院長周辺雑記(44:2010年7月分)




(10/7/1木曜分)
皆さん、正直言って、昨日(10/6/30水曜夜8時から)のNHKためしてガッテン」『リスク77倍!食道がん なる人・ならない人』見てビックリしませんでしたか?。
関連する、日本医学会分科会の各学会では、周知の常識なのですが・・・。
はい、「早期食道がん」は、通常の検診内視鏡検査・胃がん精査目的の内視鏡検査でも、「通常光観察」では見つけられません。もちろん、通常ドックのバリウム検査では、全く存在さえ診断つきません。
早期食道がん」の拾い上げ診断には、「狭帯域光(NBI)拡大光内視鏡」診断による、食道粘膜上皮の異常血管構造の検出が必要で、又、拾い上げ後の早期治療(ESD)には、切除範囲を決定するためのルゴール散布染色(番組ではヨード染色と表現)での不染帯の範囲決定が必須なのです。
当院では斜視型NBI内視鏡を駆使して、内視鏡検査の引き抜き時に、食道を送気で拡張しながらの、NBI食道観察を、上部消化管内視鏡検査の基本手技としております。ざんねんながら、当院の斜視型内視鏡は拡大機能が付いていないので、チェックした病変の最終的な判断は、前方視拡大NBI内視鏡を持っている、近場の刈田病院消化器科等に紹介することになります。
今年の4月1日より、拡大NBI内視鏡検査を施行すれば、通常光内視鏡に比べ、200点(2000円)の診療報酬増と決められました。厚労省も2000円の餌を付けて、普及させたいと考える程の画期的検査なのです。もちろん、全国津々浦々に普及してきたら、加算の措置は、今までの経験どおり、当然として廃止されるでしょうが。
患者様のためと、当院の技術レベル向上のため、是非とも前方視拡大NBI内視鏡を導入したいものだと考えておりますが、オリンパスメディカルシステムズ販売株式会社さんの三浦さんに値引きして貰っても、一本360万はする高価なもので、今すぐの導入はむりなようです。三年前から、拡大内視鏡研究会に参加してきたものとしては、ざんねんなことです。NBI内視鏡はオリンパス独占の技術なので、致し方ないかも。
フジノン(もともとの原理がオリンパスが確立した三原色フィルターを使った面順次方式ではなく、三原色画素CCDを使った面同時式方式で、面順次方式に比べて画質の精細度が低いもの)は、確か別方式のFICEという画像強調システムを持っていますが、学会レベルでは評価が低いようで、FICEに関連する医学論文は少ないようです。
翌日の本日、早速「ためしてガッテン」をみてこわくなった高齢男性が、「食道を調べて欲しい」と内視鏡検査を希望されて、わらわらと(仙台弁で、【副】 急いで。あわてて)来院されました。今年の1月に、自治体住民検診の集検バリウム検査で胃が引っかかって、当院で上部消化管内視鏡検査施行し、「いじょうなし」の患者さまです。その際にはNBIで食道も確認し、「食道もいじょうなし」と説明した患者さまですが、「ためしてガッテン2010/6/30」を見て、ビックリ来院されたのです。本日すぐに内視鏡検査を施行し、食道通常光画像4枚・食道NBI画像4枚をA4写真用紙にプリントアウトして差し上げ、ラップトップパソコンの45枚の液晶画面も、よっくと一枚毎に拡大説明して、何とか納得して頂きました。



(10/7/3土曜分)
午前は11時30分で当院受付終了とし、BMW Z4 Mロードスターをオープンとして仙台市若林区の自宅まで戻り(青葉山トンネルは渋滞でノロノロ、排気ガスの流入・トンネル内の雑音つよく、さすがにクローズとしました。BMW Z4 Mロードスターでは、完全に停止しないでもノロノロの時速20km以内では、車内のボタン切り換えだけで、オープン〜クローズに自由に、電動幌と油圧キャッチが作動して楽ちんです。)。自宅まで戻ってから、長男のVW GOLF GLIで会場まで送ってもらい、午後2時50分には、第8回 東北消化器内視鏡懇談会に参加できました。会場は仙台国際センターで、15時00分〜18時15分の集中講義で、日本医師会認定生涯教育研修会単位(CC:47,49,50,51,52,53)と日本消化器内視鏡学会業績ポイント単位を参加費:1000円で頂戴した。()内は私のメモ。
−プログラム−
(15:00〜15:05)開会の辞:代表世話人 福島県立医科大学付属病院 内視鏡診療部 小原 勝敏 先生
(『一部の某病院が、大腸ESDを厚労省に先進医療として申請して実施してしまったので、他の病院も大腸ESDを施行する際には、事前に先進医療として厚労省に申請する必要が生じてしまった。本来は大腸ESD全例の保険収載を目指すべきであったのが、一部の病院の先走りで厚労省には先進医療と認定されてしまい、保険診療への道が閉ざされたのは意外である。しかし、実際的に各病院が大腸ESDを実施する際には、事前に先進医療として厚労省に申請してほしい。なぜなら、前例が定着してしまったので、勿論、保険診療の適応とはならないので、先進医療として実施してほしい。』との日本消化器内視鏡学会の小原 勝敏 先生の苦渋の話し。
患者さまにメリットが大きい新しい手技は、学会として有用性・安全性が確立されれば、学会として保険診療収載を働きかけるのが王道だが、一部の病院が一番乗りを目指すためか、厚労省の思惑〈混合診療の解禁の道〉に乗ってしまい、厚労省に先進医療の言質を与えてしまったことは、ざんねんな事だ。・・・・と当院院長:塚本和彦は考える。
厚労省は、メディア操作による、同格病院間の医療格差・開業医と勤務医との収入面の格差=ついては反目、医師と一般給与労働者(個人自営業者ではない)との収入格差など・・・・を、事実に基づかないデータを持ち出して煽っている。これは偏に『医療従事者、特に医科医師の社会的立場を脆弱化させる』ことを目論んでいるのである。・・・・と当院院長:塚本和彦は考える。)

(15:05〜16:35)シンポジウム中下咽頭〜食道における診断から治療まで
司会:東北労災病院 消化器内科 大原 秀一 先生
司会:岩手医科大学付属病院 消化器肝臓内科 千葉 俊美 先生
1 Keynote Lecture中下咽頭〜食道領域における診断・治療の今後の展望」(15:05〜15:15)
福島県立医科大学付属病院 内視鏡診療部 小原 勝敏 先生
(NBI拡大・プロポフォール・ハイリスク・ALDH2欠損・・・・)
2−@ 『咽頭領域における診断から治療まで』(15:15〜15:45)
秋田大学医学部付属病院 第一内科 松橋 保 先生
(動画観察・TIS・Brawnish Area・ICPL・発声法・ELPS・LPRD・・・・)
2−A  『食道領域における診断から治療まで』(15:45〜16:15)
仙台市立病院 消化器内科 川村 昌司 先生
(挿入時W光で4枚、抜去時NBI光で4枚撮影・吸気時観察・GIF-PQ260とGIF-H260Z・NBIではA8で・画像のセッティング・ガスコン水・EUS・井上と有馬分類・・・・)
3 ディスカッション
−休憩(15分)−
(16:50〜17:10)『内視鏡機器開発状況報告
司会:弘前大学医学部附属病院 医療情報部 佐々木 賀広 先生
(PCF-PQ260L/I・PCF-Y0013・Endo Lifter UA-201Ua202 26000円・・・・)
(17:10〜18:10)特別講演
経鼻内視鏡における 診断精度向上のコツ
東京医科大学病院 内視鏡センター 教授 河合 隆先生
(全国の研修施設内視鏡センターでも経鼻実施は2割にとどまる・経鼻は経口に比べ、画質と診断能は明らかにおとる・そこをなるべく同等まで上げていくのが内視鏡医のスキルのみせどころ・経鼻は患者は楽だが内視鏡胃には負担がかかる・ルゴールとインジゴの利点と欠点・食道はNBIで挿入時観察・経鼻はスキルの高い経口経験15年以上の検査医が施行すべき・経口経験がない他科=循環器科や泌尿器科の開業医が経鼻をやり始めているが、もってのほか・消化器内視鏡専門医の重み・FICEよりNBIが優れる・Water JetとCO2レギュレーターの効用・・・・)
(18:10〜18:15)閉会の辞
仙台市医療センター 消化器内科 藤田 直孝 先生
本会は、日本消化器内視鏡学会の、業績ポイント(1単位)として認定されております。
本会は、日本医師会生涯教育講座(3単位)に認定されています。
(CC:47・49・50・51・52・53)
代表世話人:小原 勝敏 先生(福島県立医科大学付属病院 内視鏡診断部)
主催:東北消化器内視鏡懇談会
共催:オリンパスメディカルシステムズ株式会社・オリンパスメディカルサイエンス販売株式会社
後援:(財)内視鏡医学研究振興財団

プロの世界
では、原理的に、内視鏡はオリンパスのシステム(観察の究極は、拡大。画像強調処理は、NBI。)が当たり前の主流になっているようです。経鼻内視鏡は、有った方が少しは便利かな位のもの。しかも画像の質は経口に比べて落ちるし、内視鏡経験25年以上(私は28年)でないと、正診率が落ちるそうです。これは、私も実感しています。「診断には、ハナカメラはバリウムより、少しはましかな」しかし「前処置は経口に比べて面倒」という程度のものです。(以前、東京で行われた消化器内視鏡学会のデモブースで、私は、経鼻内視鏡を、フジノン・オリンパスで比較してみたが、操作性・画質ともオリンパスの方が優れていました。ハナカメラを推進していたフジノンはなんだなー、という感じでした。)フジノンは、拡大はないし、NBIもどきのFACEあるも、消化器内視鏡学会の専門医には、まったく相手にされていないようです。

帰りは、仙台市内に霧がかかり、こぬか雨が降りそうな天気なので、散歩がてらには帰れず、石垣町37までタクシー1,180円で帰った。



(10/7/7水曜分)
厚生労働省 東北厚生局 東北厚生局長より、平成22年7月5日付け(東北厚発0705第30号)の 「明細書発行体制等加算の届出受理について(通知)」のA4判書類が、料金後納郵便で届いた。

通知文面は、

東北厚発0705第30号
平成22年7月5日(月)


塚本内科消化器科

開  設  者 殿

東 北 厚 生 局 長   東北厚生局長印

明細書発行発行体制等加算の届出受理について(通知)

貴医療機関から届出のあった標記については、下記のとおり受理したので通知します。



1 受理番号     (明細)第937号

2 受付年月日     平成22年 6月30日

3 算定開始年月日     平成22年 7月 1日

4 内 訳 等

とある。



(10/7/9金曜分)
夜は、「えびす」でT先生と御食事会。こういう機会は初めて。



(10/7/10土曜分)
午後6時30分〜9時まで、【仙台呼吸器感染症セミナー】に、仙台市のホテル仙台プラザまで行ってきた。2.5単位(CC:2・10・26・45・46)いただきました、



(10/7/13火曜分)
夜は、予定の17時40分に受付を終了していたはずが(ところが新人窓口受付の真紀ちゃんが、入り口玄関ドアのロールカーテンの半下ろし終了宣言をわすれ、患者さまが20分間さっ到してしまって、いつもの18時00分まで受け付けてしまっていた。! ! )、18時00分まで受け付けしたので、フル回転にて18時35分には診療終了し、18時00分から始まっている白石市医師会学術講演会( 午後6時〜午後8時 白石市・パレスリゾート白石蔵王 演題 PK-PD理論に基づく抗菌薬の使用方法』 講師:東北大学病院 総合診療部 講師 奈良 正之 先生 主催 白石市医師会)に駆けつけ参加してきた。日医生涯教育認定単位1.5単位(CC:28発熱・45呼吸こんなん・46咳・痰)をいただいた。以下()内は、私のメモ。
(感染症に対する治療原則は、起炎菌の診断結果による、抗菌剤の選択治療が原則。だが、臨床現場では問診・グラム染色結果等を総合して起炎菌を予測し、治療を開始し、後日起炎菌が診断されたら、抗菌剤を変更しなければならないこともある。PK:薬物動態とPD:薬力学。抗菌薬の効果には、時間依存性のものと、濃度依存性のものがある。前者=ペニシリン系・セフェム系・カルバペネム系・グリコペプチド系など、後者=ニューキノロン系・アミノグリコシド系などあり、その使い分けが、起炎菌の同定も含めて重要。MIC・Cmax・AUC=area under the curve・AUC/MIC Peak・TAM・・・等の語句の意味合い。異型肺炎につき、マイコプラズマ肺炎・クラミジア肺炎・レジオネラ肺炎の順に多い。どれもマクロライド系・ニューキノロン系が効くが、レジオネラ肺炎は重症化することあり、リファンピシンの併用があり得る。最近は、肺炎球菌尿中抗原などで、早期に確定診断=100%ではないが=付けることが出来るようになった。誤嚥性肺炎にはニューキノロン系のグレースビットが推奨されるが、嫌気性菌の合併も多いので、ダラシン=クリンダマイシンの併用も勧められる。市中肺炎の入院治療基準となる、新しく提案された重症度分類であるA-DROPスコアー=詳しい検査を要せず、要するに見た目で入院治療必要性を判断するスクリーニング手法=入院治療基準としての判断項目として(1)男性は70才以上・女性は75才以上、(2)BUNが21mg/dL以上or脱水、(3)PaO2<60Torr or SPo2<90%、(4)収縮期血圧<90mmHg、(5)意識障害の妥当性につき。質疑応答時間で外科の小松和久先生より出た質問に対する回答として、「単純性膀胱炎には=尿には血中より高い濃度で排泄されるので=クラビット500mg1回/日より、クラビット100mg3回/日の方が推奨されるだろう」という、ここだけの話しもあった。)
久しぶ゛りに、講演会後の情報交換会にも出席しました。医師会の先生方とのざつ談でも、貴重な情報が得られ、なかなかにうれしい。今後は、なるべく出るようにしよう。



(10/7/19月曜・海の日分)
午後4時過ぎに、 二泊三日の「職員研修旅行」より白石蔵王駅に帰白した。
今回のテーマは『二歩先を目指す接遇=お客目線で実感して、改善しよう』です。毎日の業務の一環として、お客様=患者さまや患者の家族さまに接していると、どうしても慣れが生じて、これで良いのかという疑問の発生自体が忘れがちとなります。そして、人間はひくきに流れやすいものです。徐々に接遇レベルが(医師・看護師・事務職とも)ひくくなりがちです。これでは、いけない。今回の旅行では、当院医師・職員がお客様となり、日本の一流の接遇を誇る各所に出かけ、その接遇を客として実感し、塚本内科消化器科の明日への接遇へとつなげていこうという企画です。
今回は、医療事務新人の真紀さんが初参加、ベテラン医療事務の洋子さん・寿子さんは、子供さんの学校スポーツ大会の出席で不参加となり、総勢8名での参加となった。梅雨の長雨・ゲリラ豪雨も一段落し、これから猛暑(7月23日の大暑に近づく)となる、晴天に恵まれ、暑いが良い旅行日和日となった。
(第1日:10/7/17土曜分)
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(第2日:10/7/18日曜分)
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(第3日:10/7/19月曜分)
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(10/7/24土曜分)
胃アニサキス症(だいぶ昔の外部リンク)の患者さまが、先週につづいて来院され、二週続くのは当院では初めてのことだ。
二例とも、鰹の刺身を喫食したそうです。
先週は中高年女性、2人が喫食し発症1人来院、本日は中年男性、子供を含む4人が喫食し発症1人来院。女性は近所のなじみの個人魚屋さんで購入した鰹、男性は親しくしている漁師さんから新鮮なものを個人的に直送してもらった鰹だそうです。喫食して、女性は数時間たってから発症、男性は直後に発症。ともに強い心窩部〜上腹部痛あり。上部消化管内視鏡検査にて、女性は胃噴門部後壁に一匹、男性は胃体下部後壁に一匹が刺入していた。
治療は簡単。内視鏡下で生検鉗子で虫体をつまんで、ちぎれないよう細心の注意を払って摘除するだけだ。
普通に生検を業務仕事としている、日本消化器内視鏡学会認定の消化器内視鏡専門医にとっては、簡単な手技である。その割に、この手技は手術の部(区分 K653-3 内視鏡的食道及び胃内異物摘出術=食道及び胃内の異物(電池、胃手術時の縫合糸、アニサキス等)を内視鏡(ファイバースコープ)下により摘出した場合に算定する。)であり、診療報酬点数は高く3,200点(=32,000円)であり、胃炎を認めて投薬も併用すれば、内視鏡診断料(胃・十二指腸ファイバースコピー:1,140点=11,400円)もいただける。女性は前夜に椎茸の天ぷらも食べており、胆嚢結石症の除外診断目的にて腹部超音波断層検査も施行(530点=5,300円)しており、医療保険の3割ふたんでも、会計窓口で2万円弱を払って帰られた。胃だけでなく、懐もいたむ。
鰹にかかわらず、新鮮な刺身には、充分の御注意を。

夕方4時より6時まで、仙台市のホテル仙台プラザでの講演会【骨折予防・治療セミナー2010】に出席した。『骨折の早期治癒を可能にした物理学的刺激−低出力超音波パルスによる積極的保存療法−』講師:九州労災病院副院長 神宮寺 誠也 先生、主催 宮城県整形外科医会 である。認定単位1.5単位(CC:57外傷・61関節痛・84その他)を戴いた。
整形外科の講演で、弱い超音波パルスを1日20分骨折患部に照射するだけで、骨折の治癒期間の短縮が期待できるというもの。その1.5MHzの超音波出力は、腹部超音波断層検査の超音波出力より小さいというから驚き。1日に何回も腹部超音波断層検査を施行する医師は、プローブを持つ手指骨の疲労骨折予防を自然に行っているわけですね。



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