午後19時10分頃には白石市の塚本内科消化器科に帰着。叙々苑の焼き肉弁当を買ってきて、夕食とした。
生涯教育講演会は学会総会参加と異なり、参加登録には会場内で講演を朝から夕まで聴講することが必要だ。今回の会長である京都大学の三森経世先生は、9時25分の「開会の挨拶」から15時30分の「閉会の挨拶」まで、ずっと座長の労を務められた。講演者の都合で、講演4.と講演6.が入れ替わったことは、実際に聴講していた者しか知らない秘密だ。

平成26年度 日本内科学会生涯教育講演会Aセッション 演題・講演者
 1.Helicobacter pylori (Hp)感染胃炎の自然史理解に基づく胃癌診療   和歌山県立医科大学第二内科 一瀬 雅夫 先生
 2.自己免疫膵炎からみたIgG4関連疾患の概念  関西医科大学内科学第三講座 岡崎 和一 先生
 3.糖尿病の診断と治療最前線  高知大学内分泌代謝・腎臓内科 藤本 新平 先生
 4.治療抵抗性高血圧症の診断と治療最前線  東京女子医科大学内科学(第二)講座高血圧・内分泌内科 市原 淳弘 先生
 5.頭痛の病態生理と治療  埼玉医科大学神経内科 荒木 信夫 先生
 6.多発性硬化症の病態研究と治療の進歩  国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部 同 病院多発性硬化症センター 山村 隆 先生
 7.抗リン脂質抗体症候群の検査と治療  北海道大学大学院医学研究科免疫・代謝内科学分野教授 渥美 達也 先生
 8.関節リウマチの診断と治療〜Up-to-date〜  東海大学内科学系リウマチ内科学 鈴木 康夫 先生
 9.高齢者救急のピットフォール  京都府立医科大学救急医療学教室 太田 凡 先生

平成26年度 日本内科学会生涯教育講演会Aセッション 講演要旨

 1. Helicobacter pylori (Hp) 感染胃炎の自然史理解に基づく胃癌診療

 和歌山県立医科大学第二内科 一瀬 雅夫

 1983年のWarrenとMarshallによるHp分離培養の報告以来,多くの疫学的検討,動物実験,臨床研究による知見が集積し慢性胃炎,消化性潰瘍, 胃癌, 胃MALTリンパ腫など主要な上部消化管疾患に加え,特発性血小板減少性紫斑病などの発症に関してもH.pyloriの関与が明らかにされている。特に胃癌については,本邦を含めたハイリスク地域における発生の最大の要因が, Hpである事が広く認識されるに至っている。

1.胃癌発生のメカニズム
 Hpは1994年に,WHOにより胃癌のdefinite carcinogenに認定されている。その後,感染動物による発癌実験,Hpゲノム解析による病原因子解明,CagAの細胞内シグナル伝達機構への介入などの検討を通じ,Hpが胃癌発生に果たす役割が理解されるに至っているが,Hpによる発癌分子機構の詳細は充分解明されたとは言ぃ難い状況にある。しかし,Hpの発癌への関与がプロモーター作用を主体としたものである事は,感染動物やCagAトランスジェニックマウスのデータなどから容易に類推可能である。

2.胃癌発生の自然史
 近年の長期観察研究の結果は,@胃癌ハイリスク地域における発生胃癌の大部分がHp感染胃炎に由来する事,gastritis-atrophy-metaplasia-cancer sequenceが発生の主要経路である事,B前項のsequence進展に伴い胃癌発生リスクの段階的上昇が生ずる事などが明らかにされている。これらは主に分化型胃癌発生に関わる知見であり,もう一つの病理組織型である未分化型胃癌については,最近,慢性活動性胃炎が,直接的に未分化癌を発生させるハイリスク群を構成する事が明らかにされている (Int J Cancer 131:2632-2642,2012)。さらに,血清ベプシノゲン値および、抗Hp抗体価の二つの血液検査を駆使する事で,個人の胃癌発生リスクが予測可能で有り,特に上述の胃癌ハイリスク群の無侵襲的把握が可能となる事が明らかにされている。Hp感染から胃癌発生に至る自然史と胃癌発生リスクの推移に関する具体的な理解は胃癌診療に貢献する知見をもたらすばかりでなく,多くの課題を残しているものの,胃癌予防策構築に対しても強力な武器を提供することになる。

3.除菌治療による胃癌発生抑制
 Hp感染胃炎を対象とした除菌療法が2013年に保険適用となり,今後,胃癌発生が劇的に抑制され,最終的に胃癌撲滅に至るものと期待されている。しかし,このような除菌療法を巡る明るい将来予測の一方で,実際の診療においては除菌療法の胃癌抑制効果に関する理解が,実に暖昧な状態に留まっている事に留意すべきであろう。2008年には,本療法が早期胃癌内視鏡治療後の二次癌発生を1/3に抑制するとの前向き研究が報告されているが,この点については議論が絶えない所である。また,中高年のHp感染胃炎を対象とした除菌の胃癌発生抑制効果も劇的とは言い難いものであり,除菌後症例の管理については,感染持続症例と同様,慎重な経過観察が求められる状況にあることは間違いの無い事実であろう。一方,除菌効果はHp感染胃炎の病期によって異なり,感染持続期間が短く,萎縮性胃炎が軽度であるほど除菌による発癌抑制効果が高いことが報告されている。全世界的にも本邦のみで公費負担が認められている本療法の実効を挙げ,限られた医療資源の有効な利用を図る上で,運用に当っては,有効と考えられる対象症例の慎重な選別とそれぞれに求められる事後の経過観察に関する正しい認識の下,これらの情報を対象患者と共有しつつ,慎重に診療を行って行く事が重要であると考えられる。


演者略歴
一瀬雅夫 (いちのせ まさお)
〔略歴〕
1977年3月 東京大学医学部医学科卒業
1980年7月 東京大学医学部附属病院第一内科医員
1989年8月 東京大学医学部附属病院第一内科助手
1998年8月 東京大学医学部付属病院消化器内科講師
2000年6月 和歌山県立医科大学第二内科教授
2012年4月 埼玉医科大学客員教授
2014年4月 和歌山県立医科大学医学部附属病院副病院長
〔主な専門分野〕
内科学・消化器病学・消化器内視鏡学・消化器がん検診学
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会評議員・日本消化器内視鏡学会理事・日本消化器病学会財団法人評議員・日本消化器がん検診学会理事・日本がん検診診断学会理事・日本神経消化器病学会理事・日本高齢消化器病学会理事



 2. 自己免疫性膵炎からみたIgG4関連疾患の概念

 関西医科大学内科学第三講座 岡崎 和一

 自己免疫性膵炎 (autoimmune pancreatitis : AIP) とIgG4関連疾患 (IgG4-related disease : IgG4-RD) は,わが国より発信された新しい疾患概念である。AIPはステロイドに反応する膵腫大や腫瘤を認め,膵癌や胆管癌などとの鑑別が必要である。わが国で多く報告されているAIPは中高年の男性に多く,高IgG4血症を伴い,しばしば硬化性胆管炎,硬化性涙腺炎・唾液腺炎(Mikulicz病),後腹膜線維症などの膵外病変を合併する。病理組織学的にlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis (LPSP) と称され,著しいIgG4陽性形質細胞浸潤,花筵状線維化 (storiform fibrosis),閉塞性静脈炎を特徴とする。一方,欧米ではIgG4関連の膵炎以外にも,臨床症状や膵画像所見は類似するものの,血液免疫学的異常所見に乏しく,病理組織学的に好中球上皮病変 (granulocytic epithelial lesion : GEL) を特徴とする膵炎である idiopathic duct-centric chronic pancreatitis (IDCP) も自己免疫性膵炎として報告されているが,IgG4関連膵炎とは別の病態である。最近,IgG4関連膵炎を1型AIP (LPSP),GELを認める膵炎を2型AIP (IDCP) とする国際コンセンサス診断基準 (International consensus diagnostic criteria : ICDC) が提唱され,それぞれを臨床的に診断可能となるとともに,初めて国際的な比較検討ができるようになった。しかしながら,国際コンセンサス基準 (ICDC) は一般医が使用するには煩雑であることや,わが国では2型AIPが極めて稀なことより,ICDCのコンセプトを尊重しつつ,わが国の実状にあったAIPの改訂診断基準が提唱された。
 一方,IgG4関連疾患は,免疫異常や血中IgG4高値に加え,膵,肝胆,唾液腺,涙腺,後腹膜腔など,全身臓器に線維化とIgG4形質細胞浸潤,閉塞性静脈炎など類似病変を認める特異な疾患群であり,1型AIPはIgG4関連疾患の膵病変と考えられている。多くの症例では複数臓器に病変が及び全身疾患としての特徴を有するが,単一臓器病変の場合もある。しかしながら,臨床・病理像は臓器により多少異なり,膵炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症などでは,著しい線維化による臓器障害が臨床的に問題となる一方で,リンパ節や涙腺腫大病変では,線維化は殆ど認めない。病因は不明であり,診断法や治療法も未だ確立されていないが,ステロイドの有効なことが多い。本疾患は,高IgG4血症や臨床・病理組織所見などより総合的に診断できることが多いが,各臓器の悪性腫瘍 (癌,悪性リンパ腫など) や類似疾患 (Sjogren症候群,原発性硬化性胆管炎 (Primary sclerosing cholangitis : PSC),気管支喘息,Castleman症候群など) を除外することが必要である。ステロイド治療の有効なことが多いため,膵,後腹膜,脳下垂体病変など組織診の難しい臓器では,ステロイド効果を認める場合,本症の可能性も考えられるが,感染症における病状悪化や悪性リンパ腫における縮小効果などステロイドによる病態の修飾もあるので,安易なステロイドトライアルは厳に慎むべきである。そのため,診断はできる限り病理組織を採取する努力をする必要がある。病態形成におけるIgG4の意義は不明であるが,制御性T細胞や制御性B細胞から分泌されるIL-10との関連性とともに, toll-like receptor (TLR) を介した自然免疫の異常との関連性が報告されており,病変の成立に複数の過程が存在する仮説も提唱されている。
 以上を背景に本講演では演者の専門である自己免疫性膵炎とともにIgG4関連疾患の疾患概念と診断について概説する。


参考文献
1)日本膵臓学会・厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班 自己免疫性膵炎臨床診断基準2011. 膵臓 27:17-25,2012
2) IgG4関連疾患包括診断基準2011. 厚生労働省難治性疾患克服研究事業「IgG4関連全身硬化性疾患の診断法の確立と治療方法の開発に関する研究班」.「新規疾患,IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患 (IgG4+MOLPS) の確立のための研究班」 日内会誌 101:795-804,2012
3) 岡崎和ーほか. 自己免疫性膵炎からみたIgG4関連疾患と免疫異常 日本臨床免疫学会会誌 37:11-18, 2014


演者略歴
岡崎和一 (おかざき かずいち)
〔略歴〕
1978年3月 京都大学医学部卒業
1986年4月 高知医科大学講師 (第一内科)
1987年4月 ニューヨーク医科大学客員研究員 (消化器病研究所)
1989年4月 州立ニュージャージ一医科歯科大学客員研究員 (中央研究所)
1995年4月 高知医科大学助教授 (第一内科)
1998年11月 京都大学医学研究科助教授 (光学医療診療部・消化器内科)
2003年4月 関西医科大学内科学第三講座主任教授
2010年4月 関西医科大学附属枚方病院副病院長(兼)
〔主な専門分野〕
消化器病学,消化器内視鏡学,消化器免疫学
〔主な学会活動歴〕
国際膵臓学会 (International Association of Pancreatology : Councilor (理事) (2008/4-)
アジア太平洋消化器病学会 (APAGE) Councilor (理事) (2013/4-)
日本内科学会 ( 理事(2013/4-). 評議員. 2013年度学術集会委員長)
日本消化器病学会 ( 理事(2011/1-) Journal of Gastroenterology)編集委員(2005-2010))
日本膵臓学会 ( 理事(2010/4-). 評議員. 白己免疫性膵炎委員会委員長)
日本消化器免疫学会 ( 理事(2010/8-). 評議員)
日本消化器内視鏡学会 ( 社団評議員. 卒後教育委員会委員. 専門医制度審議会委員)
日本肝臓学会 (評議員). 日本消化管学会 (代議員). 日本臨床免疫学会 (評議員). 日本臨床分子医学会 (評議員)


 3. 糖尿病の診断と治療最前線

 高知大学内分泌代謝・腎臓内科 藤本 新平

1. 1型糖尿病の診断基準
 1型糖尿病は以前より発症の進行・様式により,劇症1型糖尿病,急性発症1型糖尿病,緩徐進行1型糖尿病に分類されてきた。劇症1型糖尿病に関しては,我が国で確立した疾患概念であり,すでに診断基準が存在したが,この度,急性発症1型糖尿病,緩徐進行1型糖尿病についても診断基準が策定された。急性発症1型糖尿病は,劇症1型糖尿病の診断基準を満たさず,典型的糖尿病症状の出現後,おおむね3カ月以内にケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥り診断早期よりインスリン治療を必要とする患者で,経過中に膵島関連自己抗体の陽性が確認されるか,内因性インスリン分泌の欠乏が証明されたものと定義された。緩徐進行1型糖尿病は,経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体もしくは膵島細胞抗体(ICA)が陽性であり,糖尿病の発症時,ケトーシスもしくはケトアシドーシスはなく,ただちには高血糖是正のためインスリン療法が必要とならない症例と定義された。

2. 新たな血糖コントロール目標
 従来,日本糖尿病学会では,血糖コントロール基準を優・良・可・不可の分類としてきたが,HbAlcの値が国際基準化されNGSP値表記で統ーされたのを契機に,合併症予防のための目標としてHbAlc7.0%未満が設定された。近年,厳格な血糖管理による合併症抑制をめざす大規模臨床研究より重症低血糖と死亡リスクの関連が示唆され,血糖管理は個々の患者の状況を勘案し,安全性を重視し個別に対応すべきとの考えが主流となっている。このような状況もあり,血糖正常化を目指す際の目標としてHbAlc6.0%未満が,治療強化が困難な際の目標として8.0%未満が設定された。

3. 食事療法
 近年,糖尿病治療として低糖質食がマスコミでも大きくとりあげられるようになっている。日本糖尿病学会からは,日本人の糖尿病の食事療法に関して 「現時点では日本人がこれまで培ってきた伝統的な食文化を基軸にして,かつ現在の食生活変化にも柔軟に対応していくことが重要である。」との提言がなされた。このような流れをうけ,食品交換表第7版が策定され,従来は60%としていた炭水化物エネルギー比にi幅をもたせ50%,55%,60%に対応できるようになった。ただし,腎症で蛋白制限が必要な場合などは炭水化物エネルギー比50%とするのは岡難であり,個々の患者の合併症の進展度も考慮して対応する。

4.糖尿病腎症病期分類の改訂
 糖尿病腎症は,経時的なアルブミン尿の増加に伴う腎機能の低下という考えに基づき病期分類がなされてきたが,この度, CKD重症度分類と整合性をもたせるよう改訂がなされた。病期分類に用いるGFRはeGFRに変更され,3期AとBの区分は行わないこととなった。また尿アルブミン値の程度にかかわらず,GFR 30 ml/分/1.73u未満を全て腎不全と定義した。

5. 2型糖尿病における新規経口血糖降下薬
 経口血糖降下薬に関しては,インクレチン増強作用を持つDPP-4阻害薬が,日本人2型糖尿病において頻用されるようになった。1.日本人で効果が大,2.単剤で低血糖をきたしにくい,3.既存の他のカテゴリーのすべての経口薬と併用可能,4.インスリンとも併用可能(グルカゴン分泌抑制効果あり), 5.体重増加をきたしにくいので肥満でも使用しやすい, 6.腎機能低下例に安全に使用できる などの理由が挙げられる。今同,新規にSGLT2阻害薬が発売された。尿細管におけるグルコースの再吸収を抑制し,尿糖の排世を促進し血糖を降下させる薬剤である。肥満を伴う腎機能良好な患者によい適応となるが,腎機能低下例には効果は期待できない。脱水,尿路・性器感染,異化反応の促進なども懸念され個々の患者のリスク評価を行い真重な投与が必要である。


演者略歴
藤本新平 (ふじもと しんぺい)
〔略歴〕
1991年3月 京都大学医学部卒業
1991年6月 京都大学医学部附属病院内科研修医
1992年6月 (財)田附興風会北野病院研修医,医員
1996年4月 京都大学医学研究科博士課程 (糖尿病・栄養内科学)
2001年4月 京都大学医学部附属病院助教 (糖尿病・栄養内科)
2006年12月 京都大学大学院医学研究科内科学 (糖尿病・栄養内科学) 講師
2010年4月 京都大学大学院医学研究科内科学 (糖尿病・栄養内科学) 准教授
2011年9月 高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科 教授
〔主な専門分野〕
糖尿病内科学,臨床栄養学,内科学
〔主な学会活動歴〕
日本糖尿病学会 (学術評議員,専門医,研修指導医,中国四国支部幹事)
日本内科学会 (四国支部運営協議会委員・評議員,認定医)
日本病態栄養学会 (評議員)
日本内分泌学会会員
アメリカ糖尿病学会(ADA) 会員
ヨーロッパ糖尿病学会(EASD) 会員
アジア糖尿病学会(AASD) 会員


 4. 治療抵抗性高血圧症の診断と治療最前線

 東京女子医科大学内科学(第二)講座高血圧・内分泌内科 市原 淳弘

 血圧維持機構として,生体には,神経系を介した圧受容器反射と腎臓での圧利尿が存在する。さらに後者は,腎血流量の自動調節能と尿細管糸球体フィードバックにより構成される。内分泌系は,これら全てに影響を及ぼすことによって血圧調節に重要に関与し,それらの破綻により高血圧が発症する。
 治療抵抗性高血圧は,「利尿薬を含む3剤以上の降圧薬を使用しても目標血圧まで下がらない高血圧」と定義されるが,日常診療で遭遇した場合,先ずは@不適切なサイズのマンシェットによる血圧測定,A服薬アドヒアランスの低下,B白衣高血圧などの「偽抵抗性」を除外する。その後,血圧値に影響を与える飲酒,肥満,食塩摂取などの「生活習慣」の是正を試みる。次に,他の内服薬剤や食品による血圧管理への影響を検討する。例えば,非ステロイド性消炎鎮痛薬や甘草を含む食品の摂取は,血圧値を上昇させる。以上を検討してもなお治療抵抗性であった場合,二次性高血圧の除外診断を実施する。二次性高血圧の原因として,腎実質性高血圧,腎血管性高血圧,内分泌性高血圧,大動脈縮窄症,頭蓋内腫瘍,脳幹部血管圧迫が挙げられるが,最近注目を集めている二次性高血圧の原因疾患として睡眠時無呼吸症候群があり,全高血圧患者の30%,治療抵抗性高血圧患者の80%に,睡眠時無呼吸症候群が合併するという報告がある。それゆえ,除外診断においては,先ずは睡眠時無呼吸症候群を念頭に置き問診する。次に腎機能を評価すると同時に,内分泌性高血圧のスクリーニング検査を実施する。内分泌性高血圧には,原発性アルドステロン症,褐色細胞腫,クッシング症候群,副甲状腺機能亢進症,甲状腺機能亢進症などがある。この中で,頻度が最も多い疾患が原発性アルドステロン症であり,5〜15分間安静坐位後に採血した検体を用いて測定した血漿アルドステロン濃度(pg/ml)を血漿レニン活性(ng/ml/h)で割ったアルドステロン/レニン比(ARR) を用いてスクリーニング検査を行う。この際に,厳しい減塩下で行わない。低カリウム血症がある場合にはカリウム製剤で補正する。降圧薬はL型カルシウムチャネル拮抗薬やα遮断薬に変更し2〜4週間経過後に実施することに注意すべきである。ARRが200以上であり,かつ血漿アルドステロン濃度が120以上の場合に,原発性アルドステロン症を疑う。褐色細胞腫,クッシング症候群,副甲状腺機能亢進症.甲状腺機能亢進症のスクリーニング検査としては,尿中メタネフリン分画,尿中コルチゾル,血清Ca,TSH等が推奨される。また,管理困難な治療抵抗性高血圧で顔面痙攣がある場合には,脳幹部血管庄迫を疑い,延髄MRI検査を施行する。
 以上の二次性高血圧が否定された場合,強化薬物療法を行う。カルシウムチャネル拮抗薬,レニン-アンジオテンシン系抑制薬,利尿薬の組み合わせで,前二者は最大用量まで使用する。治療目標にまで達しない場合,服薬の回数やタイミングを変更したり,β遮断薬や中枢性交感神経抑制薬,血管拡張薬を,適宜追加処方したりする。さらに,高カリウム血症に注意しながらミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を追加投与したり,腎機能の悪化に注意しながらレニン-アンジオテンシン系抑制薬を2種併用したり,型の異なるカルシウムチャネル桔抗薬を併用したりするが,いずれもリスクを伴うため,この時点で高血圧専門医に相談することが望ましい。
 講演では,さらに腎交感神経アブレーションや圧受容器刺激装置などの最新の降圧治療法の現況についても紹介する。以上のように,高血圧治療の概念は,血圧を「管理する」時代から,患者個々の血圧調節機構の障害を把握しそれを是正することによって「治癒する」時代へと変わりつつある。


演者略歴
市原淳弘 (いちはら あつひろ)
〔略歴〕
1986年 慶應義塾大学医学部卒業
1986年 慶應義塾大学病院内科研修医
1995年 米国Tulane大学医学部生理学教室留学
2001年 慶應義塾大学医学部内科 (腎臓内分泌代謝内科) 助手
2007年 慶應義塾大学医学抗加齢内分泌学講座 講師
2009年 慶應義塾大学医学抗加齢内分泌学講座 准教授
2011年 東京女子医科大学内科学(第二)講座 主任教授
〔主な専門分野〕
内分泌代謝学,高血圧学
〔主な学会活動歴〕
日本心血管内分泌代謝学会 (理事)
日本内分泌学会関東甲信越支部 (幹事)
日本高血圧学会 (幹事)
日本臨床分子医学会 (監事)
日本動脈硬化学会 (評議員)
日本腎臓学会 (学術評議員)


 5. 頭痛の病態生理と治療

 埼玉医科大学神経内科 荒木 信夫

 片頭痛の病態として,頭蓋血管の異常を重視する血管説vascular theoryが広く信じられてきた。即ち,片頭痛の前兆auraの時には血管が収縮し,その後,血管が拡張して頭痛が生じるという説である。しかし近年,脳血流動態などの詳細な検討により,片頭痛の病態はむしろLeaoの提唱した"spreading depression" という大脳皮質の神経細胞の過剰興奮によると考える説 (神経説neuronal theory) が登場し,様々に議論されてきた。さらに,Moskowitzらは三叉神経と頭蓋内血管,特に硬膜の血管との関係に注目し,この “trigeminovascular system" を介する “neurogenic inflammation" が片頭痛のモデルになりうると考え,trigeminovascular theory を提唱した。
 一方,片頭痛では,様々なトランスミッターの変化が注目され,病態との関係が注目されてきた。近年開発され5HTIB,5HTlDのagonistであるトリブタンは頭痛期の片頭痛患者の60〜70% に有効であり,セロトニンとの関係が注目されている。このトリブタンは頭蓋内血管の5HTI-1B/1D like receptorに結合し血管を収縮させる作用があること,および血管周囲の三叉神経に結合することがわかっており,従来の血管説や三叉神経血管説を支持すると考えられている。
 また,Goadsbyらは,片頭痛患者では発作期に頚静脈血の calcitonin gene related peptide (CGRP) が上昇することを示しているが,これは片頭痛の病態生理解明上貴重な報告と考えられる。最近,CGRPの受容体に対する阻害楽であるgepantが片頭痛の治療薬として注目されている。
 Olesenらは,NO donorである glyceryl trinitrate を投与し,片頭痛患者では健常者に比してNOの血管拡張作用に対する反応性が亢進していることを示し,NOに対する denervation hypersensitivity が存在すると主張した。柴田らは,片頭痛患者にL-arginine を静脈内投与した際に,NO産生が健常者に比して亢進していることを示した。これは,発作間歇期の片頭痛患者では,NO合成酵素活性が上昇している証拠と考えられる。
 また,家族性片麻痺性片頭痛 (FHM) において,第19染色体19p13に存在するP/Q型カルシウムチャンネル遺伝子にミスセンス変異が認められた。また,Na-K ATPase,α2 (ATP1A2遺伝子) の変異が,さらに神経電位依存性ナトリウムチャンネル, SC1A遺伝子の変異が確認されている。FHMの変異遺伝子はいずれもイオンチャンネルであることからFHMはチャンネル病(channelopathy) であるとの考えが有力である。
 群発頭痛においても,三叉神経第1枝と蝶形口蓋神経節と上頚交感神経節からの線維が収束する海綿静脈洞付近の内頚動脈周囲に原因があるとの説があったが,PETを用いた研究により,視床下部後部に代謝亢進部位がみられることも明らかになった。
 また,主に片頭痛の難治性患者で薬物乱用頭痛がみられることが注目されている。この薬物乱用頭痛は脳のsensitizationとの関係で注目され,この病態に対する対策も検討されている。


演者略歴
荒木信夫 (あらき のぶお)
〔略歴〕
1978年3月 慶應義塾大学医学部卒業
1978年4月 慶應義塾大学医学部大学院医学研究科入学
1982年3月 慶應義塾大学医学部大学院医学研究科修了
1982年4月 慶應義塾大学内科学教室 (神経内科) 助手
1988年7月 米国ペンシルバニア大学脳血管研究所留学
        (Research Associateとして)
1990年9月 慶應義塾大学内科学教室助手に復帰
1994年7月 日本鋼管病院内科医長
1998年11月 埼玉医科大学神経内科 講師
1999年12月 埼玉医科大学神経内科 助教授
2004年1月 埼玉医科大学神経内科 教授
2012年1月 埼玉医科大学教育センタ一長を兼任
2013年4月 埼玉医科大学副医学部長を兼任
〔主な専門分野〕
頭痛,脳循環代謝,自律神経


 6. 多発性硬化症の病態研究と治療の進歩

 国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部
 同 病院多発性硬化症センタ一 山村 隆

1. はじめに
 多発性硬化症(multiplesclerosis : MS)は,かつて原因不明の難治疾患であった。しかし自己免疫病態の概略が明らかになり,インターフェロンβの普及やリンパ球体内移動を阻害する新薬の登場もあいまって,限定的ではあるが寛解を維持できる疾患になった。一卵性双生児の解析や大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果は,100種類以上のMS発症に関連する遺伝子多型(SNPs)の同定につながった。その多くはT細胞や抗原提示細胞の機能に関係し,也の炎症・免疫疾患でも共有されることから,MSが細胞性免疫を介する自己免疫疾患であることはさらに確実になった。一方で,近年の患者数の急速な増加傾向や発症の地域差は後天因子の役割を示唆するが,その詳細を明らかにする研究に関心が集まっている。

2. 最近のMS臨床の話題
 再発・寛解型MSでは,疾患修飾薬インターフェロンβやグラチラマー酢酸(国内未承認)を導入することによって,長期間の寛解を維持できる症例が増えている。しか,これらのファーストライン医薬には,いわゆる「ノンレスポンダー」が存在し,注射薬であるためにアドへレンスが不良であることなどの問題がある。近年になってT細胞の体内移動を制御する新薬(フィンゴリモドとナタリズマブ)が内外で承認され,難治性MS(こ対するセカンドライン医薬として一定の評価を得ている。フィンゴリモドはSlP1受容体に作用してリンパ球がリンパ節から移出するプロセスを阻害し,ナタリズマブ(抗Vα4インテグリン抗体)はリンパ球が脳血管内皮に接着できないように働く。ただし,これらの薬剤には重篤な副作用の報告があり,使用にあたってはリスクとベネフィットのバランスの面から充分な検討が必要である。
 進行型MS(一次進行型MSおよび二次進行型MS)では,歩行障害や高次脳機能障害が進行して車椅子生活になることが多いが,新たな薬剤の開発の機運が高まっている。
 抗アクアポリン4抗体 (抗AQP4抗体) の上昇を伴う視神経脊髄炎 (neuromyelitis optica : NMO)がMSから区別されるようになった。NMO典型例のMRI画像では3椎体以上の脊髄長大病変が確認される。NMOは我が国で過去にMSと診断された症例の20%前後を占めるが,MSに比べてB細胞・自己抗体の関与が強く,MSの治療薬インターフェロンβやフィンゴリモドは病状をむしろ悪化させる可能性がある。したがってMSとNMOの診療では,両者の鑑別がきわめて重要であり,抗AQP4抗体測定に関する認識が高まっている。AQP4は水チャネルであり,アストロサイトに強く発現している。NMOの急性増悪期には抗AQP4抗体による補体依存性アストロサイト障害が顕著であるが,中枢神経系に侵入したプラズマブラストが産生する抗AQP4抗体の役割が重視されている。なお,シェーグレン症候群や膠原病に合併する脊髄炎の多くは,NMOの脊髄炎であると言われている。

3. 研究の進展
 MSでは炎症惹起性リンパ球と制御性リンパ球のバランスに異常が認められる。そのバランス異常を矯正するために,背景因子の解明や治療薬候補の同定に関する研究が加速化している。従来の企業治験に加えて,アカデミアで開発された治療薬候補を,医師主導治験によって検証する試みも始まっている。
 一方では,個々の治療薬の有効性を早期に見極めて,治療方針の決定に役立てるための技術開発が進んでいる。個々の薬剤の治療効果を予測するバイオマーカーが確立すれば,レスポンダーにだけ同薬剤を処方するような時代が到来するであろう。


演者略歴
山村 隆 (やまむら たかし)
〔略歴〕
1980年3月 京都大学医学部卒業
1980年5月 京都大学付属病院研修医
1981年4月 住友病院神経内科医師
1984年8月 武蔵療養所神経センター研究員
1987年6月 Max-Planck研究所客員研究員
1989年10月 Harvard大学客員研究員
1990年10月 国立精神・神経センタ一室長
1999年11月 国立精神・神経医療研究センタ一部長
〔主な専門分野〕
神経内科学,神経免疫,臨床免疫学,多発性硬化症・視神経脊髄炎の病態解明,免疫療法の開発
〔主な学会活動歴〕
日本神経学会 (専門医,評議員),日本臨床免疫学会 (理事,第41回総会長),日本神経免疫学会 (理事,第22回学術集会会長),日本免疫学会 (評議員),国際神経免疫学会(ISNI) (理事) :米国臨床免疫学会FOCIS (運営委員,2007年副会長)


 7. 抗リン脂質抗体症候群の検査と治療

 北海道大学大学院医学研究科免疫・代謝内科学分野教授 渥美 達也

 抗リン脂質抗体症候群 (APS) は,抗リン脂質抗体と関連する自己免疫血栓症および妊娠合併症と定義される。抗リン脂質抗体はリン脂質あるいはリン脂質と蛋白の複合体に結合する自己抗体の総称である。APSの臨床上の問題点は,疾患を定義する抗リン脂質抗体の多様性から,その検出の標準化が困難であること (すなわち何をもって抗リン脂質抗体陽性とするかが統ーされていないこと),臨床症状の再発が極めて多いことである。さらに,血栓症と妊娠合併症以外にも抗リン脂質抗体と関連する臨床症状は血栓と妊娠合併症にとどまらず,現在はAPSを全身性抗リン脂質抗体症候群 systemic antiphospholipid syndrome ととらえる考え方がでてきた。
 APSは獲得性血栓傾向の原因としては頻度の高い病態のひとつとして認識され,臨床上重要な位置を占めている。APSは単独で発症すれば原発性と分類されるが,約半数は全身性エリテマトーデス (SLE) に合併する。APSの病態の基本は血栓傾向である。APS患者に発症する血栓症は多様であるが,好発部位が存在する。静脈血栓としては他の血栓傾向と同様に下肢深部および表層静脈の血栓症が多く,しばしば肺塞栓を合併する。APSの血栓症に特徴的な点は,静脈のみならず動脈に血栓をおこすことである。しかもAPSでは脳梗塞,一過性脳虚血発作などの脳血管障害が圧倒的に多く,虚血性心疾患が比較的少ない特徴がある。妊娠合併症は習慣流産がもっとも多いが,子宮内胎児発育不全や妊娠高血圧症候群もよく知られている。通常の流産が胎盤形成以前の妊娠初期に圧倒的に多いことに対して,APS患者の流産はむしろ妊娠中・後期によく起こることが特徴である。非常にまれであるが,APSの特殊型に分類される病態として,急激に多臓器不全(とりわけ中枢神経と腎)に陥り,重症呼吸不全,重篤な血小板減少症を合併し致死率の高い激症型抗リン脂質抗体症候(Catastrophic antiphospholipid syndrome)がある。
 APSの診断に必要な検査は抗リン脂質抗体である。一連の抗リン脂質抗体の検出法のなかで,抗カルジオリピン抗体(aCL)は最もはやくに確立された免疫学的な抗リン脂質抗体の検出法である。当初はリン脂質であるカルジオリピンがaCLの直接対応抗原と考えられていたが,現在ではaCLの対応抗原がβ2-グリコプロテインI(β2GPI)であることがわかって,「β2GPI依性aCL」 とよばれるアッセイで検出される。ループスアンチコアグラント(LA) は in vitro のリン脂質依存性凝固反応を阻害する免疫グロプリンと定義される。凝固反応自体は簡易な検査であるが,臨床検査上のLAの同定はその多様性から必ずしも容易でない。LA活性をもつ白己抗体の対応抗原は,β2GPIまたはプロトロンビンである。
 APSの治療は,血栓症に対する二次予防が中心である。免疫抑制療法は,これまでの報告では有効性が定まっていないので,劇症型APSなど特殊な例にのみおこなわれている。欧州白人ではAPSの症状は深部静脈血栓症が最も多いため,抗凝固療法が中心である。動脈血栓症に対しでも抗凝固療法がおこなわれていて,強度にINRを維持しても血栓の再発が多い。我々は,日本人ではAPS血栓は動脈のほうが多いことを認識し,我が国においては血小板凝集抑制薬を中心とした治療をおこなっている。とくに複数の血小板凝集抑制剤を使用した例では血栓の再発が少なかった。
 本講演では,日常の診断に必要な抗リン脂質抗体検査の意義や,それらの組み合わせにより血栓症のリスクをどのように考えていくべきかを議論する。


演者略歴
渥美達也 (あつみ たつや)
〔略歴〕
1998年3月 北海道大学医学部卒業
1994年7月 英国ロンドン・セントトーマス病院レイン研究所
1998年6月 北海道大学医学部第二内科 助手
1999年6月 同 講師
2010年10月 北海道大学大学院医学研究科免疫・代謝内科学分野 准教授
2013年1月 同 教授
〔主な専門分野〕
内科学,穆原病学,血栓止血学,臨床免疫学
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会 (評議員),日本臨床免疫学会 (理事),日本血栓止血学会 (理事),日本リウマチ学会 (評議員),日本臨床リウマチ学会 (評議員),国際血栓止血学会 (抗リン脂質抗体部会副議長)


 8. 関節リウマチの診断と治療〜Up-to-dateto〜

 東海大学内科学系リウマチ内科学 鈴木 康夫

 関節リウマチ(RA)治療のパラダイムはこの数年間で大きく変わり,関節の疼痛や腫脹を軽減させることから,関節破壊を停止させ,関節・生活機能を維持し,生命予後を改善させることに主眼が置かれるようになった。すなわち,まだ関節破壊が起きる前の早い段階でRAを診断し,寛解という炎症活動性に基づく症状や徴候がなくなった状態を最短で達成することにより,RAの関節破壊は停止し,生活機能は維持され生命予後も改善することが明らかになっている。
 @「目標達成に向けた治療 : Treat to Target(T2T)」戦略 : 糖尿病などで導入されている治療戦略がRA治療においても推奨され,2010年4月に治療アルゴリズムが発表された。すなわち,早期RAでは治療目標を寛解と定め,一定期間毎にRA活動性を評価し目標に達しなければ治療を強化・調整し,最短期間で目標を達成するという考えである。
 ARA分類基準 : RAの旧分類基準 [アメリカリウマチ学会(ACR)1987年] は臨床研究の対象を選ぶ際に,症例の均一化をはかる目的で作成されたもので早期RAの診断には対応できない。そこで,診断未確定炎症性滑膜炎の症例から,慢性の経過で骨びらんを来すリスクが高く,MTXを中心とした疾患修飾薬の治療が必要である症例を同定する新基準がACRとヨーロッパリウマチ学会(EULAR)より2010年9月に発表された。この基準は1カ所以上の明らかな滑膜炎があって,他の疾患で説明できない場合は,関節症状 (圧痛,腫脹のある関節の数と部位),血清反応 (リウマトイド因子,抗CCP抗体),炎症反応,症状の持続期間の各点数を組み合わせて診断する基準である。
 B画像診断の進歩 : 関節エコーは滑膜炎や骨びらんの検出に有用で,RAの診断や活動性評価とともに,リウマチ性多発筋痛症など他疾患の鑑別にも有用であり,日本リウマチ学会 (JCR) より関節エコー撮像法ガイドラインが発表された。
 C臨床的寛解基準 : X線写真上の関節破壊及び身体活動性評価において良好な予後が得られる状態を寛解状態と考え, Boolean法あるいは総合的活動性指数である SDAI (simplified disease activity index) を取り入れたACR/EULAR合同の予備的寛解基準が2011年3月に公表された。
 Dメトトレキサート(MTX) の適応,用量拡大 : Anchor drugであるMTXの適応,用量増量に関する公知申請が承認され,2011年2月より,MTXが第1選択薬として,また最大週16mgまで増量が可能になった。,JCRはMTXの適正使用を推進する目的でMTX診療ガイドラインを発表した。承認後,MTX週8mgを超えた投与量における有効性と安全性を検証する特定使用成績調査がおこなわれ,24週観察例約2,800例,52週観察例約300例の解析が進み,週8mgを超えた用量の有効性が確認されている。
 E新規治療薬 : 1) 抗リウマチ薬単剤で治療目標を達成できなければ,生物学的製剤を中心とした併用療法が推奨される。生物学的製剤もインフリキシマブ,エタネルセプト,アダリムマブ,ゴリムマブの4剤に加え,セルトリズマブペゴル(ペグ結合Fabフラグメント) が2013年2月承認されTNF阻害薬は5剤となりトシリズマブ(抗IL-6受容体モノクローナル抗体),アバタセプト (T細胞活性化補助シグナル阻害薬) とあわせ計7剤が使用できるようになった。 2) 新しい免疫調整薬であるイグラチモドは,NFKBの活性化を抑制して,炎症性サイトカインや免疫グロブリン産生を抑制する。2012年9月に承認され,MTXとの併用効果が確認されている。3) 低分子の分子標的治療薬であるトファシチニブ(JAK回害薬)が2013年6月承認された。ATPと競合的にJAKに結合し,IL-6,IL-23などのサイトカインの細胞内シグナル伝達を阻害する。MTXや生物学的製剤で効果不十分な症例に期待される。
 本講演では,この数年でめざましい変貌を遂げたRAの診断と治療の最新情報および最近問題となっている副作用について解説する。


演者略歴
鈴木康夫 (すずき やすお)
〔略歴〕
1976年3月 慶應義塾大学医学部卒業
1978年5月 慶應義塾大学医学部内科学教室 (血液・感染症・リウマチ内科) 入局
1983年8月〜1986年7月 米国ワシントン大学骨代謝部門研究員
1989年7月 聖マリアンナ医科大学第l内科 講師
1992年11月 聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科 助教授
2002年4月 東海大学医学部内科学系リウマチ内科学 助教授
2005年4月 東海大学医学部内科学系リウマチ内科学 教授 同付属病院難病治療研究センター長
2009年4月 東海大学医学部付属病院副院長
〔主な専門分野〕
リウマチ内科学,臨床免疫学,骨代謝学
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会評議員, 日本リウマチ学会E、!と議員, 日本内分
泌学会評議員
日本臨床免疫学会評議員,日本骨代謝学会評議員,日本臨床リウマチ学会評議員,日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会委員長,日本骨代謝学会ステロイド性骨粗鬆症管理と治療ガイドライン改訂委員会副委員長


 9. 高齢者救急診療のピットフォール

 京都府立医科大学救急医療学教室 太田 凡

 高齢者救急診療にはいくつかの特徴があり,その特徴はピットフォールにもつながる。
 @自立した生活を送っていても,高齢者は自分の健康に対し不安を抱えているのが通常であり,不安のみから救急受診する軽症症例が少なくない。
 A一方,高齢者では,自覚症状,身体所見が非典型的となりやすく,また,基礎疾患,服用薬剤,免疫力低下,骨粗軽症,創治癒力低下などの影響により,病態が重症化しやすい。したがって軽症と確定するのが難しい。
 Bまた,高齢者は容易に生活能力が低下するため,医師が軽症と判断しても独居生活の継続が困難となることも珍しくない。介護者の負担も問題になる。時には,患者家族と医師の間で患者の押し付け合いのような現象が生じ,時として必要以上に「軽症」との判断に傾きやすい。
 C認知症などにより患者の認知能力が低下している場合,医師と患者家族の間に診療方針をめぐる価値観の相違が生じ得る。
 D重症の場合には,どこまで積極的な治療を行うかどうかが問題となる。侵襲的治療が必ずしも報われるとは限らない。老いて死に至ることは生命にとっての自然である。ワンパターンのマニュアル診療ではなく,患者本人が治療方法を白己決定できない場合,家族とともに患者本人のための診療を真撃に選択したい。


演者略歴
太田 凡(おおた ぼん)
〔略歴〕
1988年 京都府立医科大学卒業
1988年 京都府立医科大学附属病院研修医
1989年 京都第二赤十字病院救命救急センター医員
1992年 京都府立医科大学大学院
1996年 京都第二赤十字病院救命救急センター医員
2002年 湘南鎌倉総合病院 救急外来医長
2004年 湘南鎌倉総合病院 救急総合診療科部長
2010年 京都府立医科大学 救急医療学教室 教授
〔主な専門分野〕
救急医療学,救急・災害医療システム学
〔主な学会活動歴〕
日本救急医学会 救急科専門医
日本救急医学会 ER検討委員会委員 ER後期研修小委員会委員長




(14/5/27火曜分)
白石市立越河小学校の内科健診に行ってきた。いつもどおりの、看護スタッフ2名と私との3名体制である。当院よりタクシーで15分。東京電力福島第一原子力発電所事故の際、丸森町南端を除けば、宮城県内で最も空間放射線量が高くなった地域である。白石市の金でグラウンドの除染(土の入れ換え)も終わり、校庭遊びや運動会も出来るようになった。文科省のモニタリングポスト(ソーラー発電付き)が校庭の隅に設置されているのは国道4号線からも見える。1996年(平成8年)に開業してから、越河小学校の内科校医を務めているが、当初は120名位の児童数があったが、年々減り、今年はついに60を切り59名となったそうです。でも子供たちは元気いっぱいです。

参考:「広報しろいし2014年6月号」33Pに掲載された「放射能対策」より

 東京電力に「白石の状況」を強く訴えていきます

 4月10日、東京電力(株)石崎芳行(いしざき よしゆき)代表執行役副社長が来庁しました。
これは、本市がこれまで、東京電力(株)に対して、福島第一原子力発電所事故による被害への早期対応と適正な損害賠償を繰り返し要求してきましたが、明確な回答は得られておらず、東京電力東北補償相談センターだけではなく、本社担当者の来庁を強く要望してきたことで実現。風間市長は「福島第一原子力発電所からの距離ではなく、実際の空間放射線量や汚染状況を基準とした対応を強く望みます。それに加えて、市民に対する損害賠償や農林畜産物・観光業などの風評被害による損害賠償、本市が負担している経費に対する損害賠償などへの対応を速やかに行っていただきたい」と強く要求しました。石崎代表執行役副社長からは、事故に関する謝罪しかなく、納得のいく回答は得ることができませんでしたが、これからも「白石の状況」を強く訴えていきます。


 越河・斎川地区の民有地の除染が始まりました

 白石市除染実施計画に基づき、越河・斎川地区の民有地の除染を開始しました。除染作業を円滑に進めるため、ご理解とご協力をお願いします。
この民有地除染は、事前調査を行い、あらかじめ調査結果を土地所有者にお知らせし、同意書を提出された方々を対象としています。同意書をまだ提出されていない方や、宅地があるのに通知が届いていない方は、放射能対策室までご連絡ください。
除染作業は、施行業者が一軒ごとに建物の配置や形態を確認、空間放射線量を測定し、状況に合わせた作業を行います。
詳しい除染の対象箇所や作業方法などを知りたい場合は、広報しろいし4月号をご覧いただくか、放射能対策室までお問い合わせください。


夜は、7年ぶりに2台目の小型尿分析装置アークレイ(ARKRAY)のポケットケムUA PU-4010pdf書類を購入。アークレイさんが設置しにきてくれた。実は先日、アークレイさんの病院向け自動尿分析装置オーションイレブン AE-4020(定価80万のところを40万でどうかと、テクニカルラボさん)を、デモで一週間置いてくれたのだが、テストテープの種類は自動入力され、1検体7秒検査で1時間に3600/7=514:人分の検査が可能とのことだが、検査後のテストテープがダストボックスに捨てられ、検査済みテストテープで行っていた検査済み患者さんの管理ができず、筐体が大きく嵩ばって、検尿検査室に設置するには邪魔になる大きさであった。結局、切り換えの手間が省けるよう、現在使用している小型尿分析装置PU-4010pdf書類(182KB)をもう1台おいて、それぞれ10EA・10PA(自動切り換え)専用と7EA専用にて使用することにしたのだ。もちろん、コストも一桁近く安いのだ。
ポケットケム PU-4010→チタニウムシルバーメッキから、素材の白色となった。
アークレイ社のブランドカラーは白色だそうです。→ポケットケム PU-4010



(14/5/29木曜分)
暑い日となってきた。本日からエアコンは冷房運転となった。27℃設定である。TVでは、熱中症予防を呼びかけている。夕方、急に強い雨となり、雷も鳴ってきた。近所で落雷の音もする。いつもどおり、スタッフたちは、キャーキャー騒いでいる。






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