院長周辺雑記(89:2014年4月分)




(14/4/1火曜分)
本日4月1日より、消費税の税率が17年振りに引き上げられ、5%から8%へ1.6倍(160%)になった。消費税が前回3%から5%へ1.67倍(167%)引き上げられたのは、1997年4月のことであった。当院が開院したのは、その5ヶ月前の1996年11月1日のことである。
当時はバブルがはじけて景気がどんどんわるくなっていく時代であり、これから消費税も5%に上がるし、医療経営雑誌『ニッケイヘルスケア』には「開業不毛の時代が到来。−この不毛時代を生き乗り切る方法とは−」など、の特集が組まれていた時代であった。このように誰もが開業には不適な時期と考えており、実際に新規開業する医院は稀であった。実際、『宮城県保健福祉部医療整備課』のHPには「仙南の医科診療所の新規開業の届け出では、年間1〜3件の状態が続いている」との情報が数年間以上は続いていた。こういう逆境時こそ開業するチャンスだと考え、実行したのが私であった。加えて開業後は、医療費圧縮のため、診療報酬の改定が毎回マイナス改定になる時代が続いた。その後の約10年近くは実際の開業者は少数であった。ところが、ここ数年前から種々の要因(大学新卒者の初期研修必修化・初期研修場所は、卒業大学医局に限定されず、他の大学や病院でも受けられる・新卒学生は、他の大学や病院で早く専門医を取って、開業したいとの希望が強くなった・そのまま大学に残って研究し博士号を取るのは時間の無駄だとの風潮・初期研修場所として、大学医局人事権の弱体化・大学医局自体の崩壊へ・・・・・書くと長くなるので略。)で開業指向が高まり、新規開業クリニックが増えてきた。今回、消費税は10%への引き上げが見込まれており、この開業への流れは続くのであろうか。いずれにせよ「でもしか開業」では成功しないと思われる。



(14/4/2水曜分)
本日は久し振りに来院者が少なく、朝方の1時間待ちが最高で、昼過ぎには2・3分待ちで疎らとなった。来院数は日によりバラツキはあるが、本日のように少ないのは稀である。が、月初めのレセプトチェックの時期には、月により時々見られるようだ。午後1時前には午前の仕事は終わり、久し振りに二階の院長室に上がり昼休みとなった。昼休み前に面会にきたアボットさんのエンシュア・Hメロン味250mL375kcal一缶を昼食とした。アボットさんの話しでは、夕張メロン味とのこと。一缶飲んだが私の好みではないようだ。
3月25日、仙台の自宅にプロオートサービスさん(旧プロオートサービス=外部リンク)から「ショールーム・工場移転のお知らせ」ハガキがきていて、本日は昼休みに時間ができたので本社/ショールーム/工場と第2工場に電話してみた。一年半前からと同様に、あいかわらず呼び出し音が連続するだけである。ところが数分後に携帯が鳴ったので出てみたら、着信履歴を見て第2工場から電話をかけてきたとのこと。久し振りの挨拶をしたが、社長の●上さんは丁度風邪気味で休んでいるそうだった。実はTuscan-Sの車検整備は連絡が取れないのでガレージ・エディフィス(外部リンク)(=旧グースネック宮城)さんに依頼したところであった。



(14/4/3木曜分)
今週になってフクダ電子の心電図計の三つ叉電源プラグのアース電極が根本から折れて破損したため、フクダ電子さんに新品の電源コードを注文していた。従ってアースが浮いたまま心電図を取っていたのだが、特にハムやノイズの影響は良いフィルタをかけているためか殆ど目立たなかった。ヨドバシや大河原のケーズデンキのOA機器売り場に行けば安く手に入る電源コードなのだが、管理保守点検が必要な医療機器であるので純正部品を使用しなければマズイと思ったからだ。純正コードが入荷するには時間が掛かるそうで、本日午後にフクダ電子の方が代替えのコードを持ってきてくれた。名刺は知らない名前だったので新人さんが挨拶を兼ねて来院してくれたのかと一瞬思ったが、名刺を良く見ると仙台営業部次長の肩書きがあってビックリした。聞くと本年度より「県南」を担当することになったそうである。普通は「仙南」と言うところを県南と言われたので前任地を聞いたら郡山・山形・福島だったそうで納得した。雑談で楽天イーグルスのホームスタジアム(コボスタジアムミヤギ)に小さい文字で「・・・フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子 フクダ電子・・・」の広告看板があり、その由来を尋ねたら、スタジアムのAED13台を全てフクダ電子さんがフィリップス製を納入したのが契機であったそうだ。広告・商売上手な日本光電さんが自社製品を納入しようとしなかったのはナゼであろう。コボスタジアムミヤギの広告看板は結構な値段がするとのことだが、巨人に比べたら十分の一とのこと、具体的な金額は聞き損じた。あの看板をTVで見たら一般の方は分からなくとも医療関係者には気付かれインパクトがあるであろう。



(14/4/6日曜分)
本日の日曜日は晴れ。車検のため、ガレージ・エディフィスのチーフメカニックである齋●さんがローダー(車載車)でTuscan-Sを引き取りに来てくれた。ローダーは無蓋なので、雨に弱いTuscan-Sの車載は、雨の日には危険なのである。というわけで、日曜で降雨の3/16・3/23・3/30は順延となっていたのである。



(14/4/8火曜分)
午後の受付は17時40分までにして、18時00分〜20時00分まで、舞鶴会館で開催された【白石市医師会学術講演会】に参加してきた。先ず、アステラス製薬株式会社さんから、18時00分〜19時00分まで、製品紹介: 「選択的活SGLT-2阻害剤=-2型糖尿病治療剤-スーグラ錠について」pdf書類(外部リンク)があった。19時00分より特別講演: 『糖尿病合併症予防を考えた治療の展望〜新規薬剤を有効に使用するには〜』が行われた。演者は東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌科 講師 坂本 昌也 先生が、座長は公立刈田綜合病院 内科 渡辺 正 先生が務められた。カリキュラムコード(CC)は失念したが、 日本医師会生涯教育講座:1.5単位取得となる。白石市医師会/アステラス製薬株式会社/MSD株式会社の共催であった。いつものごとく、情報交換会は辞退して、奥さんの車で歯医者さんへ連れて行かれた。



(14/4/13日曜分)
奥さんと日帰りで、東京国際フォーラムで開催された 【第111回日本内科学会総会講演会】(外部リンク)(SAVEpdf書類190KB)会長:伊藤貞嘉(東北大学)に参加してきた。参加費10,000円(非課税・・・学校の授業料や学術講演会の講義料は非課税なのだ)払って登録、認定更新単位15単位を頂いてきた。今回も学会の目玉は更新単位が貰える「教育講演」だが、4/11・4/12・4/13の3日間に分散して開かれるので、開業医の私にはとても参加できない(しかも定員があり事前にネットで参加登録必要)。今回の教育講演の演題と講演者をまとめてみた。

第111回 日本内科学会総会講演会 教育講演 演題・講演者
 1.早期大腸癌の診断と治療 
 広島大学 田中 信治 先生 
 2.全身性エリテマトーデス:診断と治療の進歩   北海道大学 渥美 達也 先生 
 3.CKDの臨床疫学  琉球大学 井関 邦敏 先生
 4.高齢者医療と予防ワクチン  国立感染症研究所 大石 和徳 先生 
 5.脳梗塞再発予防−日本人にとって最適な抗血栓療法とは   富山大学 田中耕太郎 先生
 6.慢性骨髄性白血病の治療  近畿大学 松村 到 先生
 7.過敏性肺炎の診断と治療  東京医科歯科大学 稲瀬 直彦 先生
 8.糖尿病治療の進歩  川崎医科大学 加来 浩平 先生
 9.新規抗菌薬の開発  東京医科大学 松本 哲哉 先生
 10.内科疾患治療による認知症予防  岡山大学 阿部 康二 先生
 11.原発性胆汁性肝硬変(PBC)についての進歩と停滞  山形大学 上野 義之 先生
 12.冠動脈インターベンション治療の変遷と積極的薬物療法   金沢大学 山岸 正和 先生
 13.COPDと全身併存症  奈良県立医科大学 木村 弘 先生
 14.Treat to Targetと関節リウマチ  慶應義塾大学 竹内 勤 先生
 15.心不全に対する疾病管理  北海道大学 筒井 裕之 先生
 16.難治性ネフローゼ症候群の実際と治療  金沢医科大学 横山 仁 先生
 17.カルシウム代謝異常の病態と治療  虎の門病院 竹内 靖博 先生
 18.造血幹細胞移植の現状と課題  名古屋第一赤十字病院 宮村 耕一 先生


第111回 日本内科学会総会講演会 教育講演 講演要旨

 1.早期大腸癌の診断と治療

 広島大学大学院医歯薬保健学研究科内視鏡医学 田中 信治

 近年の内視鏡医学の進歩により,早期大腸癌に対する内視鏡治療の守備範囲が大きく広がるとともに,精度の高い術前診断に基づく適切な治療法の選択が可能になった。白色光による高画素電子内視鏡観察に加えて,拡大観察による pit pattern診断やNBI (narrow band imaging) /BLI (Blue laser imaging) などの画像強調観察 (IEE : Image enhanced endoscopy)が標準化しつつあるが,最近では顕微(超拡大)内視鏡観察(Endoscytoscopy) による Optical pathologic diagnosisの臨床導入も検討されている。内視鏡治療に関しては,技術的に難易度の高い大腸内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD : Endoscopic submucosal dissection) も2012年4月から早期大腸癌を対象に保険適応となった。ただし大腸には良性の腺腫性病変も多く,正確な術前診断に基づいたESDと内視鏡的粘膜切除術 (EMR : Endoscopic mucosal resection) との棲み分けが重要である。内視鏡治療においては,根治性と安全性を確保したうえで簡便性と経済性も考慮されるべきである。
 一般に,大腸粘膜内癌は転移することはないが,SM癌では約10%にリンパ節転移を認める。従って,内視鏡摘除病変がSM癌の場合は,リンパ節郭清を含めた追加腸切除を考慮しなくてはならないが,その適応基準も時代とともに変遷している。実際には,詳細な病理組織所見に基づいた転移のリスクと患者背景を総合的に評価して,患者とともに治療方針を決定することが重要である。
 本講演では,大腸腫瘍の各種治療手技 (EMR/分割EMR/ESD/外科手術など) 選択のための術前診断学を概説し,SM癌の取扱い,ESDの課題と将来展望を中心にお話しする。


演者略歴
田中信治 (たなか しんじ)
〔略歴〕
1984年3月 広島大学医学部医学科卒業
1984年4月 広島大学医学部附属病院内科・医員(研修医)
1986年4月 北九州総合病院内科
1989年4月 広島大学第一内科・医員
1991年4月 国立がんセンター病院(現中央病院) 内視鏡部
1993年11月 広島大学第一内科・助手
1998年8月 広島大学光学医療診療部・助教授
2007年11月 広島大学内視鏡診療科・教授
〔主な専門分野〕
内視鏡医学(消化管),消化管癌の内視鏡診断と治療,小腸疾患・炎症性腸疾患の診断と治療,大腸癌の組織発生,浸潤・転移に関する臨床および分子病理学的研究
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会中国支部(評議員),日本消化器病学会(財団評議員),日本消化器内視鏡学会(社団評議員・中国支部長),日本消化管学会(代議員),大腸癌研究会(幹事),日本大腸肛門病学会(代議員),日本胃癌学会(代議員),日本カプセル内視鏡学会(理事),日本消化器癌発生学会(評議員)


 2. 全身性エリテマトーデス : 診断と治療の進歩

 北海道大学大学院医学研究科 免疫・代謝内科学分野 渥美 達也

 全身性エリテマトーデス(SLE)は,この分野の疾患では関節リウマチに次いで有病率が高い(概ね人口の0.1%)。疾患概念は,自己免疫機序による全身諸臓器組織の炎症性疾患,であるが,臨床像は非常に多様性に富んでいる。SLEの臨床像で特徴的なのは,高熱や「蝶型紅斑」を代表とする多様な皮疹であるが,内科医が管理すべき重要な臓器病変では,ループス腎炎と神経精神ループス (NPSLE) の頻度が高い。
 SLEの診断には,1982年のアメリカリウマチ学会 (ACR) の分類基準が参考にされてきた。30年以上前に定義されたこの分類基準は,よく疾患概念を反映するものとされてきたが,実際にこの分類基準を用いるとSLEの診断に至らない例があり,米国ではそのために保険会社が医療費支払いを拒否するという切実な問題が生じてきた。そこで,米国を中心として SLICC というグループがNIHの支援をうけて,より感度の高い新たな分類基準を提案した。その有用性を我が国でも検討中である。
 SLEの予後改善に貢献したのは,ステロイドのみ依存せずシクロフォスファミド,カルシニュリン阻害剤などの免疫抑制剤を効果的に使用できるようになったこと,感染症対策が進歩したことなど,複数の要因がある。ループス腎炎に対して,ACRおよびヨーロッパリウマチ学会が相次いでエビデンスに基づく推奨 (ガイドライン) を出版した。両者とも,ループス腎炎の治療を腎組織別に寛解導入と維持にわけで整理しており,日常臨床に適応しやすい記述である。両推奨において重要な位置づけにあるのが,未承認であるにもかかわらず ミコフェノール酸モフェチルである。我が国でも同薬の開発がすすめられている。
 一方,NPSLE,血栓性微小血管障害,抗リン脂質抗体症候群など,難治性病態が依然として存在する。これらの臓器病変に対する治療法開発が強く望まれる。


演者略歴
渥美達也 (あつみ たつや)
〔略歴〕
1998年3月 北海道大学医学部卒業
1994年7月 英国ロンドン・セントトーマス病院レイン研究所
1998年6月 北海道大学医学部第二内科 助手
1999年6月 北海道大学医学部第二内科 講師
2010年10月 北海道大学大学院医学研究科 免疫・代謝内科学分野 准教授
2013年l月 北海道大学大学院医学研究科 免疫・代謝内科学分野 教授
〔主な専門分野〕
内科学,膠原病学,血栓止血学,臨床免疫学
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会(評議員),日本臨床免疫学会(理事),日本血栓止血学会(理事),日本リウマチ学会(評議員),日本臨床リウマチ学会(評議員),国際血栓止血学会(抗リン脂質抗体部会副議長)


 3. CKDの臨床疫学

 琉球大学附属病院血液浄化療法部 井関 邦敏

 慢性腎臓病 (ChronicKidney Disease : CKD) は新しい疾患概念であり,透析導入および心血管疾患(CVD)予防を主眼に世界的な啓発活動が進められている。
 2009年,KDIGO (Kidney Disease : Improving Global Outcomes)カンファレンスにおいて血清クレアチニン,アルブミン(蛋白)尿のデータを有する世界の45コホート (約156万人) によるアウトカム (全死亡,CVD死亡,透析導入) の検討が行われた。腎機能(eGFR)およびアルブミン(蛋白)尿がそれぞれ独立した危険因子であると確認され重症度分類が改訂された。KDIGOには我々の沖縄透析研究コホート (Okinawa Dialysis Study : OKIDS) も参加し,CKD Prognosis Consortium による精力的なメタ解析が進行中である。
 CKDステージが高度(透析患者)になるとスタチン,エリスロポエチン投与による生命予後改善効果が証明されない。古典的危険因子以外にもCKD関連危険因子の関与が考えられる。また心腎連関以外にも脳腎連関,骨代謝,感染症,悪性腫瘍との関連が想定される。沖縄県では平均寿命の伸びが鈍化しているが,理由の一つに肥満,メタボリック症候群によるCKDの発症・進展が考えられる。
 加齢によるeGFR低下は年間0.4ml/min/1.73u未満であり,CKDステージ3a以上には進行しない。腎機能低下速度は蛋白尿の程度に比例して速くなる。わが国の透析患者数は約31万人で,依然として増加傾向にある。糖尿病および腎硬化症が導入患者の半数を超え,導入時の平均年齢が年々高齢化している。
 CKDの早期発見・治療のためには啓発活動,健診・事後指導体制の整備およびCKDをターゲットにした創薬が必要である。またわが国独自の臨床疫学的研究とくに大規模疫学研究 (観察,アウトカムおよび介入) の推進が望まれる。


演者略歴
井関邦敏 (いせき くにとし)
〔略歴〕
1974年3月 九州大学医学部卒業
1976年5月 九州大学附属病院(医員)
1981年11月 九州大学医学部附属病院助手
1982年7月 米国,南カリフォルニア大学医学部腎臓部門フェロー
1989年4月 琉球大学医学部附属病院第3内科(講師)
2011年4月 琉球大学院学部附属病院血液i争化療法部部長
〔主な専門分野〕
内科学,腎臓病学,腎不全の臨床疫学
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会,日本透析医学会,日本腎臓学会,KDIGO


 4. 高齢者医療と予防ワクチン

 国立感染症研究所・感染症疫学センタ一 大石 和徳

 わが国の65歳以上の高齢者人口は総人口の23.1%を占め,社会の高齢化が進んでいる。また,肺炎はわが国における死因の第3位であり,とりわけ80歳以上の高齢者では肺炎による死亡率は急激に増加する。成人の市中肺炎の大半は菌血症を伴わない肺炎であり,その20〜40%が肺炎球菌に起因するとされている。また,本菌は血液中に侵入し,主に小児や高齢者に侵襲性肺炎球菌感染症 (invasive pneumococcal disease : IPD) を起こす。
 成人用の莢膜ポリサッカライド(CPS)を含有する23価肺炎球菌ワクチン(PPV23)は,免疫不全のない高齢者におけるワクチン血清型による侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)に対する予防効果が明らかにされている。また,最近になって,わが国ではPPV23の肺炎球菌性肺炎の予防効果肺炎医療費の削減効果のエピデンスが報告されている。現在,厚生科学審議会予防接種部会において高齢者に対するPPV23の定期接種化についての検討が進められている。また,平成25年4月からIPDが感染症法上の5類全数把握疾患となり,国内のIPDの発生動向が明らかになっている。2009年にわが国でPPV23の再接種が可能になったが,PPV23再接種時の免疫応答低下の点で13価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)に劣るとの指摘がある。しかしながら,慢性肺疾患患者のPPV23の初回接種から再接種後の血清中オプソニン活性による抗体応答の評価では,この免疫応答低下は明確ではなかった。また,その特異IgGの殺菌機能は初回接種後,再接種後に7年以上の長期間維持されていた。
 今後,医療のニーズや疾病負荷などを踏まえて,開発が必要なワクチンとして経鼻インフルエンザワクチン,ノロウイルスワクチン,帯状庖疹ワクチンが挙げられる。これらのワクチンの開発状況についても紹介する。


演者略歴
大石和徳 (おおいし かずのり)
〔略歴〕
1980年3月 長崎大学医学部卒業
1980年4月 長崎大学医学部附属病院熱研内科入局
1986年7月 米国 Uniformed Services University留学
1994年5月 長崎大学医学部附属病院熱研内科講師
1997年5月 長崎大学熱帯医学研究所助教授
2006年l月 大阪大学微生物病研究所特任教授
2012年4月 国立感染症研究所感染症情報センター長
〔主な専門分野〕
感染症学,呼吸器内科学,熱帯医学,ワクチン学
〔主な学会活動歴〕
日本感染症学会(本部理事),日本熱帯医学会(理事),日本呼吸器学会(代議員)


 5. 脳梗塞再発予防−日本人にとって最適な抗血栓療法とは

 富山大学附属病院神経内科 田中 耕太郎

 日本の脳卒中による死亡の内訳は,脳出血による死亡が近年急速に減少し,2000年には脳出血23%,脳梗塞62%となった。しかし最近,脳出血による死亡が増加に転じ,2011年には27.5%となり1990年の値よりも高くなった。この一因として近年,脳梗塞再発予防のための抗血小板薬や抗凝固薬の処方が増加していることが挙げられる。日本人は白人に比し脳出血を生じやすい人種であることを念頭に置いた再発予防治療が必要である。
 (1) 非心原性脳梗塞再発予防における抗血小板療法 : 2009年のメタ解析では,脳梗塞再発予防としてアスピリン(ASA) を服用すると,出血性脳卒中を1.7倍増加させ,重篤な頭蓋外出血を2.7倍有意に増加させた。一方,ASAの脳梗塞再発抑制率は,わずか22%であり統計的に有意で無かった。さらに脳梗塞再発予防を目的に近年施行された大規模臨床試験におけるASA服用者の年間頭蓋内出血発症率は,欧米で0.2〜0.4%,日本で1%〜1.6% であり,欧米の5倍以上の発症率であった。最近のコクランレビューによると,クロピドグレルはASAに比し,10%前後の心血管イベントや脳卒中発症抑制を示したが統計的に有意でなかったが,シロスタゾールはASAに比し,これらの発症を30%有意に抑制した。特に出血性脳卒中は,シロスタゾールはASAに比し,80%有意に抑制した。重要なことは,このシロスタゾールのエビデンスは日本と中国で施行された大規模臨床試験より得られたことである。ASAは1970年代から非心原性脳梗塞再発予防の第1選択薬として使用されてきたが,上記の事実から,我が国の抗血小板療法は変革の時期を迎えている。
 (2) 心原性脳塞栓症再発予防における抗凝固療法 : 新規経口抗凝固薬 (NOAC) が我が国でも2011年以降,相次いで認可され,適応症例を慎重に選べば,従来のワルファリンに比し,安全かつ有効な治療効果を期待できる時代となった。しかしNOACは,腎機能 (クレアチニンクリアランス) 低下,高齢,低体重などの出血危険因子を,処方前および処方中に適時検討することが必要であり,適応に限界のあることを認識する必要がある。


演者略歴
田中耕太郎  (たなか こうたろう)
〔略歴〕
1975年3月 慶應義塾大学医学部卒業
1979年3月 慶應義塾大学大学院医学研究科 (神経内科学専攻) 修了
1979年4月 慶應義塾大学病院内科専修医
1982年7月 米国ペンシルバニア大学神経内科,脳血管研究センター研究員
1988年11月 水戸赤十字病院第一内科部長兼神経内科部長
1991年4月 慶應義塾大学医学部内科専任講師
2005年6月 富山医科薬科大学附属病院神経内科教授
2005年10月 富山大学附属病院神経内科教授
〔主な専門分野〕
臨床神経学,脳卒中学,脳循環代謝学
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会(評議員),日本脳卒中学会(理事),日本神経学会,日本脳循環代謝学会(理事),日本神経治療学会(評議員),日本頭痛学会(評議員),国際脳卒中学会,国際脳循環代謝学会,American Heart Association (Council on stroke)


 6. 慢性骨髄性白血病の治療

 近畿大学血液・膠原病内科 松村 到

 慢性期 (chronicphase,CP) の慢性骨髄性白血病 (chronic myeloid leukemia : CML) の治療成績はチロシンキナーゼ阻害薬 (tyrosine kinase inhibitor : TKI) のイマチニブの登場によって飛躍的に改善した。IRIS試験の結果では,イマチニブ投与群の8年時点の全生存率は85%(CML関連死亡は7%のみ),無イベント生存率が81%と極めて良好であった。しかし一部の症例はイマチニブ抵抗性を示し,イマチニブより強いBCR-ABLの阻害活性を有する第二世代TKI のニロチニブ,ダサチニブが開発された。イマチニブ抵抗例の50〜60% で抵抗性の原因となるBCR-ABLの点突然変異が認められるが,第2世代TKIはT315I変異を除き各種の変異に有効性を示す。また,両薬剤はイマチニブ不耐容例にも継続投与可能である。さらに両薬剤は,初発CML-CPを対象としたそれぞれのイマチニブとのランダム化比較試験において細胞遺伝学的効果,分子遺伝学的効果でイマチニブに優り,初発CML-CPに対しでも承認された。現在では,初発CML-CPに第二世代TKIを用い,より早期CML細胞を減少させることで,ほとんどの症例で病期進行が回避される。また,TKIの継続投与例では高感度のRQ-PCR法を用いても微小残存病変を検出できない分子遺伝学的完全寛解 (complete molecular response : CMR) が達成される。しかし,CMRを2年以上継続しでもTKI中止によって半数以上の症例が再発することから,治癒を目指した新規薬剤の開発も進んでいる。一方,移行期/急性転化期のCMLにはTKIの効果は十分でなく,同種造血幹細胞移植が必要である。現在,T315I変異にも有効な第3世代TKIのポナチニブの試験も実施されており,さらなる治療法の進歩に期待したい。


演者略歴
松村 到 (まつむら いたる)
〔略歴〕
1984年3月 大阪大学医学部卒業
1988年7月 大阪大学医学部第二内科学教室
1997年6月 大阪大学医学部血液・腫蕩内科助手
2002年8月 大阪大学医学部血液・腫蕩内科講師
2003年5月 大阪大学医学部血液・腫蕩内科助教授
2007年4月 大阪大学医学部血液・腫蕩内科准教授
2010年4月 近畿大学医学部血液内科教授
2010年11月 近畿大学医学部血液・膠原病内科教授
〔主な専門分野〕
血液内科学,臨床腫瘍学
〔主な学会活動歴〕
日本血液学会(理事,新TAREGT実行委員長),JALSG CML212研究(委員長),日本臨床腫瘍学会(評議員)


 7. 過敏性肺炎の診断と治療

 東京医科歯科大学呼吸器内科 稲瀬 直彦

 過敏性肺炎は外因性抗原を繰り返し吸入後に細気管支や間質に病変をきたすアレルギー性疾患である。急性過敏性肺炎として発症する場合が多いが,抗原曝露が年余にわたる場合には肺線維化が進行し,慢性過敏性肺炎の病型をとる。本邦の過敏性肺炎としては夏型過敏性肺炎,烏関連過敏性肺炎(鳥飼病),農夫肺,塗装工肺,キノコ栽培者肺などがある。夏型過敏性肺炎の原因抗原であるトリコスポロンは高温・多湿な住居環境で増殖する。烏関連過敏性肺炎は鳥飼育以外に近隣の野鳥,羽毛製品,鶏糞肥料により惹起される。急性過敏性肺炎の症状は発熱,咳・痰,呼吸困難など非特異的であるが,胸部X線写真で両肺に網状粒状影,胸部HRCTで小葉中心性粒状影,すりガラス陰影を認める。血清KL-6,SP-Dが高値となり,気管支肺胞洗浄液でリンパ球増多を示し,経気管支肺生検で類上皮細胞性肉芽腫を認める。診断においては抗原回避による改善と抗原の再曝露による増悪を確認することが重要であり,入院後に病状が落ち着いたところで環境誘発試験を行う。また免疫学的検査として特異抗体の検出を行う。一方,慢性過敏性肺炎の症状は持続する咳,労作時呼吸困難であり,胸部HRCTでは蜂巣肺,牽引性気管支拡張など特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis : IPF) に類似した所見を示す。慢性過敏性肺炎の過半は鳥関連過敏性肺炎であり,なかでも羽毛布団が原因となる過敏性肺炎 (feather duvet lung : FDL) が主目されている。治療の基本は抗原回避であり,急性過敏性肺炎の軽症例は入院のみで軽快する。慢性過敏性肺炎においても抗原回避が基本であるが,進行例ではステロイドや免疫抑制薬の使用が考慮される。慢性過敏性肺炎は経過中に急性増悪,肺癌,肺高血圧症の合併もあり,一般に予後不良である。


演者略歴
稲瀬直彦 (いなせ なおひこ)
〔略歴〕
1985年3月 東京医科歯科大学医学部卒業
1985年6月 東京医科歯科大学第二内科医員(研修医)
1991年6月 カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学
1994年9月 束京医科歯科天学霞ヶ浦分院助手
1997年4月 東京医科歯科大学呼吸器科助手
2002年11月 東京医科歯科大学呼吸器内科講師
2009年11月 東京医科歯科大学統合呼吸器病学分野教授
〔主な専門分野〕
呼吸器内科学,びまん性肺疾患,免疫・アレルギー疾患
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会(評議員),日本呼吸器学会(代議員),日本アレルギー学会(代議員),日本肺癌学会(評議員),日本呼吸器内視鏡学会(評議員),日本結核病学会(評議員),日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会(理事)


 8. 糖尿病治療の進歩

 川崎医科大学内科学特任教授 加来 浩平

 糖尿病治療の目標は,健康人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持と寿命を確保することにあり,目標達成には血管合併症の発症・進展の阻止が重要である。血管合併症の抑制に血糖管理が大きな役割を担うが,生活習慣の改善(食事療法,運動療法)や薬物療法は血糖管理のための有力な手段である。
 経年的な病態の進行抑制と合併症阻止の観点から,発症早期からの治療介入が重要であり,畿多の大規模前向き介入研究結果は,早期からの積極的な薬物療法による血糖管理が総死亡や血管合併症の抑制に寄与することを明らかにした。日本糖尿病学会は,3年前にHbA1cのNGSP値への移行を決めたが,2013年5月には熊本宣言による新たな血糖管理基準を設け,当面の管理目標値をHbA1c7%未満とした。
 治療ゴールを考えると, 目先の血糖管理ではなく長期間にわたる良好な血糖管理の維持が重要となる。血糖コントロールを長期間持続する上で,早期介入の必要性は言うまでもないが,同時に低血糖や体重増加のリスクが少なく,かつ食後の急峻な血糖上昇を抑制し,日内変動幅の縮小を伴う,いわゆる良質な血糖管理(良質なHbAlc) の達成が重要である。
 近年,欧米では,一律の厳格な血糖管理が,重篤な低血糖による死亡リスクの増加を伴いかねないことから,患者毎に最適な治療ゴールの設定と,治療薬選択を提唱している。最近,登場したインクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬は,安定した血糖低下効果に加えて,低血糖リスクが少ない,肥満を助長しない,他の血糖降下薬との併用効果が高まる,更には抗動脈硬化作用への期待から,使用頻度は急速に高まり,汎用されている。
 また新規治療薬としてインスリン作用に依存せず,尿糖排世促進により血糖降下に働くSGLT-2阻害薬,血糖依存性にインスリン分泌促進仕用を示すGPR40作動薬などが登場予定である。これら新規治療薬は,いわゆる良質な血糖管理に寄与するものと期待され,治療選択肢は更に広がるものと思われる。


演者略歴
加来浩平 (かく こうへい)
〔略歴〕
1973年3月 山口大学医学部卒業
1977年3月 山口大学大学院医学研究科修了
1977年8月 山口大学医学部第3内科助手
1984年4月 山口大学医学部第3内科講師
1986年7月 米国ワシントン大学留学
1990年1月 山口大学医学部第3内科助教授
1998年4月 川崎医科大学内科学教授
2013年4月 川崎医科大学内科学特任教授
(主な専門分野〕
糖尿病学,代謝・内分泌学,抗糖尿病薬の作用機構,膵インスリン分必能制御機構
〔主な学会活動歴〕
日本糖尿病学会(常務理事,中国四国支部長),日本内分泌学会(代議員),日本動脈硬化学会(評議員),日本糖尿病合併症学会(評議員),日本病態栄養学会(評議員),日本老年病学会(評議員),その他


 9. 新規抗菌薬の開発

 東京医科大学微生物学講座 松本 哲哉

 かつて日本を含めて製薬企業の抗菌薬開発はまさにしのぎを削るほど盛んであった。1980〜90年代に立て続けに新規抗菌薬が市場に出て,感染症は制圧されたかのような雰囲気が広がった。しかしその後,多くの製薬会社が抗菌薬の開発から撤退し,これから新しい抗菌薬が世に出ることは難しい状況に陥っている。その一方で,耐性菌の問題は深刻化しており,有効な抗菌薬の開発が望まれている。
 医療従事者に求められているのは,現在使用可能な抗菌薬を大切に用いて,なるべく耐性菌を増やさずにその有効性を長く保つことである。近年,国内外で強調されている「抗菌薬の適正使用」あるいは「Antimicrobial Stewardship」という考え方の背景には,これらの事情が大きく影響している。
 抗菌薬を大切に使うという考え方は重要であるが,それだけで今後の感染症の抱える問題が解決するとは考えにくい。そのため米国では,米国感染症学会 (IDSA) の主導のもと,大学や研究機関,製薬企業,さらに行政が一体となって新薬の開発を目指す動きが出てきている。具体的には2020年までに10個の新しい抗菌薬を創出することを目標として,GAIN法(The Generating Antibiotic Incentives Now Act of 2011) という法律が施行された。本法には耐性菌に有効な抗菌薬を開発した場合,市場独占期間の5年間延長などが盛り込まれている。また欧州でもこれと似た動きがあり,抗菌薬開発の支援体制が活発化している。
 日本の状況は後れを取っていると言わざるを得ないが,現在,日本化学療法学会が中心となって,日本感染症学会,日本臨床微生物学会,日本環境感染学会,日本細菌学会,日本薬学会とともに「新規抗菌薬の開発に向けた6学会の提言」を作成段階であり,話し合いには学会関係者だけでなく,製薬企業や厚生労働省,経済産業省,文部科学省などにも加わっていただき,コンソーシアムを設立しALLJAPANとしての新薬開発に向けた動きが活発化している。


演者略歴
松本哲哉 (まつもと てつや)
〔略歴〕
1987年3月 長崎大学医学部卒業
1987年6月 長崎大学医学部i付属病院第2内科入局
1993年3月 長崎大学医学部大学院修了(臨床検査医学)
1993年6月 東邦大学医学部微生物学講座助手
2000年9月 ハーバード大学ブリガム&ウイメンズホスピタル,チャニング研究所研究員
2004年10月 束邦大学医学部微生物学講座講師
2005年6月 東京阪科大学微生物学講座主任教授(現職)
2007年4月 東京医科大学病院感染制御部部長(兼任 : 2013年7月まで)
〔主な専門分野〕
微生物学,感染症学,呼吸器学,免疫学
〔主な学会活動歴〕
日本感染症学会(束日本支部理事),Journal of Infection & Chemotherapy (編集委員長),日本化学療法学会(東日本支部理事),日本臨床微生物学会(理事,元編集委員長),日本環境感染学会(評議員)


 10. 内科疾患治療による認知症予防

 岡山大学神経内科 阿部 康二

 ライフスタイルの欧米化が進行しているが,このために高血圧や高脂血症,糖尿病などのメジャーな内科疾患が増加している。このような内科疾患は脳梗塞の危険因子であると同時に,アルツハイマー病を中心とした認知症の危険因子でもあることが明らかにされてきている。
 カロリンスカ研究所での調査では,高血圧を治療しない場合には拡張期血圧が高いほど認知機能スコアが低下しており,また70歳時点での高血圧患者と正常血圧対照者とを比較したところ,高血圧患者群の方がその後10年間の間に認知症に進行した人が多く,この傾向は血管性認知症とアルツハイマー病に共通であった。即ち高血圧は認知障害全般の発症に先行するので認知障害予防のためには高血圧治療が重要であるとしている。
 内科疾患の中でも高コレステロール血症の認知障害発症への関与が最近特に注目されている。中年期に総コレステロール値が250mg/dlあると高年期でのアルツハイマー病発症リスクが2倍に増加することが知られており,基礎研究でもアルツハイマー病モデルマウスに高脂肪食を食べさせるとマウス脳内のアルツハイマー病変が増加した。
 また糖尿病と認知症の関連も特に注目されてきており,糖尿病患者では将来的な認知機能低下危険性が約2〜4 倍と指摘されている。当教室と岡山大学糖尿病内科との共同調査では糖尿病外来通院者の3.8%が認知症,7.7%が軽度認知機能障害(MCI)であることが判明した。
 このように高血圧や高脂血症,糖尿病などの内科疾患は,内臓肥満によるメタボリックシンドロームと関連して脳卒中や心筋梗塞,慢性腎障害を惹き起こすだけでなく,認知症をも惹き起こすことが分かつてきた。従ってメジャーな内科疾患をきちんと治療することは,脳卒中や心筋梗塞,慢性腎障害に加えて認知症の予防にも繋がる。


演者略歴
阿部康二 (あべ こうじ)
〔略歴〕
1981年3月 東北大学医学部卒業
1983年3月 内科初期研修修了(岩手県立胆沢病院)
1987年3月 東北大学大学院修了(医学博士)
1988年7月 アメリカ合衆国ハーバード大学神経内科学教室留学
1990年7月 アメリカ合衆国留学より帰国(助手)
1995年8月 東北大学医学部附属病院講師
1996年3月 東北大学医学部助教授
1998年4月 岡山大学医学部教授
2001年4月 岡山大学大学院脳神経内科学講座教授
2002年4月 岡山大学医学部附属病院副病院長
2010年7月 韓国脳卒中学会名誉会員
2012年9月 中国大連大学客員教授
〔主な専門分野〕
神経内科学,脳卒中,認知症,神経変性疾患
〔主な学会活動歴〕
世界脳循環代謝学会(理事長,会長),日本内科学会(評議員),日本神経学会(理事),日本脳卒中学会(国際委員長),日本脳循環代謝学会(理事),日本抗加齢アンチエイジング学会(評議員),日本認知症予防学会(理事),日本認知症学会(評議員),世界Vas-Cog学会(理事,共同会長),アジアVas-Cog学会(事務局長),日本VAS-COG研究会(代表世話人),日本血管生物学会(理事),日本老年医学会(評議員),日本過酸化脂質・フリーラジカル学会(評議員),日本ミトコンドリア学会(評議員)


 11. 原発性胆汁性肝硬変 (PBC) についての進歩と停滞

 山形大学内科学第二講座 上野 義之

 原発性胆汁性肝硬変 (PrimaryBiliary Cirrhosis : PBC) は厚生労働省の定める難治性の特定疾患であり,その病態形成については免疫学的な機序が想定されてきた。疾患の黎明期には患者の多くは黄疸などの症状を呈する症候性でありその予後は不良であったが,現在我が国では無症候性で診断される例が多数を占めている。無症候性PBCの予後は比較的良好であり,特に治療薬であるウルソデオキシコール酸(UDCA)により肝機能が良好にコントロールされる場合の予後は悪くない。しかし,PBCの予後の長期化に伴い,肝機能自体は良好に保たれているにもかかわらず,食道静脈瘤など門脈圧亢進症が出現する例や肝細胞癌を発症する例などこれまでと異なる視点で管理を必要とする症例も増えてきている。病態形成については,抗ミトコンドリア抗体の主要抗原であるPDC-E2に対するリンパ球などの過剰反応などの免疫担当細胞からみた異常が多く指摘されてきた。近年では傷害される肝内胆管上皮細胞自体の異常も多く報告され,PBCでの胆管障害の機序にはこの双方の異常がマッチすることが必要と考えられているが,未だ決定的な解明はされていない。また,近年の網羅的な遺伝子解析により日本人のPBCにおいても疾患感受性の遺伝子が報告されるに至ったが,その病態形成における役割は不明な点が多い。治療については早期の病期に対するUDCAの生命予後改善作用が明らかにされた。さらにUDCAに対する反応が不良である群に対してフィブレート薬が有効であることも報告されているが,経過が長期にわたるPBCでの予後改善効果については今後の課題である。またこれ以外の薬剤の開発については未だ停滞している状態ではある。しかし次世代シーケンシングなどの新しい手法を用いた解析も応用されつつあり,これまでにない切り口により未だ不明のPBCの病態解析が加速されることが期待される。


演者略歴
上野義之 (うえの よしゆき)
〔略歴〕
1987年3月 東北大学医学部卒業
1991年3月 東北大学大学院医学研究科博士課程修了
1992年8月 米国メーヨークリニック留学
1995年1月 JR仙台病院第二内科医長
1996年2月 東北大学医学部第三内科助手
2003年4月 東北大学病院消化器内科講師
2009年4月 東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野准教授
2011年11月 山形大学医学部内科学第二講座(消化器内科学)教授
〔主な専門分野〕
消化器内科学,肝臓病学,細胞生物学
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会(評議員),日本消化器病学会(財団評議員),日本肝臓学会(評議員),日本移植学会(評議員),米国消化器病学会(Fellow)、米国生理学会


 12. 冠動脈インターペンション治療の変遷と積極的薬物療法

 金沢大学医薬保健研究域医学系・臓器機能制御学循環器内科 山岸 正和  坂田 憲治  川尻 剛照

 狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患の管理にあたっては,単に急性期治療に終始するのみならず,再発 (2次予防),更には本疾患群の発症そのものを予防する (1次予防) ことが肝要である。冠動脈疾患の急性期には,心筋虚血や続発する心不全のため,社会生活の制限を余儀なくされることから,冠動脈インターベンションの適応が大きく拡大された。心筋虚血が証明される冠動脈心疾患群では,インターペンションの効果が示されてはいるが,重症症例では必ずしも一定の成績が示されてはおらず,議論が盛んなところである。この際,用いる血管内ステントの進歩も考慮しての適応検討が重要である。第一世代ステントではかなりの長期間,抗血小板剤の投与が求められているが,次世代ステントではこれの短縮や減薬が期待されている。多枝冠動脈病変症例,左冠動脈主幹部症例などにおいては,大動脈-冠動脈バイパス術の適応症例が多いことも十分考慮せねばならない。血管内治療,外科的バイパス術のいずれにおいても,2次予防に向けての厳密な対策が必要である。我が国においても,漸く集中的脂質低下療法により,冠動脈粥腫が退縮することが証明され,また,臨床的にも予後改善がえられたとの追試も報告されつつある。血圧の管理を徹底することによる再発予防も報告されつつある。また,重要なことは,糖尿病が合併すると,これらの管理をより厳密にせねばならないということである。これらの環境因子のひとつとして,肥満対策も重要である。最近,女性における肥満基準の見直しが叫ばれているが,これは,従来の基準では,危険因子を多く保有する群を見逃してしまう恐れがあるからである。本教育講演では,目まぐるしく変化する生活環境の中での冠動脈疾患の病態,治療,予防について解説する。


演者略歴
山岸正和 (やまぎし まさかず)
〔略歴〕
1978年3月 金沢大学医学部卒業
1978年7月 国立大阪病院内科系研修医
1979年l月 大阪警察病院心臓センター内科医員
1981年7月 大阪大学医学部内科研究生
1982年l月 大阪大学医学部内科医員
1986年l月 国立循環器病センター内科心臓血管部門
1990年9月 アメリカ合衆国ケンタッキ一大学医学部循環器内科教室研究派遣
1991年9月 岡立循環器病センター内科心臓血管部門
1994年3月 国立循環器病センター内科心臓血管部門医長
2003年3月 兵庫医科大学臨床実習教授(委嘱)
2003年4月 国立循環器病センター研究所併任(バイオサイエンス部)
2006年l月 金沢大学医薬保健研究域医学系臓器機能制御学・循環器内科教授
〔主な専門分野〕
内科学,循環器内科学
〔主な学会活動歴〕
日本循環器学会(理事),日本内科学会(評議員),日本心エコー図学会(理事),日本心臓病学会(理事),日本心血管インターベンション治療学会(理事),日本心血管画像動態学会(理事),日本心不全学会(評議員),日本動脈硬化学会(評議員),アメリカ合衆国心臓学会 フェロー(FACC)


 13. COPDと全身併存症

 奈良県立医科大学内科学第二講座 木村 弘

 COPDは長期の喫煙歴をもつ中高年者に発症し,しばしば喫煙や加齢に伴う全身併存症が認められる。またCOPD自体が全身性に影響をもたらし栄養障害,骨格筋機能障害,心血管疾患,骨粗鬆症,抑うつ,糖尿病などの併存症を誘発する。
 近年,呼吸機能の経年変化をはじめとするCOPDの自然歴には個体差が大きいことが明らかになった。また併存症のクラスター解析から,心血管障害,栄養障害,代謝性疾患,精神的影響などを主な併存症とする異なるphenotypeの存在が報告されており,合併する併存症によってCOPDの臨床像の多様性が規定されていることも明らかになった。
 各種併存症の基盤病態としては全身性炎症があげられ,CRPなどのバイオマーカーとの関連が認められる。一方,抗動脈硬化作用を有する血中 adiponectin が低値の場合は心血管疾患による入院や死亡リスクが増加し,高値の場合は呼吸不全死が増加することが示唆されている。わが国では体重減少のある気腫型COPDにおいては adiponectin は高値となることが報告されており,心血管イベントによる死亡が低率であることとの関連が推測される。adiponectin と併存症や死亡リスクとの関連において,重症度や肥満度の影響も認められ,欧米とわが国での差異も留意すべきである。
 併存症対策としては全身性炎症の制御が根幹となる。しかし現状ではエピデンスを有する治療戦略は確立されていない。蛋白同化作用や摂食促進作用とともに抗炎症効果も有するグレリンの投与が有望視されている。一方,COPDの肺内において発現が低下している sirtuin 1 の活性化は,単なる炎症ではなくストレスに起因する早期の細胞老化/気腫化に対する治療法として着目されつつあるが,全身との関わりも注目される。COPDにおいては併存症を含めた包括的な病態評価と管理が求められ,今後の新規治療の展開が期待される。


演者略歴
木村 弘 ( きむら ひろし)
〔略歴〕
1978年3月 金沢大学医学部卒業
1987年2月 千葉大学医学部肺癌研究施設内科助手
1988年3月 ペンシルベニア大学医学部内科学呼吸器部門博士研究員
1992年10月 千葉大学医学部附属病院呼吸器内科講師
1997年2月 千葉大学医学部肺癌研究施設内科助教授
2001年4月 奈良県立医科大学医学部内科学第二講座教授
〔主な専門分野〕
内科学,呼吸器病学,呼吸不全,COPD,肺高血圧症,睡眠時無呼吸症候群
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会(評議員),日本呼吸器学会(理事,2015年学術講演会会長),日本ケア・リハビリテーション学会(理事,2014年学術集会会長),日本肺高血圧症学会(理事),日本アレルギー学会(代議員),日本結核病学会(代議員),日本呼吸器内視鏡学会(評議員),日本肺癌学会(評議員),日本睡眠学会(評議員),日本抗加齢医学会(評議員)


 14. Treat to Target と関節リウマチ

 慶應義塾大学リウマチ内科 竹内 勤  金子 祐子

 関節リウマチ(RheumatoidArthritis : RA)の関節破壊は,早期に急速に進行する事,それによる身体機能障害は不可逆的である事が広く認識されるようになった。これを防ぐためには早期診断と積極的治療介入が必須である。RAの治療は,極めて有効性の高い薬剤の登場,生物測定学の充実,薬物治療戦略の理解を深める臨床研究,などによってパラダイムシフトとも呼ばれる程の大きな進展を見せた。また,2010年には早期診断率向上にむけた新分類基準が,2011年には厳格かつ高い目標となる新寛解基準が策定された。大切なことは治療開始後,目標達成に向けて厳密な活動性管理すなわちタイトコントロールを行って,臨床的寛解を速やかに達成し維持することである。この大きな目的を達成するために始動したのがTreat to Target (T2T)運動である。T2Tとは,設定した治療目標に向かってタイトコントロールをしていく治療戦略で,将来の関節破壊を防止するためには極めて重要な手法である。T2Tの骨子は,世界から集結した代表によって策定されたもので,4つのOverarching Principles (基本的な考え方)と10の recommendations からなる。治療目標はまず臨床的寛解を達成すること,臨床的寛解とは疾患活動性による臨床徴候が消失した状態と定義されること,臨床的寛解を目標として薬物療法は3カ月ごとに見直すべきであること,治療方針決定には関節所見を含む総合的疾患活動性指標を用いて評価する必要があること,治療目標は全経過を通じて維持すべきであること,などが記されている。かつては治らない疾患として痛みを抑えるだけであった時代は終わり,今,RA診療は,糖尿病,高血圧と同様に明確な治療目標を患者と共有し,長期的な予後を見据えて治療する時代となった。タイトコントロールを基軸としたT2Tリコメンデーションが広く医師-患者に認識され,それに基づいた治療が実践されれば,短期的にも長期的にも大きくアウトカムが改善されるものと期待されている。


演者略歴
竹内 勤 (たけうち つとむ)
〔略歴〕
1980年9月 慶應義塾大学医学部卒業
1984年9月 慶應義塾大学大学院医学研究科修了
1985年1月 ハーバード大学ダナ・ファーバー研究所留学
1989年4月 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科講師
1993年1月 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科助教授
1998年7月 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科教授
2004年8月 埼玉医科大学副学長
2009年8月 慶應義塾大学医学部リウマチ内科教授
2011年10月 慶應義塾大学医学部医学部長補佐
2013年10月 慶應義塾大学病院病院長
〔主な専門分野〕
内科学,自己免疫疾患,膠原病リウマチ学,臨床免疫学
〔主な学会活動歴〕
日本リウマチ学会(理事),日本臨床免疫学会(理事),日本炎症・再生医学会(理事),日本臨床リウマチ学会(理事),日本内科学会(評議員),日本アレルギー学会(評議員),日本感染症学会(評議員)


 15. 心不全に対する疾病管理

 北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学 筒井 裕之

 慢性心不全患者は高齢者が多く,高血圧,糖尿病,慢性腎臓病(CKD),貧血など複数の合併症を有し,死亡率が高いばかりでなく,増悪による入院を反復する。心不全増悪による入院の誘因には,塩分・水分制限の不徹底,治療薬服用の不徹底など予防可能な要因の関与が大きい。さらに,抑うつや不安,ソーシャルサポートなどの心理・社会的要因も関与する。したがって,再入院の予防には適切な薬物・非薬物治療とともに,患者教育・モニタリング・服薬管理を含む疾病管理が必要である。なかでも患者教育は重要であり,一般的知識,症状のモニタリングと増悪時の対処方法,食事療法,薬物治療,活動および運動,増悪因子の是正などについて,入院中,退院時,さらに外来において継続的に取り組む必要がある。このような疾病管理を実施する医療チームは,多職種で構成され,患者を中心に,患者が抱える問題に応じて,それぞれの職種の専門性を十分に発揮し問題の解決にあたることも重要である。最近我々は,慢性心不全の増悪により入院した患者を対象に,退院後の看護師による月2回の訪問指導を4回,月1回の電話による患者指導・療養支援を4回実施する疾病管理プログラムが,抑うつや不安を軽減するとともに,QOLを改善し,心不全の増悪による再入院を抑制することをあきらかにした (J-HOMECARE試験)。本研究は,わが国において有効かつ効率的な慢性心不全に対する疾病管理プログラムを例示するとともに,その抑うつや不安などに対する効果を明らかにした点で意義があると考えられる。疾病管理は患者の薬物治療へのアドヒアランスを向上させることも期待できる。慢性心不全に対しては標準的薬物・非薬物治療を実施するだけでは不十分であり,予後やQOLの改善には疾病管理が必須の治療戦略である。今後わが国において心不全の疾病管理に幅広く取り組む体制を整備していく必要がある。


演者略歴
筒井裕之 (つつい ひろゆき)
〔略歴〕
1982年3月 九州大学医学部卒業
1982年6月 九州大学医学部循環器内科入局
1990年8月 米国サウスカロライナ医科大学留学
2000年10月 九州大学医学部循環器内科講師
2004年9月 北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学教授
2008年4月 北海道大学病院卒後臨床研修センターセンター長(併任)
2010年9月 北海道大学病院病院長補佐(2013年3月まで)
2013年4月 北海道大学病院副病院長(併任)
〔主な専門分野〕
内科学,循環器内科学,臨床疫学,心血管病,心不全,酸化ストレス
〔主な学会活動歴〕
日本循環器学会(理事),日本心不全学会(理事),日本心臓病学会(理事),日本心臓リハビリテーション学会(理事),米国心臓学会,欧州心臓学会(FESC),国際心臓研究学会(日本部会理事)


 16. 難治性ネフローゼ症候群の実際と治療

 金沢医科大学腎臓内科学 横山 仁

 ネフローゼ症候群 (以下ネ症) は,大量蛋白尿による低アルブミン血症と浮腫および脂質異常症を伴う疾患群である。中でも難治性ネ症は,ステロイドと免疫抑制薬を含む種々の治療を6カ月行っても,完全寛解(尿蛋白<0.3g/日)または不完全寛解1型(0.3g/日≦尿蛋白<1.0g/日)に至らない場合と定義される。その主な疾患は,一次性 (巣状分節性糸球体硬化(FSGS),膜性腎症(MN),膜性増殖性腎炎) と二次性 (糖尿病性腎症,若年女性のループス腎炎,高齢者のアミロイド腎) であり,これらの病型はネ症の約60%を占める。一方成人ネ症全体の約25%を占める微小変化型(MCNS)では,ステロイド依存性ならびに頻回再発型が問題となる。
 その治療は,症候である浮腫および脂質異常症等に対する対症(補助)療法と糸球体疾患に対する根本的な治療に分けられる。二次性疾患は,基礎にある疾患の治療が主となるが,一次性疾患に対しては,副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬による治療が主である。ネ症では,蛋白異化抑制に十分なエネルギー摂取が重要であり,糖尿病や肥満がなければ蛋白0.8g/kg体重と35kcal/kg体重とする。浮腫の治療は,病態に応じ塩分6g/日までとし,ループ利尿薬および遠位尿細管のNaエスケープ現象を予防する意味で少量のサイアザイド系利尿薬を併用する。脂質異常症が持続する場合および腎保護効果を期待したスタチン治療が推奨される。
 一次性疾患の薬物治療は,ステロイドが基本であり,病型・病態に応じて調節する。経口ステロイドとして,FSGSはPSL1mg/kg/日(最大60mg)相当を初期投与量とし,重症例ではステロイドパルス療法を併用する。MNではPSL0.6〜0.8mg/kg/日相当とする。さらに,ステロイド抵抗性例あるいは早期寛解目的で免疫抑制薬 (シクロスポリン,ミゾリビンまたはシクロホスファミド) を併用する。くわえて,難治性FSGSにはLDLアフェレシスを考慮する。また,B細胞異常あるいは難治性FSGS・頻回再発型MCNSにおいて抗CD20抗体(保険外)が試みられる。


演者略歴
横山 仁 (よこやま ひとし)
〔略歴〕
1980年3月 金沢大学医学部医学科卒業
1987年4月 金沢大学医学部附属病院第1内科助手
1992年8月 米国Brigham and Women病院腎臓内科研究員・Harvard大学医学部講師
1994年4月 金沢大学医学部附属病院血液浄化療法部助教授
2006年4月 金沢医科大学医学部腎臓内科学 主任教授 (現在に至る)
2013年9月 金沢医科大学医学部長 (現在に至る)
〔主な専門分野〕
腎臓病学,血液浄化療法,臨床腎移植
〔主な学会活動歴)
日本腎臓学会(理事),日本透析医学会(評議員),日本アフェレシス学会(評議員),日本高血圧学会(評議員)


 17. カルシウム代謝異常の病態と治療

 虎の門病院内分泌センター 竹内 靖博

 多方面からの研究の進展により,カルシウム(Ca)代謝異常の病態の理解が深まっている。治療に関する進歩も著しく,現在もイノベーションが続いている。本講演では臨床的に重要性の高い関連項目を取り上げる。
 1 .病態
 1) ビタミンD欠乏症 : くる病や骨軟化症は稀であるが,潜在的なビタミンD欠乏症は成人の3〜5割に及ぶと推定されている。本症は,骨Ca代謝のみならず,糖代謝・免疫・発癌にも関連することが明らかにされつつある。ビタミンD充足度の評価には血中25水酸化ビタミンD濃度の測定が必須であり,その保険収載が望まれる。
 2) 自己免疫性高Ca血症 : Ca感知受容体に対する自己抗体により家族性低Ca尿性高Ca血症様の病態が惹起されることが明らかにされ,その病態の解明と共に,臨床的な問題点に関する研究が進められている。
 3) FGF-23依存性骨軟化症 : 低リン血症性骨軟化症は稀な病態であるが,難治性の疼痛や骨折の原因となる。FGF-23の過剰は,ビタミンD活性化障害とリン排世亢進により本症を惹起する。FGF-23の血中濃度測定が病態の鑑別と早期診断に有用であり,適切な治療のためにもFGF-23測定の保険収載が望まれる。
 2. 治療
 1) シナカルセト : 副甲状腺癌における高Ca血症は,治療に難渋することが多い。本症に対するCa感知受容体作動薬であるシナカルセトの効果と安全性に関する臨床試験が国内で実施され,適応拡大が承認される見通しである。
 2) ヒトPTH(1-84) : PTH分泌不全性副甲状腺機能低下症の治療は,現在,活性型ビタミンD3を主体に行われているが,相対的に尿中Ca排世過剰となる患者では,腎障害や腎結石を生じやすく治療が困難であった。この問題を解決するため,ヒトPTH(1-84)の副甲状腺機能低下症の治療における有用性が検討されている。
 3) 抗FGF-23中和抗体 : FGF-23依存性骨軟化症の多くは腫瘍随伴症候群あるいは伴性優性の先天性疾患であり,しばしば治療に難渋する。現在,抗FGF-23中和抗体による治療効果に関する臨床研究が進められている。


演者略歴
竹内 靖博 (たけうち やすひろ)
〔略歴〕
1982年3月 東京大学医学部卒業
1988年11月 米国国立衛生研究所 (NIH) 骨研究部門研究員
1992年6月 東京大学医学部第四内科助手
2003年5月 東京大学医学部腎臓・内分泌内科講師
2004年4月 国家公務員共済組合連合会虎の門病院内分泌センタ一部長
〔主な専門分野〕
内分泌学全般,骨・ミネラル代謝学,代謝性骨疾患
〔主な学会活動歴〕
日本内科学会(評議員,関東地方会幹事),日本内分泌学会(評議員,学術誌編集委員など),日本骨代謝学会(評議員,学術誌編集委員),日本骨粗鬆症学会(評議員),日本老年医学会(代議員),International Bone and Mineral Society (Editorial Board)


 18. 造血幹細胞移植の現状と課題

 名古屋第一赤十字病院血液内科 宮村 耕一

 造血幹細胞移植(HSCT)は骨髄毒性が用量制限毒性となる抗腫瘍療法において最大耐容量を超えた治療を可能とするとともに,同種造血幹細胞移植においては同種免疫の力による抗腫瘍効果に期待をするものである。また,先天性造血不全や再生不良性においては,病的骨髄を健常のものと置き換える治療法でもある。造血幹細胞ソースとしては骨髄,末梢血幹細胞,膳帯血があり,遺伝的背景により自家,同家,同種(血縁,非血縁)に分かれる。血縁者間HSCT,非血縁者間HSCT,臍帯血移植とも1,000例を超え,同種移植は2011年3,400例が施行され,確立された治療法となっている。同種HSCTは不治の造血器疾患を救命できる治療法である一方,未だ半数の患者が原病の再発,移植関連合併症により死亡する発展途上の治療法でもある。これは患者とドナーの間の遺伝的な背景の違いが,どのように移植結果に影響するか,すなわち重症のGVHDを減らし,ドナーの免疫力による抗腫瘍効果を残こすために,前処置や免疫抑制剤をどのように使っていけばよいのかという難問に対し,未だ無限な原野が広がっているからである。もう一つの特徴として,同種HSCTは善意のドナーがいて初めて成り立つ治療法であり,ドナーを集めるために多くのボランティアの努力があるということである。臍帯血もまた多くの母親の善意に支えられている。骨髄パンクには現在40万人を超えるドナーがいるが,骨髄パンクに登録した患者の6割しか移植を受けられない現実があり,コーディネート期間が長いこと,適当なドナーがいないことが原因である。平成24年に成立した「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」は,この問題を国が責任を持って改善するというものであり,画期的な事である。また平成23年度に開始された非血縁者間末梢血幹細胞移植の導入により全身麻酔を心配するドナーの増加,コーデイネートの短縮が期待される。


演者略歴
宮村耕一 (みやむら こういち)
〔略歴〕
1983年3月 名古屋大学医学部卒業
1983年4月 名古屋第一赤十字病院血液内科研修医,医員
1988年5月 東京都立駒込病院化学療法科医員
1989年7月 名古屋大学第一内科医員
1992年4月 NIH Hematology Branch/NHLBI
1994年7月 名古屋大学第一内科医員
2001年4月 東北大学医学部血液免疫科助手,講師,助教授
2003年7月 名古屋第一赤十字病院血液内科部長,センター長,副院長
〔主な専門分野〕
造血幹細胞移植,血液内科,感染症
〔主な学会活動歴〕
日本造血細胞移植学会(理事),日本血液学会(代議員)


第111回日本内科学会総会・講演会 平成26年4月11日〜13日 東京国際フォーラム 会長:東北大学 伊藤 貞嘉
(ポスター)
浅草吾妻橋の「鰻禅」で、鰻丼を賞味した。私は、いつもの「二段重」(去年の5500円が6500円に)、奥さんは小食なので「上」(去年の2000円と変わらず)を頼んだ。「:2000円・特上:3500円・二段重:6500円」のお品書きがあるが、鰻丼の量の違いだけとのこと。一巡目の客になれたので、割と早く、入店40分位で焼き上がってきた。鰻の兜煮や鰭焼きなどが酒肴としてつくので、私はビール2本注文し、入店直後から飲んで幸せでいた。



(14/4/14月曜分)
鷹巣の「ヤマザワ」「しろがね産科婦人科クリニック」近くに住んでいる当院看護スタッフが、「朝の出勤途上に見たら、『しろがね産科婦人科クリニック』の駐車場に一台も車がなかった」と教えてくれた。やはり、本当に閉院したのだ。4月9日(水)の白石市医師会理事会の席では、福岡中学校の内科校医をしていたしろがね産科婦人科クリニック院長の佐々木隆之先生(産婦人科だけでなく内科・外科も標榜していたため)が4月12日(土)で閉院するので、代わりの内科校医を推薦して欲しいと市教育委員会より依頼が来ているとの話しが出ていた。



(14/4/17木曜分)
本日から3回、毎木曜日午後は休診として、白石高等学校内科健診がある。13時15分頃から始めて、午後4時半過ぎまで掛かる。高校からは医師1名看護師1名で頼まれるが、私運転の車で看護師さんと二人きりで行き帰りすると、どこぞにいってしまいかねない(ワインディングロードを攻めに)のと、看護師さんも二人で行った方が楽なので、最初から医師1名看護師2名体制で行くことにしている。去年までは私の運転のブローニーで行っていたが、持参する荷物が少ないので、本日はタクシーでの行き帰りとした。
木曜日全日が休診の小松和久先生は、本日の内科健診は用事があって欠席された。レントゲンのデジタル化工事の日に当たっているそうであるとの養護教諭の話し。



(14/4/19土曜分)
夕方から、下顎虫歯横の歯肉にバイ菌入って、疼痛と寒気・38.8℃の高熱が出てヘロヘロだった。クラビット500mgを2回飲んだら、38.8℃の熱はやや下がってきたようだ。口の中が痛く、液体しか取れない。エンシュア・リキッド(ダイエット用)を用意してあるので、それで空腹をしのいだ。
そのうち熱も下がり夜に寝ることができたが、いったい何だったのだろうか。こんな38℃台の熱を出したのは、刈田病院に勤務していた頃、風しんに罹って以来だから約25年振りとなる。



(14/4/23水曜分)
白石市医師会のFAX連絡網からのFAXで、白石市医師会会長の佐藤恒明先生から会員各位に対し、閉院についてのお知らせがあった。これによると、「平成26年4月12日(土)付けで、しろがね産科婦人科クリニック閉院」となった。



(14/4/24木曜分)
本日午後は、2回目の白石高等学校内科健診に行ってきた。午後を休診としてタクシーでの往復は、本当のとこは、午後を休診としたための売り上げ減を考えると、医院としては経済的に割に合わない。しかし医師である院長は、社会貢献の責務を考え、ボランティアに出掛けるのだ。午後休みとなる事務スタッフや、1名当たり五千円弱もらえる看護師さん達は、単純に喜んでいるようだが。



(14/4/26土曜分)
一人日帰りで東京国際フォーラムで開催された【第100回日本消化器病学会総会】(外部リンク)(SAVEpdf書類203KB)会長:坂本長逸先生 (日本医科大学 消化器内科学)に参加・専門医更新登録8単位)してきた。
今回も吾妻橋「鰻禅」の二段重を賞味してきた。カウンター席で乗り出すように立って作業を観察していたら、店主の●瀬さんが、少し甲高い声で嬉しそうに色々と説明してくれた。きっと、お仕事が面白く大好きでやっているのだろう。実は、私も、お仕事が大好きだ。帰りには、地下鉄銀座線浅草駅への浅草中央通りの道すがら、八十代のご夫婦で店頭に出ている「元祖 海老屋本店」(外部リンク)で、つくだ煮の詰め合わせ(5400円)を土産として買った。



(14/4/30水曜分)
思い切って、みやぎ県南中核病院の院長先生に電話してみた。昼休みの時間帯(こちらは多忙な診療中)である。すぐ電話に内藤広郎院長先生が出てくれた。
院内紹介制度についての質問である。





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